見出し画像

”サラリーマン”の再起動は可能か(3)

日本的システム全体を変えることは容易ではない。そうなると打つ手なしなのか??
いやいや、それでもやれることはある。システムが変わるための条件は下記2つだと前回述べた。

  • 日本の人事システム総体が変わること

  • 一部の会社ではなく、市場全体が同時に変わること

普通に考えて歴史的慣習的に成立してきたシステムを一気に変更するということが成立するのは困難だろう。だとすると現実的なのは

  • 総体を変えずに一部からできること

  • 市場全体ではなく1社からできること

を考えることが有用だと思う。それにより日本の歴史的慣習的に成立してきたシステムをラディカルにぶっ壊さなくても部分から改善できる。まあ新自由主義的傾向のあるハードランディング論者にとっては日本的遺制を保持すること自体我慢ならんのかもしれないが、社会システムというのはオーストリアの科学哲学者オットー・ノイラート曰く

私たちの知識の総体は、常にいわば航海中の船のようなものであって、下船して修復するわけにはいかず、航海を続けながら、部分的な修復を続けて行かなくてはならない

このノイラートの船として知られる比喩通り、日本的システムに我々は乗っかって航海しているのであり全部ぶっ壊してしまったら新しい船を建造する前に溺れてしまう。航海を続けながら修復してゆくしかない。

そこで、考えるべきはシニア層を企業の内部で活性化できないならば在籍したままで企業の外部、3rdプレースで輝かせることである。

3rdプレースとは、自宅や学校、職場でもない、居心地の良いカフェ等の「第3の場所」のこと。アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが提唱したものである。ここでは会社以外の副業や起業も含めて考えたい。

3rdプレースを持つことが大事というのは割とよく知られているし、誰しもが納得するであろう。しかしながらこれまでは企業課題としては考えられてこなかった。それもそのはず、会社ではない場所なのだから企業にとっては課題ではなく、あくまでも従業員個人が作る場所のことだから会社は関知しないのが普通だろう。ただここでは3rdプレースを企業課題として考えたい。

すでに動きはある、社外副業をOKする会社が増えている。銀行業界では禁止のところが多かったが、最近は解禁する動きもあるようだ。これなんかは企業課題として3rdプレースを考えている事例だろう。
また、雇用調整助成金制度についても社外活動への支援という流れとして考えられる。日本は景気が悪くなったからといって従業員を簡単に解雇できない。働く意思と能力のある従業員の休業、スキルアップのための教育訓練、または他の事業所への出向に関しては、雇用調整助成金の支給を申請することで、雇用維持を行うための経済的支援を国から受けることができる。

ただ、雇用調整助成金制度はコロナによる業績悪化に対する対応という側面が強く、3rdプレースで輝くようにする施策としては不十分だと思う。

もうちょっと3rdプレース的、ベンチャー志向なスキームは、経済産業省の出向起業スキームだ

自社内では新規事業に挑戦できる環境・機会が得られにくい課題が存在する大企業等に所属する人材が、自社の通常業務から切り離して自立性及び柔軟性を維持しながら新規事業創造に挑戦する取り組み

詳細はリンク先を見ていただきたいが、大企業の人材が独立、起業した際にある条件のもとでその企業から新規に作ったベンチャーに出向したという扱いにするスキームだ。
これにより、新規事業を創造したい個人は当面の給与を出向費として受け取ることができ経済的に安定する。企業にとっては自社内では取り組めない先進的な事例などを推進できる。

これはなかなか画期的な仕組みだが、比較的若くアグレッシブでかつ先端的な事業立ち上げが目的であり、何をやったらいいかわからないシニア層には残念ながらマッチしないと思われる。

ただ、以上のように会社が社外の副業にOKを出したり、お金を出すスキームが少しずつではあるが出始めている。これは今後の働き方が会社か外部かという単純な二分法ではなく、会社と外部の間にグラデーションが存在するという流れであると言える。その意味では3rdまでいかずとも、2.1プレースだったり、2.5プレース、2.8プレースのようなものがあってもいい。

このように会社が従業員の3rdプレースを支援することは日本的な雇用慣行にもフィットすると思う。特にシニア層に対しては、役職定年、定年延長による茹でガエルかさもなくば解雇みたいなハードランディングではなく2ndから3rdの間のグラデーションを用意すること。社内では活性化できない課題を企業外部に求めることは有効ではないだろうか。

上述した条件

  • 総体を変えずに一部からできること

  • 市場全体ではなく1社からできること

にも合致する。最大の問題は企業がそれをやる気になるかだ。これまで社外副業にも積極的でない企業が多い中で2ndから3rdの間のグラデーションを支援するという発想になるのかどうか、、、、時代の機運は高まっており継続的にウオッチしたい。

続く












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?