不死鳥再起の一撃 - From Zero / Linkin Park (2024)
先週末、リンキン・パークの7年ぶりとなる新作が発表された。
「From Zero」と名付けられた本作は、そのタイトルの通り、ゼロからの再出発を果たしたバンドの、その再生のエネルギーが閉じ込められた1枚となっている。
あらかじめ断っておきたいが、私はリンキン・パークに対して強い思い入れがあるわけではなく、代表作を一通り聴いたことがある、といった程度のライトリスナーである。
そういった層の感想として読んでいただければと思う。
さて、リンキン・パークといえば、2000年のデビューから、ラップ要素などを取り入れた新しいラウドロックのスタイルを確立し、人気を博してきた。
その中で、2017年リリースの作品「One More Light」でのポップ路線への転身と、同年のチェスター・ベニントンの死というバンドにとっての大きな出来事は、ライトリスナーであった私にとっても非常にショッキングなものであった。
バンドは活動休止となり、一連の出来事を通して、ロック史の一時代が幕を閉じるのを肌で感じていた。
それから7年。
2024年になって、突如バンドの復活がアナウンスされた。
そして、新たに女性ボーカルエミリー・アームストロングを迎えた新曲"The Emptiness Machine"がリリースされると、新生リンキンの物語が再び幕を開ける。
その熱を保ったままリリースされた新作は、かつてのラウドロックスタイル全開で、絶望の淵から再びシーンへと蘇ったバンドの情熱的なエネルギーをこれでもかと詰め込んだような作品となっている。
チェスターがいた頃はラップパートを主に担当していたマイク・シノダがメインボーカルも務めるようになり、エミリーとのツインボーカルで、重厚なバンドサウンドに負けない圧力をもって歌が届けられる。
"Heavy Is the Crown"などではマイクのラップが健在であることも披露されており、新体制としての期待感を抱かせながら、かつての音にも想いを寄せることができる、そんな再起の一撃としてはこれ以上ないほどのクオリティを持った作品である。
一方で、この新体制を受け入れられないファンの気持ちも理解できる。
アダム・ランバートをボーカルに迎えたクイーンに違和感を抱くのと同じように、チェスター以外の声で歌われてもそれはリンキンの音ではない、と感じるのも自然な反応だ。
それくらい、バンドにとってボーカルは音楽の顔であり、替えのきかない存在なのだ。
チェスターがいなくなった時点でバンドの音を思い出の中だけに残しておきたいという考えも正しいと思う。
しかし、それでも、私の目と耳には、リンキン・パークの名のもとに蘇り、自分たちの物語を絶やさないようにと立ち上がったバンドが、とても美しく映っている。
それはまるで不撓不屈の不死鳥のごとく、再びロックの大天空へと飛び立ってゆく、その第一歩に立ち会えたという事実に、かつて彼らの音楽と出会ったときと同じように、胸が熱くなるのである。