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キャリコン課題図書「ひきこもりの30年を振り返る」

ひきこもり当事者、臨床家、研究者がひきこもりについて当事者や行政や医療、研究者、マスコミがどのように定義し、考え、行動してきたのか、、、過去を振り返り未来に繋げる提言の本。元々僕は斎藤環さんの著作のファンなので、本書も手に取ってみた。

まずひきこもりの定義がこんなにも揺れ動いてきたのかと衝撃を受けた。80年代までは不登校とほぼ同義で子供たちの問題であった。その後年齢が上がると同時に大人の問題にもなる。またマスコミにより犯罪に結び付けられることもあった。
現在では「家族以外の対人関係が長期に渡って失われている状態」という定義が最大公約数的なものである。

ひきこもり自体が病気であり予防とか治療しなければならないという考えは根強く、当事者代表の林恭子さんも、社会学者の石川良子さん、精神医学の斎藤環さんみんなそれに批判的である。ひきこもりはある実存の状態であり、病気ではないという考えだ。

びっくりしたのが、僕は全然知らなかったが2022年(最近じゃないか!)九州大学が「ひきこもり者と健常者を識別する血液バイオマーカーを発見」という発表をしている。そのバイオマーカーをチェックすれば予防できるというわけだ。斎藤環さんも本書でひたすら困惑していた。そもそも斎藤環さんによれば、ひきこもりは病名でも診断名でも臨床単位でもないのである。

このように、ある状態について医療の専門家の中からも極端な研究が出てしまうことに驚いた。とにかく何かの状態を病気→治療のような思考には慎重でありたい。

ところで、本書はまた別の角度でとても勉強になった箇所がある。それは斎藤さんのいう「斜めからの支援」という考え方だ。

「ひきこもり支援」という看板を出すと、そんなもの受けたくないと一定層の人は引いてしまう。これは貧困対策でも同様で、貧困者向けフードサービスという形では受けたくない層が出てきてしまう。本当は困っているのだが、そのようなサービスを受ける自分を認めたくないとか、そこに入りにくいなど心理的ハードルを感じるのでしょう。

そこで、貧困対策では無料で電動自転車の貸し出しなどを前面に出すと人は集まりやすかったり、肩こりや血圧のケアなどをメインにして対象にリーチすると良い成果があるという。これを斎藤さんは「斜めからの支援」と呼んでいます。

これは実感としてめちゃめちゃ分かる

以前からなんとなくですが、おっさんと女性を比べるた時におっさん層はあまり他者に相談をしない傾向があるのではないかと思っている。正確に統計を取ったわけではないし、ジェンダーイシュー的に性差をクローズアップするのもどうよという議論はあるかもしれないが、おおむねの傾向としておっさんはあまり他者に相談しない。(キャリコンとか占いとか含めて広範に見て)

シニア層はもっと相談したらいいと思うが、いろんな会社の話を聞くとキャリア相談サービスはあるがなかなか利用が伸びないようだ。これは仮説だけど、おっさんの意識としては

・なんか相談すると負け犬感があってちょっと抵抗ある
・自分でなんとかできる(と思っている)
・困難に直面していない(と思いたい)

みたいな感じがあるのではないか。斎藤さんのいう、斜めからの支援、、、、ってキャリア支援についても有効なのではないかと考える。なんというかシニア層おっさんがす〜っと入り込めて、す〜っと進んでいくようなプログラムがありえるかどうか考えたい









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