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新・チェスのレシピ #10 チェスでスコア1300点超えを目指す人のために

前回、対局相手の棋風の一端が見えたら、それに応じた手を作っていくという指し方が可能だという記事を書きました。そのほうが、ソフトやAIが示す最善手を覚えて指すよりもずっと勝ちやすいことも確かです。ネット対局の場合、結局のところ、人と人が対戦しているので、相手の癖や棋風をいち早く感得できたほうが俄然有利です。

私たちチェスの凡人はIM(インターナショナルマスター)やGM(グランドマスター)と対戦しているわけではないので(対戦のしようもないですが)、お互いにミスをしたり、癖があったりします。それをいち早く見抜いてしまった側に勝利の女神が微笑みます(多くの場合)。

ということで、下の局面です。

第1図

まずは上の局面から相手の棋風や癖を感得してください。すぐにいくつかのことがわかるかと思います。

黒が序盤の駒組みを終えているのに対して、白は数手遅れています。ここからわかることは、白はクイーンを早繰りして攻めを急いだものの、黒に対応されてしまい、手損を重ねたこと。

加えて、その代償として白は守りに大きな瑕(キズ)を抱えています。キャスリングをしていないこと、1ランクにまだナイトがいること、このふたつによって白は守りがかなり脆弱です。ナイトが1ランクにいることで、a1のルークの横効きが阻害されています。つまり白は守りをおろそかにしてまで攻めを急ぐ傾向があることがわかります。

もう少し言うと、ナイトは相手の陣地に近いところで威力を発揮し、ビショップは遠くからでも相手陣に効きが通るので、ナイトは序盤の早い段階で前に出しておくべき駒です(一般論として)。

話を戻すと、守りが弱い白は、キングが黒のルークやクイーンにほぼ直射されています。

もうここは黒は白のキングを詰ましに(メイトに)行ってしまえます。そのためのコンビネーション(手順)を考えてください。

教科書的にはNh5が最善だと思いますが、体系的な駒組みをしてこなかった相手ですので、上の一手(c4)に対して白は適切な対応ができないだろうと考えられます。黒の意図は、中央(dファイルとeファイル)を素通しにしてしまうことにあります。

c4からの一連の駒交換に白がすべて応じると下の局面になります。

これ以降は説明が不要だと思います。次に黒はRe8とすればいいだけです。

ひとつだけ気をつけないといけないことがあります。この一連の駒交換を終えた時に自分(黒)に手番が回ってくることです。もし駒交換の後に相手(白)に手番がある場合、そこでキャスリングされるなどして守りを固められてしまうからです。

ここでまたひとつ話を加えると、局面や駒組みにも左右されるので一概には言えませんが、駒得しているよりも手得しているほうが有利なことも多々あります。手番を握る(可能ならば握り続ける)ことも重要になってきます。

最後にもうひとつ、この一局で見逃せないのが、第1図の局面で、f4でビショップを交換するまで、黒はどの駒も相手陣に近づいてもいないことです。堅牢な自陣を作っておくと、瞬時に攻めに転じられるいい例になっています。

センター付近のポーンの局面ごとの役割についてはいずれ解説する予定です。


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