寒い冬を解かす北欧のハーモニー - Ruins / First Aid Kit (2018)
1月に入り、秋の暑さが嘘であったかのように寒い日が続いている。
ここ北陸も、2日に1回は雪が降っているように思える。
こんな季節に聴きたくなるものといえば、やはり北欧産の音楽だろう。
今回取り上げるのは、スウェーデンの姉妹デュオ、ファースト・エイド・キットの2018年作「Ruins」である。
姉ジョアンナと妹クララのソダーバーグ姉妹により結成されたフォークデュオ、ファースト・エイド・キットは2010年にアルバムデビューを果たし、本作「Ruins」は4枚目のフルアルバムとなっている。
彼女たちの最大の特徴は、やはり北欧の空気感を十分に閉じ込めたマイナー調のフォーク・サウンドである。
その音像はまさに耳で聴く北欧旅行。
加えて、姉妹ならではの息の合ったハーモニーがそのサウンドを彩り、オンリーワンの魅力を作り出している。
中でも本作は、その魅力が最大限に引き出された、円熟の一枚であると私は思っている。
前作「Stay Gold」ではストリングス等を加えた比較的明るめなアレンジで高評価を得たが、本作ではシンプルなアレンジでありながらも暗くなりすぎない絶妙なバランスの上に作品が構築されており、その歌声の温かさが際立つ11曲が収録されている。
その音像はまるで焚火のように、聴く者の耳から心までじんわりと温めてくれる。
私はこの作品を聴くと、極寒の北欧で、家族みんなで暖炉を囲みながら歌っているような、ハートウォーミングな風景を連想する。
3拍子系の楽曲も目立ち、私が音楽に求める理想形のひとつが、この40分に表現されている、とさえ感じる。
作品が発表された1月の気候にも非常にマッチし、本作は私にとってその冬のヘビーローテーションになったのは言うまでもない。
シンプルなアレンジながら、楽曲の構成に深みを感じられるのも素晴らしい。
例えば"Rebel Heart"や"Hem of Her Dress"では、楽曲が終わるかと思いきや最後に一段階変化が加えられ、耳を引き付けられる。
ラストに収録された"Nothing Has to Be Here"は本作で唯一、大々的なアレンジが加えられており、一編の映画を見た後のクライマックスのごとく、大きな満足感と充実感の中でアルバム鑑賞を終えることができる。
本作の持つ音楽の温かみは、アルバムを聴き終えた後にも、ほっこりとした余韻として心に残る。
寒い夜に、できれば暖炉や焚火、ストーブなどに当たりながら、じっくりと味わいたい一枚である。