朝の隙間を彩る心の癒し - good morning/藤原さくら (2016)
朝という時間は不思議だ。
基本的に私はギリギリまで寝ていたいタイプなので大半の朝を慌ただしく過ごしているが、たまにすっぽりと時間が空くタイミングがある。
なぜかは分からないが、朝の余裕ほど心地よいものはない。
余裕のある朝が与える心理的影響のメカニズムについて詳しい方がいたらご教示ください。
さて、そんなすっぽり空いた心地よい時間に私が聴きたくなるのが、藤原さくらのデビュー作「Good Morning」である。
タイトルやアートワークからも、柔らかい朝時間に似合いそうな雰囲気が漂っているが、実際に聴いてみてもこれほどまでにこのシチュエーションに合う音楽もそうそう無いだろう、と思える。
和製ノラ・ジョーンズ。
デビュー当初の彼女につけられたキャッチコピーである。
ノラのファンだった私はさすがに言い過ぎだろう、と疑いながら興味本位でこの作品を聴いてみたら予想以上にはまってしまった。
2016年当時は洋楽ばかり聴いていた私であるが、そういった経緯で本作と出会い、フェイバリットな一枚として聴き続けてきた。
もちろん、どれだけ彼女の作品に触れようと、和製ノラ・ジョーンズというのは違うと思う。
ハスキーな声質という大枠では同じかもしれないが、ノラにはノラの、藤原さくらには藤原さくらの良さが、それぞれある。
日本語と英語を織り交ぜながら、アコースティックサウンドを基調とした優しい曲調で、聴く者の心に温かさを届けてくれるのが本作における藤原さくらの最大の魅力だ。
"「かわいい」"や"BABY"などで見られる、AメロBメロの低音ボイスからサビで高音に切り替わる楽曲構成は彼女のボーカルが最大限に活かされている。
先ほど、和製ノラ・ジョーンズというキャッチコピーについて否定的な意見を述べたが、ある意味では、少なくとも本作に限って言えば、その文言もあながち間違いとは言えないかもしれない。
とあるインタビューで、自身の歌声に悩んでいた彼女は、ノラ・ジョーンズの音楽と出会い、自分の声質にも自信を持つとこができるようになったと語っているのを読んで、妙に納得した覚えがある。
本作で奏でられる音は、アコースティックなJ-POPの中にジャズやブルースのフィーリングが内包されており、このバランス感覚はノラ・ジョーンズの名盤「Come Away With Me」を彷彿とさせるところがある。
今作リリース後にドラマ出演をきっかけにブレイクし、よりJ-POP色の強い楽曲が増えたため、彼女の純粋なルーツを直接的に感じられる貴重な一枚となっている。
11曲42分とコンパクトな内容のため、朝のちょっとした時間に聴くのにもぴったりで、ラストに収録された"You and I"の余韻がきっとあなたの一日をほんの少し輝かせてくれるだろう。
本作に閉じ込められたジャズ感もこのアルバムが朝に似合う要因の一つだろう。
なぜジャズは朝に似合うのか、こちらも詳しい方がいらっしゃったらご教示ください。