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エンタメに見る自身の心象風景〜今年を振り返って〜

 長い一年だった。
 しんどい一年だった。

 楽しい事はいっぱいあった。
 旅行もいっぱい行った。宮古島、宮崎、北海道。
 ゴルフ場もいっぱい行かれたし、スコアも良くなった。
 9年ぶりの高校の同窓会も大成功だった。

 でも、心の中には常に、元旦に訃報が届いた大切な存在がいた。
 重かった。
 悲しんだり、怒ったり、心は揺れ続けて、ようやく12月になって落ち着いた。
 あまり出てこないけど、たまに夢に出てくると、死ぬほど嬉しい。
 なら、それでいい。
 夢を見て嬉しくなるくらい大好きという気持ちを大事にしよう。
 そう思えて楽になった。

 そんな私が2024年に見たエンタメで、心に響いた作品を書いておく。

 まずは映画『ルックバック』。
 これは以前noteにも感想を書いた。

 失った悲しみ。
 大切な人を亡くして、生きる気力を失った時、砂漠のように渇いた喪失の中で、小さな記憶という奇跡を見つける。
 そして、その小さな記憶にすがって、なんとか歩き始める。

 この映画に関して、いろんな感想を持つ方がいるけど、私にとっては、【追悼】だった。
 そして、何かに打ち込んでいく事が、生きる糧になると改めて気付かされた作品だ。


 そしてドラマは、日本のドラマは今年は割と豊作だった気がする。
 その中でも、『アンメット』と『宇宙わたる教室』が、心に沁みた。
 『海に眠るダイヤモンド』も良かったけど、あまりにも好きな世界観過ぎて、あまりにも期待し過ぎたために、クライマックスが物足りなく感じてしまった(苦笑)。


 『アンメット』は、本当に上質なドラマだった。
 映像も美しいし、とにかく主演の杉咲花さんと若葉竜也さんの演技が、静かでナチュラルなのに熱くて素晴らしかった。

 特に私は第二話が好きだった。

サッカー強豪校でエースとして活躍する高校生の鎌田亮介が試合中に倒れ、救急に運ばれてくる。
検査の結果、右脳を損傷している亮介には身体の左側の感覚を全て失う“左半側無視”という後遺症が残っていると判明。
亮介は、左が見えないだけでなく、左側の情報を全て無視してしまう重い症状でまっすぐ歩くこともままならない。
それでも、チームの仲間と全国大会出場を目指す亮介は、落ち込むどころか、サッカー復帰を目指して懸命にリハビリに励む。
ミヤビはマンツーマンで亮介のリハビリに寄り添うが、やがて“つらい現実”を亮介に伝えなければならなくなる…。

フジテレビのサイト『アンメット』より
アンメット第二話

 ミヤビ(杉咲花)が、後遺症を抱えた高校生のサッカー練習に本気で付き合うシーンが胸アツだ。

 出来ていた事ができなくなり、全国大会という夢を失いかけている少年と、記憶を失って毎日自分で書き続けている日記でどうにか生活をしているミヤビ。
 失ったものを抱えて生きていく2人の姿が、台詞なしに、ただただ泥だらけになりながらボールを追う事で、その苦しさに向き合う姿が描かれている。
 沈黙がより胸を打つ場面だった。


 そして、NHKドラマ『宇宙わたる教室』。

大阪府のとある定時制高校・科学部。
年齢も抱える事情もさまざまな生徒たちが、2017年、科学研究の発表会「日本地球惑星科学連合大会・高校生の部」で優秀賞を受賞。
彼らの実験装置は意外な人物の目に留まり、「はやぶさ2」の基礎実験に科学部として参加する想定外の事態も――。
この実話に着想を得て生まれた感動小説「宙わたる教室」を、窪田正孝さんを主演に迎えてドラマ化!

NHKの『宇宙わたる教室』のサイトより

 特にイッセー尾形さんと朝香真由美さんが演じる、集団就職で都会に出てきて、高校に通うことも出来ずに、ただただがむしゃらに働いてきた高齢の夫婦がめちゃくちゃイイ!

 そして、文章を目で見て理解する事が出来ないという、人に理解されない障害のため、進学も就職も諦めてグレかけていた金髪の青年に、自身も科学者として大学教授達の在り方に失望して教師になった窪田正孝さんが演じる化学部顧問が、
「ここは諦めていた事を取り戻す場所ですよ」
と淡々と言う場面に心打たれた。
 諦めていた事を取り戻すのは難しい。
 でも、「ここはそういう場所ですよ〜」と軽く言われると、なんだか肩の力が抜けて、取り戻せるかも…と思えてくる。


 そして、最後は韓国ドラマ。
 今年もたくさん観た。
 今年配信された『涙の女王』とか『ドクタースランプ』とか、本当に素晴らしい作品だった。

 でも、私の心に一番残ったのは、2016年の作品『記憶〜愛する人へ〜』

 韓国の名優イ・ソンミンがとにかく素晴らしい!
 轢き逃げで幼い息子を亡くした事件を追いつつ、アルツハイマーを患った事で、自分の仕事のやり方を改めていく弁護士を演じている。
 敏腕弁護士として、父として、夫として、そして年老いた母の息子として、いろんな表情を魅せてくれる。
 普通に生活しながらも、時々記憶を失ってしまう恐怖。
 その表情がリアルで、愛おしくて、胸が苦しくなる。


 こうして、心に残った作品を思い出してみると、私の心に残ったのは、喪失を乗り越えていく人々の物語だなぁと気付く。

 大切な人も、大切な記憶も、失うのは本当に恐ろしい。
 それでも、それまでに培った奇跡のような愛情に気付けたら、人はまた前を向ける。

 2024年に私の心に残ったエンタメ作品たちは、そんな事を伝えてくれた。


 今年の最後の最後に、読んで下さった皆様に、心より感謝申し上げます。
 良いお年をお迎えください。

葉山 森戸神社⛩️

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