リコマースのグローバルトレンド(前編)
こんにちは!リコマース総合研究所(リコマース総研)、主席研究員のakaneです。
今回は前編・後編と2回に分けて、海外のリコマーストレンドをみていきたいと思います!
アパレルブランドを中心に、ブランドが独自でリセールを行うためのサービス「RaaS(Resale as α Service)」を提供している企業が海外にはいくつかあります。
その中でも、下取りモデル(※)を提供するThredUp社が2023年4月に発表した「リセール レポート」( https://www.thredup.com/resale )やヨーロッパの最新サービスをもとに、リコマースのトレンドを解説していきます!
※下取りモデル:不要になった商品を店舗やオンラインで下取りに出すと、ブランドの店舗やECで使えるクーポンや現金に変換してくれるモデル
リコマースとは?
リコマースは、製品の適切な長期利用を促進する産業を指し、二次流通プラットフォームやサブスク・シェアエコ、リペア事業者、自社リユースを実践する一次流通のブランド・メーカーなどが参画する、循環型社会の実現と経済成長の両輪を目指す活気ある市場です。
この市場は、商品寿命をのばし循環させることで、大量生産・大量販売の時代から、高品質なものを最適量で生産し、循環型社会の実現に向けた重要な役割を果たしています。
また、リコマースの参加者たちは、消費者が持つ不要品を、必要な人にマッチングさせたり、修理して再利用可能な商品として市場に送り出したりすることで、循環型社会を実現するために積極的に貢献しています。
リコマースのグローバルトレンドサマリー
リユース市場は2027年までに35兆円と現在の2倍規模に!
世界のリユース市場は2027年までに35兆円(現状の約2倍)の規模になり、ファッション業界におけるリユース市場は、今後10年間で約900億ドルの市場規模に達する
Z世代の8割は既にリユースを活用するサステナブル化、新品購入はリセールバリュー重視に
10年後、消費の中心となるZ世代の8割はリユースアパレルを購入し、約半数は、持続可能でないアパレルブランドや小売業者からの購入を拒否する
Z世代の半数以上が、新品と並んでリユースを扱うブランドで買い物をする可能性が高い
また、Z世代の約8割は、アパレルのリセールバリューを購入前に考慮したことがあり、約4割は、リセールバリューが良くないとアパレル商品を購入する可能性が低くなると回答
有名ブランドの自社リセール参入事例が、2022年に急増
ブランドリセールプログラムを持つ小売業が2022年に急増し、導入者のメリットトップ3は、1位「持続可能性の向上」、2位「増収」、3位「ブランドロイヤリティの向上」
小売業者の約6割が、顧客にリセールオプションを提供することが当たり前のものになっていると答え、3人に2人近くが、リセールは企業の長期的な成長戦略にとって不可欠であると回答
リセールを行う小売業者の半数近くが、リセールは短期的には新製品の売上をカニバリゼーションさせるかもしれないが、長期的にはプラスの効果をもたらすと考えている
世界のリユース市場
世界のリユース市場は2027年までに35兆円の市場規模になるとされており、米国のリユース市場は2027年に700億ドルに達すると推計されています。
リユース市場の中でも、世界のリユースアパレル市場は、世界のアパレル市場全体と比較して、平均で3倍のスピードで成長すると予想されおり、2024年には、世界のアパレル市場の10%がリユースアパレルで構成されると予想されています。
消費行動の変化
2022年には、消費者の52%がリユースアパレルを購入しており、購入に前向きな人も含めると全体の75%に達します。さらに、Z世代の83%がリユースアパレルを購入したことがある、または購入に前向きであると回答し、若い世代が今後のリユース市場成長の大部分を占めると予想されています。
2023年、消費者はアパレルに費やす予算のうち、より多くの金額をリセール品に費やすことを計画していることが分かりました。
昨年、37%の消費者がアパレル予算のうち、リセール品に費やす割合が高くなったと回答しました。
また、42%が「中古が身近になった」と回答し、Z世代の30%は、高級ブランドを買うために中古品を選ぶと回答しました。
Z世代の購買意欲
Z世代の購買意欲を高めているのはリセールであり、Z世代の半数以上が、新品と並んでリユース品を扱うブランドで買い物をする可能性が高く、2021年から6pt上昇しています。
また、Z世代の82%は、アパレルのリセールバリューを購入前に考慮したことがあり、これは消費者全体の58%に対し、Z世代では2021年から38ptも上昇しています。
Z世代の64%が新品を買う前にリユース品を探すと回答しており、2021年から4pt上昇。また、Z世代の42%は、リセールバリューが良くないとアパレル商品を購入する可能性が低くなると回答していました。
リセールは大量生産の代替になるか
ファッションは過剰生産の問題を抱えており、世界人口80億人に対し、全世界で毎年1000億枚以上の衣服が生産されています。米国の消費者は2022年に、通常なら新品を購入するはずだったものの代わりにリユースのアパレル商品を14億点購入し、その数は2021年から40%増加しています。
小売業者の3分の1以上が、リセールが成功した場合、新製品の生産を削減すると回答し、現在の置き換え成長率では、消費者が新品ではなく中古品を購入するごとに、小売業者が生産する品目が1つ減れば2027年までに生産量を8%近く抑制することが可能と推計されています。
メーカー・ブランドによる自社リセール
ブランドリセールプログラムを持つ小売業が2022年に急増。86%の小売業のエグゼクティブが、自社の顧客がすでにリセールに参加していると回答し、2021年から8pt増加しました。
リセールプログラムを導入している小売業者が、開始後に実感しているメリットトップ3は、1位「持続可能性の向上」、2位「増収」、3位「ブランドロイヤリティの向上」という結果になりました。
小売業者は、リセールを企業の成長に不可欠な戦略的ビジネスイニシアティブとして捉えており、リセールプログラムを提供している小売業者の半数以上が、リセールはディレクター/ボードレベルで注目されていると回答し、2021年から14pt上昇しました。
小売業者の58%が、顧客にリセールオプションを提供することが当たり前のものになっていると答え、2021年から6pt増加。リセールを行う小売業者の3人に2人近くが、リセールは企業の長期的な成長戦略にとって不可欠であると回答し、リセールを行うリテール担当者の45%が、ESGに関する投資家の要望を満たしていると回答しました。
小売業者は、リセールによるプラスのROIを期待し、投資額を増やすことを計画しており、リセールを行う小売業者の82%は、リセールがプラスのROIを生み出すと期待しています。
リセールを行う小売業者の3人に2人近くが、リセールへの投資は今後2年間で増加すると回答し、リセールを行う小売業者の半数近くが、リセールは短期的には新製品の売上をカニバリゼーションさせるかもしれないが、長期的にはプラスの効果をもたらすと考えていることがわかりました。
リコマースを加速させる新サービス
デンマーク発のファッションブランド「SAMSOE」( https://www.samsoe.com/en/home )では、QRコードを縫い込んだリセールタグを商品に付けることで、リセールが簡単にできるように取り組んでいます。
このリセールタグには、QRコードが直接ケアラベルに縫い込まれており、スキャンするとMetaのマーケットプレイスで広告が生成されます。
この広告をウェブショップからアクセスできるようにしており、使用済みのSAMSOE商品を販売したい人と購入したい人が簡単に繋がることができます。
このように、リユース市場の拡大と共に、消費者がまだ使えるけど手放したいと思った時に、リセールの手間やハードルを下げる仕組みやサービスは今後日本でも広がっていくことが予想されます。
おわりに
米国ではZ世代が多数派であることから、彼ら、彼女らの環境意識の高さに注目が集まっています。アパレルメーカーもこの傾向に敏感に反応し、自社リセールを導入する企業が増加しています。
日本でも2050年のカーボンニュートラルを目指す中で、消費者のエコ意識の高まりや、それに合わせて企業の販売モデルが変化する兆しが見えています。
2023年2月にTSIホールディングス傘下の「パーリーゲイツ」は公式リユースサイト「PEARLY GATES REUNITED」( https://archive.pearlygates.net/ )を5月31日までの期間限定でオープンしました。
また、リユース市場は日本でも拡大傾向にあり、不要な商品を消費者が簡単に手放せるシステムや、売買をマッチングさせるサービスが増えたり、精度を高める技術が向上したりする可能性が考えられます。
▼主席研究員
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