ピカソ と ジョブズ と 盆栽
このイラスト、何に見えますか?
そうですね、牛です。
ピカソの「雄牛」という作品です。
この絵、一見適当にパパっと描かれているように見えるかもしれませんが、
実は緻密に計算されたものなんです。
実際は、このような変遷をたどって出来上がっています。
ー本当に必要な要素以外はすべてそぎ落とし、本質だけで牛を表現するー
まさに引き算の美学ですよね。
<引き算の美学から生まれるイノベーション>
この「雄牛」をビジネスに活用したイノベーターがいます。
誰だかわかりますか?
そう、スティーブ・ジョブズです。
彼が創業したApple社では、ジョブズの考え方や信念を社員に浸透させるため、2008年から「Apple Universuty」という社内教育プログラムが設けられています。
その講義の中で、ジョブズが最も大切にした信念の一つ「余計なものは徹底的にそぎ落とす」を伝えるために、上記のピカソの「雄牛」が教材として使われているそうです。
超ミニマリストとして有名なジョブズならではの、「本質以外は捨てる」という引き算の美学の表れと言えますね。
<日本文化こそ、引き算の美学>
この引き算の美学は、日本文化に色濃く根付く美意識です。
例えば、絵画。
西洋の絵画は、画面の隅々まで埋められているのに対して、
日本の絵画は、余白があることに気づきませんか?
本当に描きたい部分(=本質)以外は余白とすることで、
本当に描きたい部分(=本質)をより一層美しく見せるという、引き算の美学です。
また、お庭はどうでしょうか。
西洋の庭園は豪華絢爛で、水・花・芝生・樹がそろった「完成された美」です。
一方で日本の庭園である枯山水は、とても質素なつくりですよね。
そして枯山水の何がすごいって、枯山水で一番表現したいものは「水」なんです。
水を表現したいがために敢えて水を引き算し、観る人それぞれが心の中で水を流す。
そして、それぞれの心の中で庭が完成する。
そんな「未完成の美」を表現しているんです。
とても高度で、想像力を掻き立てられる美学ですね。
<盆栽=引き算の美学>
盆栽も、盆栽こそ、「引き算の美学」のアートです。
本当に必要な枝や葉だけ残し、それ以外は躊躇なく切り落とす。
そうすることで、樹の美しさが際立ちます。
そして、残された部分(本当に必要な枝や葉)だけに栄養が行き渡ることで、
樹全体がより長く生きることができる。
本当に必要な部分(=本質)だけを残し、
その本質を最大化する、というわけです。
<ビジネスでも使える、引き算の美学>
この引き算の美学は、ビジネスの面でも応用できます。
例えば、マーケティングで有名なジャムの法則*にあるように、
一般的に人間は、選択肢が多いほど購買意欲が下がってしまうという研究結果があります。
*スーパーで6種類のジャムと24種類のジャムの試食を用意し、人々がどれだけ試食するか、また、その結果どれだけの人々がジャムを購入するかを検証した実験。結果、多く試食されたのは24種類のジャムの方だったが、購入されたのは6種類のジャムの方が約6倍も多かった。
高級食パンがヒットしたのは、まさに「引き算」をうまく使った例です。
<「新しい世界」に入りつつある今だからこそ、引き算を意識しよう>
このように「引き算の美学」の文化を育んできた日本ですが、
現代の日本社会は、どうでしょう。
「足し算」を極めてきたのではないでしょうか。
情報があふれ、モノがあふれ、過剰なサービスがあふれ・・・
その結果、私たちの自分の頭で考える力や想像力が
めちゃくちゃ低下してしまったんじゃないかなって思います。
「新しい世界」に踏み込みつつある今の時代だからこそ、
あなたの日常の中で「引き算」を意識してみませんか?
・今の生活に何か引けるものはないか
・そもそもどうしてコレが必要なんだっけ
そんな思考を持つことで、
あなたにとって本当は不要なものは思い切ってそぎ落とし、
あなたにとって良きもの=本質 を最大限に愛でてあげましょう。
本当の意味での豊かな暮らしが見えてくるのではないでしょうか。
今日はこの辺で。
ReBonsai
盆栽コーディネーターわかこ
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