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【3割うまい!!】ぎょうざの満州を知ってしまった事件

 皆さんは、ぎょうざの満州をご存知だろうか。
 3割うまい!!がキャッチコピーで、埼玉県を中心に展開されている、チェーンの中華料理店である。私の恋人の住む街にこのお店があって、以前からこのキャッチコピーについて様々な憶測を交わしていた。彼もその街で初めてぎょうざの満州ならびにこのキャッチコピーと出会った。この3割うまい!!という言葉は看板に書いてあった。「3割増しでうまいよ、という意味?はたまた、うまさが十段階あるうちの3割しか美味しくないって事?いやぁ、さすがにそんなハズは無いだろうけど・・・。相場の3割くらいの価格でうまいよ!って事?どれだろう、何なんだろう・・・」真相が気になって調べた事もあった。結論からいうと、ぎょうざの満州のホームページの企業理念を読めばこの3割うまい!!という言葉の理由が分かるので、気になる人はぜひ読んでみて欲しい。
http://www.mansyu.co.jp/kaisya_rinen/kaisya_rinen.html


 そんなぎょうざの満州に、私は行った事が無かった。彼は遅くまで仕事でヘトヘトな夜や休日の昼下がり、、、そこそこの頻度でぎょうざの満州に行っていた。「すごい美味しかったから、連れていきたい。あの美味しさを知ってもらいたい」と、彼は私にも3割うまい!!体験をしてもらいたくて仕方がなさそうだった。私も、餃子は普通に好きだしそこまでオススメされたらそれは気になる。その街で食事をする事になる度に、選択肢にぎょうざの満州は常にあるのだけれど営業時間やその時の食べたい物といった様々な条件が合致することが無かった。「今度はここで食べようね」というような事を2年近くやっていて、ようやくチャンスが巡ってきた。先日、11月18日の土曜日の出来事である。 

 前日、私たちは浦安市で長い待ち時間を寒さや雨風に堪えて高いところから落とされて絶叫する・・・という様な冒険をしていた。その疲労があったのでお昼前まで気絶するように寝ていた。良い天気。あたたかい陽射しの心地よさと、バキバキな全身の痛み(特に腰)で目覚めた。王様のブランチを観ながら、コーヒーとおめざを噛る。おめざは、彼が寝癖だらけの頭でモーリー・ロバートソンのように用意してくれたコンビニのマカロンだった。ありがとう、モーリー。私はマカロンがどこのものであろうと大好きだ。モーニング(でもない)コーヒータイムもそこそこにして、のろのろと支度してから出掛けた。
 お気に入りのお店でスパゲティを食べて遅めのランチを済ませた。後から「あ!ぎょうざの満洲という手もあったけど、パスタの気分だったね・・・。」という会話をしていた。そこから近所の公園を目指して散歩し、新しくできていたパン屋やスイーツのお店を見つけた。公園につくと、紅葉のタイミングを逃したまま冬の到来に戸惑っているような木たち。青々とした葉をたっぷり纏った木がやたらと多く感じた。それでもしっかりと地面に落ち葉の絨毯が敷かれていた。落ち葉はひとしきり踏まれて、良い香りを立ち上がらせていた。ドッグランで駆け回ったりじゃれあっている他所の犬を観察したりして過ごした。すごく充実して、気持ちの良い時間だったのだけれど土曜の公園なんていうのは「かぞく」のものすぎて肩身が狭い気分になった。ひとりでなくて良かった。心から思ったので、彼にそう伝えたところ「今日は、まだ少ないほう。日曜日の日中の方がすごい。そういう時はドッグランの犬をみたり、公園を周回するようにただただ歩く」と、かつて彼が一人で休日のこの公園で感じていた疎外感や、そんな感情になった時の対処法を教えてくれた。
 公園をあとにしてから、電車に乗って別の街に移動した。彼が使っていたイヤホンが壊れてしまったので、買い物に付き合った。家電量販店で、若葉マークと一緒に「初心者におすすめ」と書かれたPOPが貼られていたイヤホンを購入して(Bluetoothのペアリングが最大8台できるってすごい)外にでると、もう空は暗くなっていた。「どうする?どこか行く?」「最近、あのお店が移転先でまた営業を始めたから行ってみる?どんな感じなのか気になるね」私たちの憩いの場である喫茶店(の、移転先)へ向かった。「そしたらさ、そこでお茶して・・・戻ったら夕飯に満州行く?」めちゃめちゃに鼓動が早まった。ぶちあがったのだ。なんて天才的な提案をするのだろう。そこから、喫茶店で二人ともウインナーコーヒーを啜ってしばらく休憩した。移転先は、少しこぢんまりとしてしまった印象ではあったが内装の雰囲気やコーヒーの味はちゃんとそのままで、ほっと一息つくことができた。人混みを潜り抜けて、熱気が立ちこめる地下道を歩き、帰路についた。

 「よし、あとちょっと!」声を掛け合い、ファイト!といった表情を作った。励まし合いながら歩く。昨日も散々歩いたし、今日もずっと歩いてた。だからこの応援はお互い必要だった。いよいよ、私たちはぎょうざの満州にたどり着いた。
 店内は冷凍餃子を持ち帰りで購入しにやって来た人、家族連れがテーブル席に、カウンター席ではササッと食べて去っていく男性が代わる代わる座っては食べて帰っていく。
  テーブル席に通される。備え付けられたタブレットを慣れた手付きで彼が操作する。まずは二人前の餃子をカートに入れた。餃子一皿(6個入り)で300円。たまげた。安い。安すぎる。「何にしようかなぁ~♪あ、これ美味いんだよ。これも~。あ、これも美味しいんだよ~!」正直、餃子以外のメニューに惹かれていなかったのだが彼がそう力説するので目移りしてしまった。結局、餃子以外にもレタスチャーハン、生姜焼き、ピーマンと牛肉炒めを頼んだ。厨房から中華鍋がジュワァと音をあげる様子が聞こえてくる。しばらく待っていると、まずは生姜焼きが出てきた。食欲の増す生姜のいい香りと、見るからに柔らかそうな豚肉。「食ってみ?」と取り皿を差し出されたので、一切れ貰った。「ほいひぃいいい~!」美味しくて、謎に左右に体を揺らす女になってしまった。そんな感動を処理しきれていないのに店員さんの「お待たせいたしました」という声と共に餃子、ピーマンと牛肉炒め、レタスチャーハン(スープ付き)が次々とテーブルに並べられた。出来立てアツアツのこの提供されたタイミングが一番美味しいに決まっているので、一口ずつ順番に食べた。スープ、レタスチャーハン、ピーマン。どれも絶妙な火加減と味付けだった。満足度が高いのに、濃すぎてやたらと喉が乾いてしまわないような味。感動が、次から次へとやってきて忙しかった。
 そして、満を持して。餃子を食べた。お酢に胡椒という通ぶった小皿を用意してみる。パリパリの羽根が付いている方に、酢胡椒を付けて浸してしまわないように。がぶりと噛みついた。美味しくて、フリーズしてしまった。まず、お肉が柔らかかった。挽き肉って、こんなにジューシーな感じでしたっけ?とうような。そしてほどよい脂の甘み。それでいて脂身(苦手なのでガリっとした塊は当たると吐き気がする)は気にならない。次に、シャキシャキと瑞々しくて「え?これはもう野菜餃子ですか?」というくらいに野菜がたっぷり入っているのを感じられた。とても好ましかった。奥から今度は生姜の香りがした。生姜は、私に欠かせない食材。冷え冷え人間だから。冬になると生姜チューブを持ち歩き、自販機で買ったココアに入れて飲むキモイ事をする。胃もたれだろうが、自立神経系の不調だろうが乗り物酔いだろうがどんな理由から生じるムカムカも和らぐから素晴らしい。
  しばらくすると、流石に腹が膨れてきた。それでも生姜のお陰で最後の一個になった餃子も依然として美味しかった。餡についての感想が多くなってしまったが、焼き加減と皮のパリパリもちもちな感じも素晴らしかったのだ。
 今だからこそ、冷静に美味しいと感じた部分を言葉で書き表せているのだが実際に食べている時にはそうはいかなかった。殆どパニック状態と言っても良い。ただ、強く感じていた事が3つあった。
 ①安すぎる。この美味しさと見合わないくらいに美味しい。
 ②記念日みたいな、大切な日の外食の候補に入った。
 ③今後彼が「今日は、ぎょうざの満州に行ってきたよ」と言った時に嫉妬で狂ってしまうかもしれない。

 それだけは、はっきりと言葉にできた。(③も実際に彼に伝えた。あんまり本気だとは思っていなさそうなリアクションだった)ほとんどボンヤリしたまま帰宅。15分ほど、布団の上に大の字で寝転がって反芻していた。その時間が、必要だった。ぎょうざの満洲、恐るべし。餃子の美味しさは想像を超えていた。他のメニューも然り。3割うまい!!では伝わらないくらいに美味しかった。
  知ってしまった。ぎょうざの満洲を。昨日までの私は、もうどこにも居ないのだ。ビフォーぎょうざの満州/アフターぎょうざの満州の、アフターにきてしまった。この大きな事件は記しておかなければならない。人間は2つに分かれるのだ。ぎょうざの満洲を知っている人間と、知らない人間に。どうか、皆さんも行ってみて前者の人間になってくださいね。3割うまい!!ぎょうざの満州。

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