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折々のチェスのレシピ(364)少しだけ高度な知識をあなたに

終盤の局面です。

第1図

黒が優勢なことは一見してわかりますが、だからといってただちに黒が勝ち切れるという局面でもありません。白はマイナーピースをすべて失っていますが、ポーンの数では勝っています。

ある程度スコアが高くなるとクイーンをどこかで交換して上のような局面になることも多くなります。

上は終盤の局面ですが、この局面からは序盤中盤の指し回しがある程度想像ができます。白が劣勢に陥っている理由はたんにマイナーピースの駒損だけでなく、g、hファイルのポーンがまったく活用されていない点が大きいです。

終盤に至って戦力化が期待できない駒がふたつ(g、hのポーン)もあると厳しさは相当です。白が終盤を意識せずにここまで指し進めてしまったことは明らかです。対局していると時々、中盤あたりのどこかで、「これはドローでなければ、エンドゲームになるな」という局面が訪れます。

この対局であれば、

白はすでにこの時点で厳しくなっています。ここで白はドローを目指すかエンドゲームに持ち込んでなんとか粘るかの決断が必要です。序盤で失敗するということはそういうことです。

こうなると白はクイーンサイドにキャスリングするしかないでしょう。それに合わせて黒もキャスリングしてくれれば、

上のような局面になります。この局面あたりからすでに、f、g、hファイルのポーンをどう活かすかを考えつつ手を作っていかないと第1図のように戦力が不足した状態で終盤を迎えることになってしまいます。

かといって、この局面から右辺を盛り上げていってもすぐにはいい形にはなりません。

白は序盤の駒組みを失敗しているとはいえ、まだ挽回が十分可能です。しかしながら、ここからいきなり形勢がよくなって勝ってしまうということはまずありません。ということは長い対局になることがすでに決定しており、それはつまり、どうやって有利な形で終盤を迎えるかを考えなければいけなくなっているということを意味します。

さて、実は今回はここからがもうひとつの本題みたいなものになります。上の局面は、黒が低い陣形を組んで簡単には攻めさせない形を作っています。しかしながら、守りは堅いものの相手陣は遠いです。こういう陣形を組む時、老練なプレイヤーはどこかでポーンを突いて自分に有利な形を作る準備をしています。

それがd5です。白はそれに気がつかないとさらに形勢を損ねてしまいます。d5の思惑を外すにはe5しかありません。それに気がつくことができればまだ対局は続きます。ここでe5を指すことができれば白にも逆転の目は残されています。しかし、それに気がつかないとほぼ負けが確定してしまいます。

ここで白の次の手がd5と気がつくか気がつかないかで棋力に天と地ほどの差が生じます。相手の次の手がわかるかどうかはチェス盤上の生死を分けてしまいます。


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