藤井聡太二冠に学ぶ次の一手(13) 受けもここまでくると芸術
一見するとただの角取りだが実はそうではなく別の意図があったと気づかされる一手。
第1図 70手目 △8二香打まで
窪田義行 七段 vs. 藤井聡太 二冠 第79期順位戦B級2組10回戦(2021年2月9日)より70手目。
仮に▲9五角と逃げて△9四歩と追いかけていくと、せっかく作ったと金(6八)を取られてしまうだけである。故に70手目が角取りを狙ったものではないと気付くまで随分時間がかかった。
この香を相手のと金に取らせたいのだ。なぜか?それを理解するために一手戻る。
第2図 69手目 ▲4七銀まで
この局面で先手に持ち駒がないとはいえ、と金を玉側に寄られ、角を成られたら、後手玉はかなりピンチ。
それを回避するためにまず相手のと金を自玉から遠ざける狙いがあったと考えるのが自然。持ち駒のない先手はおそらく取ってくるだろう。しかも香車は先手に取って欲しい駒に違いない。
ということを考えたかどうかわからないが、これを神の一手と呼ぶか芸術と呼ぶかはさておき、どれだけの人が思いつくだろうか。ちなみに私は100年あっても思いつかない。