見出し画像

薄曇りの日の支援職(21):調査する人生

以前から読んでいる社会学者岸政彦さんの『調査する人生』読了。

キャリコンの仕事をする前から社会学には興味があり、稲葉振一郎、北田暁大各氏の本も読んできたし、共著も出している岸さんも読んでました。
ただ自分の仕事とは全く関係がなかったので趣味の一環という感じでしたね。

それでキャリコンの仕事をしてからは読み方が変わったというか自分の仕事に関連する部分がグッと迫り出してきた感じです。特に岸さんの質的調査という方法が自分の人生にグッと迫ってきた。社会学というのはマクロ統計とか、アンケート調査などで数値的に分析する分野があり、それはそれでメインストリームです。一方で数値では見えない部分、統計ではこぼれ落ちる部分について深く分析する質的調査という方法が存在します。別な言い方ではエスノグラフィーともいいます。

例えば、質的調査についての本書『調査する人生』において、打越さんという社会学者は沖縄の研究をするために沖縄の暴走族に入隊するのです。もちろん社会学者が来ても最初は相手にされないし警戒される。しかし肉体労働を一緒にやったりなんだかんだで10年くらい彼らと生活をする。そのレポートは著作にもなりました。(残念ですが打越さんは昨年末に病気で他界されました、RIP)

相手をインタビューする、相手の気持ちを聞く、受容する。この辺の方法論はキャリコンにも通じるものがありまして学ぶところが多い。一方でキャリコンとベクトルが真逆でもあるのです。
キャリコンの場合はクライエントからお金をもらい、傾聴や助言を行う。質的調査の場合は対象者に取材費を払ってインタビューさせてもらう。
キャリコンの場合は1on1のカウンセリングは原則的に外部には公表しない。
質的調査は研究・論文の発行が目的であり開示を前提にしている(個人特定はしないが)
という具合に、目的、ベクトルが真逆になります

ただ、キャリコンとして環境への介入をする場合を考えてみましょう。ある企業、あるいは産業界が困難を抱えていて経営の方針や構造を変える必要がある場合。1on1のカウンセリングでは限界があり、環境自体を分析する必要があります。そのような時に社会学の質的調査が大いに参考になる。

個人的には、昔服オタクだったこともあり繊維産業について興味があります。撚糸、染め、デザイン、縫製、ボタンなど分業構造であり全国に1万以上の多数の小規模事業者が存在している。その品質の高さは世界にも知られ、欧州の大手メゾンから注文が来ることもあります。しかしながら後継者不足や、ファストファッションによる価格破壊によって産業として非常に危機を迎えている。そこを微力ながらなんとかできないかと考えていることろです。

このようなケースにおいて社会学の質的調査の方法が活かせると思っています。質的調査はとても小さな個人の声を拾い上げます。それはとても小さいため普遍的な法則になりえるのか?常に社会学内部では葛藤を抱えている。これについて岸さんは本書で「質的調査は一回製の化学であると言っています。この言葉は完全にささりました、、、そうか、、個別の事象と普遍化で悩むのではなく再現ができない一回生の科学と見ればいいのか

キャリコンx質的調査は、今やられていないと思います。唯一タナケン先生がエスノグラフィーの本を出していた記憶がありますが、、、僕としては環境への介入において学ぶことが多い方法だと思います


**********************************

ご連絡先
takeshima@rebooot.jp

ココナラ

REBOOOTホームページ


いいなと思ったら応援しよう!