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仮想通貨は未来のお金になる?「ビットコインはチグリス川を漂う」解説

お金は私たちの生活に欠かせない存在です。

しかし、日々何気なく使っているお金が、どのように生まれ、進化してきたのか、深く考えたことがあるでしょうか?

そして、テクノロジーが急速に発展する現代において、未来のお金はどのような形になっていくのでしょうか?

デイヴィッド・バーチ『ビットコインはチグリス川を漂う』は、そんな疑問に答えてくれる一冊です。

電子マネーや電子決済の専門家である著者が、歴史を紐解きながら、未来のマネー像を独自の視点で提示しています。

この記事では、本書の内容を深く掘り下げ、お金の進化と未来について考察していきます。


どんな本?

『ビットコインはチグリス川を漂う』は、マネーテクノロジーの未来史を描いた書籍です。

バーチ氏は、お金が「中年期」を迎えていると述べ、その現状を「居場所を失いつつあり、孤立し、誤解されている」と表現しています。

過去から未来へとお金の進化を辿りながら、新たなパラダイムを提示している点が本書の特徴です。

バーチ氏は、お金の未来像として、私たちのアイデンティティと分かちがたく結びついたもの、そして中央銀行の拘束から解放された、コミュニティの評判(レピュテーション)に基づくものを挙げています。

この議論の基盤となるのは、お金の3つの主要な機能です。

  1. 価値の尺度: 商品やサービスの価値を測る共通の単位。

  2. 交換の媒体: 商品やサービスと交換するための手段。

  3. 価値の貯蔵: 将来の消費のために価値を蓄える手段。

バーチ氏は、これらの機能を踏まえながら、歴史的な視点からお金の進化を分析し、未来におけるお金の役割を考察しています。

お金の進化:過去から未来へ

バーチ氏は、お金の進化を以下の段階に分け、それぞれの時代における特徴を解説しています。

  • 古代: 物々交換から始まり、貝殻や貴金属など、希少価値のあるものがお金として使われていました。これは、価値の貯蔵と交換の媒体としての機能を担っていました。

  • 中世: 貨幣の登場により、取引がよりスムーズになりました。貨幣は、国家がその価値を保証することで、より信頼性の高い交換の媒体となりました。

  • 近代: 紙幣が登場し、持ち運びや保管が容易になりました。紙幣は、中央銀行が発行を管理することで、価値の安定化に貢献しました。

  • 現代: クレジットカードや電子マネーなど、デジタル化が進んでいます。 デジタルマネーは、取引の効率化や利便性向上に大きく貢献しています。

バーチ氏は、ニクソンショック(1971年)を、お金の進化における重要な転換点として捉えています。

ニクソンショックとは、アメリカ合衆国がドルと金の交換を停止したことで、世界の通貨システムが変動相場制に移行した出来事です。

この出来事により、お金は金という実物資産との結びつきを失い、国家の信用に基づくものへと変化しました。

そして、現代においては、テクノロジーの進化によって、お金はモノから情報へと変化しつつあるとバーチ氏は述べています。

スマートカード、スマートフォン、そしてビットコインなどが、その代表例です。

特に、ビットコインのような仮想通貨は、中央銀行などの管理者を必要とせず、ユーザー同士が直接取引を行うことができるという点で、従来のお金とは大きく異なります。

さらに、バーチ氏は、アイデンティティと結びついたお金という概念を提唱しています。

これは、個人の属性や信用情報などが、お金と紐づけられるという考え方です。

例えば、個人の信用度が高いほど、低い金利で融資を受けられたり、より高い限度額のクレジットカードを利用できるようになるといったことが考えられます。

また、本書では、キャッシュレス決済・送金サービスの普及についても触れられています。

ケニアのM-PESAは、その代表的な例です。

M-PESAは、携帯電話を利用した送金・決済サービスで、銀行口座を持たない人でも手軽に利用できることから、ケニアで広く普及しています。

そして、バーチ氏は、テクノロジーの進化によって、最終的には物々交換のようなシステムに戻る可能性も示唆しています。

これは、ブロックチェーン技術などによって、個人が直接取引を行うことが容易になるためです。

お金をテクノロジーとして捉えるというバーチ氏の視点は、非常に興味深いものです。

テクノロジーの進化は、常に社会に大きな変化をもたらしてきました。

印刷技術は、知識の普及を促進し、産業革命は、大量生産を可能にしました。

そして、インターネットは、世界中の人々を繋げ、情報共有を加速させました。

同様に、お金というテクノロジーの進化も、私たちの社会や経済システムに大きな影響を与える可能性を秘めていると言えるでしょう。

ビットコインとチグリス川:その関係性

本書のタイトルである「ビットコインはチグリス川を漂う」は、一見すると不思議な組み合わせに思えます。

しかし、これは、マネーテクノロジーの未来史を象徴的に表した表現です。

チグリス川は、メソポタミア文明発祥の地であり、古代文明において重要な役割を果たしました。

そして、メソポタミア文明は、世界で初めて貨幣制度を導入した文明としても知られています。

つまり、チグリス川は、お金の歴史の原点を象徴していると言えるでしょう。

一方、ビットコインは、現代のマネーテクノロジーの最先端を象徴する存在です。

中央銀行などの管理者を必要とせず、ユーザー同士が直接取引を行うことができるという画期的な仕組みは、お金の概念を大きく変える可能性を秘めています。

バーチ氏は、この2つを対比させることで、お金が長い歴史を経て、どのように進化してきたのか、そして未来に向けてどこへ向かっていくのかを、読者に問いかけているんですね、面白い。

ビットコインの現状と将来性

ビットコインは、2009年に誕生した世界初の仮想通貨です。

中央銀行などの管理者を必要とせず、ユーザー同士が直接取引を行うことができるという点で、従来のお金とは一線を画しています。

誕生当初は、1円にも満たない価値でしたが、2024年12月には16,605,630円という史上最高値を記録しました。

これは、ビットコインの需要増加、現物ビットコインETFの承認、そして金融緩和政策などの要因が重なった結果だと考えられます。

しかし、2025年2月現在、ビットコインの価格は下落傾向にあります。

米経済悪化懸念やBybitのハッキング事件などの影響もあり、価格は1,200万円台で推移しています。

ビットコインの将来性については、肯定的な意見と否定的な意見があります。

肯定的な意見

  • 決済手段としての利便性が高い。

  • 銀行などの仲介者を必要とせず、世界中どこでも誰とでも迅速に送金できる

  • 発行上限枚数が2,100万BTCと決まっているため、希少価値が高い。

  • 現物ビットコインETFの承認により、機関投資家を含む多くの投資家がビットコイン市場に参入しやすくなった

否定的な意見

  • 価格変動が激しく、投資リスクが高い。

  • 短期的な価格変動は大きく、投資初心者にとってはリスクが高い

  • マクロ経済や規制などの影響を受けやすい。

  • 世界経済の動向や各国の規制によって、価格が大きく変動する可能性がある

  • スケーラビリティ問題など、技術的な課題も残っている。

  • 取引量が増加した場合、処理速度が遅くなったり、手数料が高騰する可能性あり

このように、ビットコインの将来性については、様々な意見があります。

しかし、ビットコインが世界中で注目されていることは間違いなく、今後の動向から目が離せません。

感想

これ、めちゃくちゃ面白いです。お金の未来がどうなるかなんて考えたこともありませんでした。

特に、お金が私たちのアイデンティティと結びつき、コミュニティの評判に基づくものになるという未来像は、新鮮な視点でした。

バーチ氏の指摘通り、テクノロジーの進化は、お金の概念を大きく変えようとしています。

仮想通貨やブロックチェーン技術は、その可能性を秘めた技術であり、今後の発展に期待が高まります。

一方で、中央銀行の役割や、プライバシーの保護など、解決すべき課題も多く存在します。

また、評判に基づくシステムは、評価基準の公平性や透明性をどのように確保するのか、といった問題も考えられます。

結論

『ビットコインはチグリス川を漂う』は、お金の過去・現在・未来を包括的に捉え、新たな視点からマネーテクノロジーの未来像を提示した書籍です。

本書を読むことで、お金の歴史、ビットコインの仕組み、そして未来のお金について、深く理解することができます。

お金の未来について考えてみたい方、ビットコインやブロックチェーン技術に興味がある方、そして金融業界に関わる方々に、ぜひおすすめしたい一冊です。

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