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電子の革新が告げた新世紀 - Kid A/Radiohead (2000)


Kid A/Radiohead

トム・ヨーク来日中ということで、久々にレディオヘッドを聴いてみる。
私のキャパシティが小さいため、2000年代以降の彼らの音楽はしっかりと理解しきれていないところがあるが、1997年発表の3作目「OK Computer」および2000年の4作目「Kid A」には大きな感銘を受けた。
こと「Kid A」に関しては、こんな大傑作を作り上げてしまったら、あとは常人には理解の困難な領域で創作を続けるしかないだろう、と思えてしまう。

さて、私は「OK Computer」と同い年の20代なので、もちろん「Kid A」をリアルタイムで聴くことはできず、初めて聴いたのは発売から15年ほど経った高校生の頃であった。
その時は音楽好きな友人からの勧めもあり、リリースの時系列順にレディオヘッドのアルバムを聴いていた。
"Creep"でおなじみのオルタナ色が強い「Pablo Honey」からやや落ち着いたギターロックの「The Bends」を経て、90年代ロックの名盤と名高い「OK Computer」に至り、この3作目に非常に大きな衝撃を受けた。

「OK Computer」についてはまた別の機会に書くとして、私はその衝撃の熱が冷めないうちに「Kid A」を再生した。
すると、前作のそれを軽く超えるような、とてつもない衝撃に脳を殴られたような気分になったことを今でも鮮明に覚えている。

正直、勧めてくれた友人や、ウィキペディアで調べた情報などから、「そういうアルバム」であるという予備知識をもって臨んだのだが、のっけから無機質に展開される変拍子の電子音に打ちのめされてしまった。
そのオープニング曲"Everything In Its Right Place"を筆頭に、前作までのギターロックの流れを断ち切るかのように、打ち込みの電子音や鍵盤のサウンド、フリージャズ的なアンサンブルなどが、どこか不気味な心地よさを持ったアンビエント的なサウンドとして展開されている。
一方で"Idioteque"では特に顕著であるが、電子音の無機質感の中にもトム・ヨークの抑揚のあるボーカルが有機的に響き、その共存する様はロックの文脈からもエレクトロニカの文脈からも革新的なものであったと言えるのではないだろうか。

後追いで聴いた人間でさえもこれほどまでの衝撃を受けているのだから、当時にリアルタイムで、「OK Computer」からの地続きで本作を享受した人たちに対するインパクトのほどは計り知れない。
情報によると当時は大々的にシングルを売り出すようなプロモーションも無い中でリリースされたとのことなので、ことさらその反響は大きかったのではないだろうか。
2000年という新世紀の幕開けにもふさわしい、色あせない革新性を持ったアルバムである。



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