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ポップな旅への招待券 - TICKETS / 竹内アンナ (2022)


TICKETS/竹内アンナ

音楽界には、一見相容れないように思える二つの側面を持つミュージシャンという存在がある。
例えば、オリヴィア・ロドリゴはミュージカル仕込みの伸びやかなスケール感と、パンクやグランジに影響を受けたロックテイストの二面性から、独特の世界観を形成している。
その両面が一つのアルバムに落とし込まれたときに、作品としての面白さが生まれてくる。

今回取り上げるのは、竹内アンナが2022年にリリースしたセカンドアルバム「TICKETS」。
彼女もまた、二つの側面を持つミュージシャンである。

まず、楽曲を聴くと、その卓越したポップセンスに魅了される。
ロサンゼルス出身で洋楽からの影響を公言している彼女の楽曲は、その洋楽的エッセンスと日本人の耳に届きやすいJ-POP感がちょうど良いバランス感覚で融合されており、そのメロディーやリズムのキャッチーさとボーカルの可愛らしさも相まって聴く者の耳や心を掴んで離さないのである。

一方で、彼女は優れたギタリストでもある。
ジャズやブラックミュージックのカバーからギター演奏を始めたということもあり、"No no no (It's about you)"に見られるように、要所要所にギターソロのフレーズを挟みながら楽曲が展開される。
最高のポップミュージックの作者であり、同時に素晴らしいギタリストでもある彼女の両面がいかんなく発揮されたギターポップの傑作が本作「TICKETS」なのである。

難しいフレーズを弾きこなしながらもそのギターテクニックを誇示することなく、あくまで楽曲を構成する一つの要素として、キャッチーなポップソングで優しく包み込む。
ポップのアルバムは往々にして内容が単調になりがちであるが、本作に収録された楽曲は多様な色を持っている。

"手のひら重ねれば"ではゴスペルを思わせるようなコーラスワークを披露し、"YOU + ME"や"Love Your Love"ではラップ的な歌唱にも挑戦している。
"Now For Ever"では初のゲストを迎えており、このアルバムで彼女の音楽世界が大きく広がったのを感じる。

ギターについても、弾き語り楽曲"いいよ。"が収録されており、その音をじっくり味わうことができるほか、楽曲のトラックがアコースティックギターのサウンドを中心に構成されている"+imagination"や"我愛 me"などは彼女の真骨頂とも言えるだろう。
かと思えば"一世一遇Feeling"や"ICE CREAM."は逆にギター少なめのポップ全振りなサウンドで、次々と繰り出される様々な形のポップミュージックでリスナーを一時たりとも飽きさせない。

このアルバムは、そういった竹内アンナが魅せるギターポップのオードブルを、オープニング("Have a nice trip")とエンディング("Hope to see you again")のメッセージでラッピングした、41分間の目くるめく音楽旅行だと言える。
そして、本作のCDはその旅への招待券なのである。
プレイヤーに読み込ませれば、いつでも旅を始めることができる。

もちろん、サブスクの音源だって、立派な電子チケットだ。
再生ボタンを押して、素敵な旅へ出かけよう。



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