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【読書記録】両手にトカレフ

14歳、イギリスで育ったミアの世界は閉ざされている。
生活保護のお金をドラッグに使ってしまう母親。ミアが面倒を見ないといけない小さな弟。
ケースワーカーに「保護」されてしまえば唯一の家族の弟とすら離されてしまう。
だからミアは静かに、じっと息を殺し「いいこ」で暮らしている。

そんな閉塞感溢れる暮らしの中、ミアは図書館で一冊の本に出会う。

それは100年前の日本に生きた少女の自伝だった。


ミアと同じように、周囲に抑圧され、何ひとつ自分の自由にならない牢獄のような世界で生きる少女。
国も時代も違う少女の話に共感しながらも、ミアの世界は変わらない。
世界は相変わらず閉ざされていて、母親もミアたちの世話をしたりしない。

子どもであるゆえにどこにもいけない牢獄の中で、
ミアはもう何も期待したりしていない。

母親は何度も更生プログラムを受けたが、その度に元通りになってしまったし、ミアたちの面倒を親身に見てくれていた友人の母親、ゾーイにお願いした里親になってほしい、と言う願いも届かなかったからだ

しかたがない、というの母の口癖だった。
そう考えることにすれば
どんなことでも平気になるかのように

『両手にトカレフ』

これはフミコの母のことではあるが、おそらくミアも同じように諦めの中で生きている。

それでもミアは本を開く。
ミアにとって本は、違う世界と繋がっているからだ

「たぶん、『これだ』って感じる瞬間だけ、私たちは、その違う世界に行ってるんじゃないかな」

『両手にトカレフ』P139

この人は子どもの頃に生きた世界から飛び出すことができただろうか。
どこか違う世界に行くことができたのだろうか。
ミアは猛烈にそこのことが知りたくて、この本を読むことにした

『両手にトカレフ』P22

子どもであるがゆえにどこにもいけず、何もできず、周囲の大人に期待もしてないミアとフミコは、どこへいくのだろう。

御伽噺のようなことは起きない。
それでも、最後まで読むと、2人の未来に光を見ることができる。

自分の世界が閉ざされていて、息苦しくて
でも逃げることも、抜け出すこともできず、
選択権すらなくて、どうしようもなくて、どうしようもなくて

それでも、世界はまだ続いていて
ここにない世界はどこかにあって、
たった一言が、気づきが、その世界に連れて行ってくれるかもしれない。

そう思わせてくれる物語

フミコは、どれだけ周囲に抑圧されても、牢獄のように閉ざされても、違う世界はあると信じていた稀有な人だった。
長いこと、彼女は僕にとってヒロインというか、いや、ヒーローだった

『両手にトカレフ』P156

世界は広い

『両手にトカレフ』

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