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DeepTechスタートアップ向け 研究開発者採用の教科書

はじめに


永田 衛 | Recboo リクルーター
パーソルキャリア株式会社にて両面型エージェントとして社員数数万名の大手企業から1桁のベンチャー企業まで幅広く支援。
その後外資系経営コンサルタントを経て独立。現在はAIスタートアップのエンジニア採用を担当。

DeepTechスタートアップの採用が難しい理由

世の中のスタートアップは増え続けている一方で、労働人口は減少し続けています。

また、優秀な人材に対しては報酬水準が高騰していることもあり、資金力に劣るスタートアップでは人材に対して報酬面で報いることが難しく、大手企業や外資系企業に対して条件面で負けることが多い状況です。
日本には優れた技術力を持つスタートアップも多数存在するが、知名度がなく転職希望者が自身の技術力を活かせる企業や自身の志向性に応じた企業を見つけることが難しい点。

スタートアップ企業自身も事業や研究に注力しており、採用活動や広報活動に回す労働力や資金力がない点、スタートアップは代表や少数の経営陣・社員で運営されていることが多く、採用に関する知見・経験が乏しい点。

優秀な人材を求めるがゆえにオーバースペックな採用要件定義をしてしまい、必要以上の人材を求めているケースが散見される点も大きな課題として挙げられます。

本記事で解決できること

本記事ではスタートアップの採用成功に特に採用難易度の高い研究職・エンジニア等の技術系職種の採用に必要なノウハウを記載します。

  • 自社に必要な人材のスキルセットや求める人材像の設定方法

  • それらの人材をどのチャネルで採用するか

  • 自社が欲しい人材に自社の魅力をどのように訴求するか

  • 選考中のスキル・マインドセットの見極め方や、望ましい人材のアトラクト方法

採用プロセスにおける入口から出口までのノウハウを網羅的に解説致します。

想定読者

本記事は主にスタートアップの経営者および採用責任者、スタートアップの支援を行うベンチャーキャピタルの方をメインの想定読者として記載しておりますが、スタートアップ以外のベンチャー企業で採用活動に従事されている方に(や採用活動を支援しているRPO、転職エージェントの方にも)ぜひご一読いただければと思います。

採用前の準備

採用要件の設計

  • 必要なスキルセットの定義

採用活動を始めるに当たり、まずは自社の事業状況や研究開発状況に鑑みて、どのような人材が必要か、という点を明確にする必要があります。
CEOや採用担当者、現場担当者等の社内での認識合わせのためにはもちろん、リファラル用での採用や転職エージェント等を利用に向けた社外関係者との認識合わせのためにも、どのようなスキル・マインドを持っている方が自社に必要か、という点を誰が見ても分かるレベルまで落とし込む必要があります。
この際に注意が必要なのが、何でもできるスーパーマン的な存在を求めるのではなく、まずは自社に必要な最低限のスキル・経験を明確に定義することです。
「あれもできる、これもできる」という人材がもちろん望ましいですが、オーバースペックな方を求めるがあまり、本当は必要なスキル・経験を満たしていた方を採用ターゲット外と判断してしまったり、オファーした候補者がより好条件で他社に流れたりといった機会損失のリスクを高めてしまうので、まずは最低限必要なスキルセットを設定し、その後に歓迎要件を数点だけ設定することを推奨しております。

  • 求める研究開発者像の明確化

求める人材像に関しても、企業のカラーによって異なるため、企業風土、経営者や上長との相性、リスクを取ったチャレンジが望ましいのか、それとも堅実に業務を遂行いただける方がいいのか、等を採用関係者全員で話し合い、明確にする必要があります。

採用環境の整備

採用ポジションの要件が明確になれば、次は採用環境の構築・整備が必要になります。
どのような選考フローで進めるのか、どのフェーズでどの担当者が担当するのか、といった選考フローの構築に加えて、給与・待遇面や入社後のキャリアパスの設計・整備も必要になります。

  • 給与・待遇の設計

給与面の設計に際して、まずは決定した人材要件をもとに競合他社の給与・待遇面をリサーチすることを推奨します。資金状況等に鑑みて、他社と同水準にすることが難しいケースも多いと思いますが、まずは市況感を踏まえたうえで自社ではどの程度の水準まで近づけることができるのか。
近づけられない場合にはストックオプションの付与で近づけるのか、それとも役職を付けてアトラクトするのか、サインオンボーナスを付与することでオファー金額を他社に近しい水準にするのか等、ベースとなる給与部分以外でどのように戦うのか、という点を検討していきます。

  • キャリアパスの設計

入社後のキャリアパスやミッションの設計も優秀な候補者のアトラクトには非常に重要です。
スタートアップへの入社を志望する方は入社後にどのようなスキルを身につけることができるか、入社後どの程度の期間でプロジェクトまたはピープルマネジメントを経験することができるのか等を重要なキャリアアンカーの1つとして持っていることが多いため、自社の事業および採用計画も鑑みつつ、当該ポジションではどのようなミッションがあるか、
メインとなるミッション以外にも、どのような選択肢があるのか、自分で選択肢を作ることは可能か、など入社後のキャリアパスおよび得られる経験・スキルを具体化しつつ、採用ペルソナに応じて打ち出していくことが必要になります。

採用ブランディング

  • 研究開発の魅力発信

高い専門性やコアとなる技術を保有しているものの、知名度が低く、候補者に適切に情報を届けることができていないスタートアップが散見されます。

効果的な採用手法

研究開発者が集まる場所

  • 採用媒体

採用要件設定、環境整備等の事前準備が完了した後は、適切な採用媒体を選定・運用する必要があります。

  • 自社が求める人材がどの採用媒体にいるのか

  • どのように採用媒体を運用するのか

  • 正社員・業務委託等、どの雇用形態が望ましいのか

  • 転職市場にはターゲットがいないのでリファラル採用や独自の開拓が必要なのか


等の様々な軸から運用する媒体を選定することが重要であり、媒体を選定した後にも適切に媒体を運用する必要があります。
DeepTechスタートアップおよび研究開発職では求める人材・スキルセットが他企業・職種に比べて非常にニッチであることもあり、少ないターゲットに適切にアプローチするためにも1つの媒体に固執するのではなく、媒体のデータベース状況も鑑みながら、複数の媒体を運用することや、データベースが枯渇した媒体は運用を打ち切るなど、柔軟に対応する必要性が高いです。

効果的な情報発信

  • 技術的な深さのある求人票作成

研究開発者は自身のスキル・経験が当該ポジションでフィットするのか、
自分が得たい経験・スキルを当該ポジションで得ることができるのか、
という点を重視しているため、求人票に関しても過不足ない情報を記載することが必要となります。

また、自社のコアバリュー・技術はどこにあるのか、それらは競合他社とどのように異なる or 優位性があるのか、という点を技術面に基づいて記載する必要があるため、求人票作成時には現場担当者とも連携しつつ、類似サービスや従来の技術との相違点・自社の強みを事実ベースで記載することや、
なぜそれらを実現できているのか、という背景、実際の研究開発体制や顧客への導入事例および理由などを可能な範囲で記載することが望ましいです。

※あまりにコアな部分に関しては面談・面接内での説明でも問題ないですが、入口で候補者をアトラクトするために、できるだけ詳細な記載を推奨します。

選考プロセスの設計

書類選考のポイント

  • 応募書類/ポートフォリオの見方

書類選考では募集開始時に定義した採用要件に沿って、応募者のスキルセットが自社にフィットするか否かを見極めます。

書類選考で必要以上に厳しくスクリーニングしてしまうと、採用の機会損失につながってしまうため、求人票に記載の必須要件を満たしているかに加えて、足切りラインとなる転職回数や年齢等の設定や、何歳程度の方までは必須要件に必ずしも達していなくとも、ポテンシャル採用として検討することができるのか。等を事前に採用担当と現場ですり合わせることが必要になります。

採用担当者のみで書類選考できるのがベストではありますが、専門性の高い分野・技術等の場合には一次的なスクリーニングを採用担当者が行い、最終的な判断は現場責任者/担当者に委ねる、というケースもよく用いられています。


選考設計

  • カルチャーフィットの確認

書類選考でスキルマッチは一次的に確認できているため、面接ではスキルや経験の深堀りに加えて、人物面や志向性等が自社にマッチしているか、という点を見極める必要があります。

特にスタートアップでは、必要に応じて多様なロールを自発的に担うことができるか、事業や開発の方向性が急遽変更になった際にアジャストすることができるか、等のマインド面に加え、組織が少数であるが故に代表や業務上密に関わるメンバーとの相性が重要になるため、どのような人物が組織にフィットするかという点を複数名の視点から見極める必要があります。

自社が求める人材を見極めるために自社特有の想定質問を準備することや、可能であればリファレンスチェックの実施、正式参画前に業務委託としての参画期間を設けるなど、書類選考や面接のみの一般的な選考フローよりも多角的な視点で見極めができる選考フローを構築する必要があります。

まとめ

  • DeepTechスタートアップならではの採用のポイントと継続的な採用成功に向けて

DeepTechスタートアップの採用成功に向けては要件定義や採用環境の整備に加えて、自社が求める人材へのアプローチができる採用チャネルを選定することや、求める人材にとって適切な情報提供をすることが必要になります。

また、取りこぼしを防ぐための選考設計に加えて、自社にフィットしない人材の参画を防ぐために、定量・定性的な観点でのスクリーニングが必要となり、入念な事前準備に加えて、準備した事項の実行と状況に応じて修正と改善を行い続けることが大切です。

Recbooについて

社員数の少ないスタートアップでは、事業や組織に対する社員1人ずつの影響力が大きいため、スキル・マインド共に入念に見極める必要があります。

スタートアップのリソースに鑑みると,自社に望ましい人材を適切に定義し、適切なチャネルでアトラクトするだけでなく、チャネルの運用や選考フローの構築・実行までを自社で賄うのは難しいケースも散見されるため、自社の採用成功および事業拡大に向けて、適切な経験・ノウハウを保有する有識者へのアウトソースも選択肢の一つとして選択することも検討いただければと思います。

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