第8回 仕事が決まらない人は有効求人倍率を要確認 -大都市に仕事があるは幻想-
新型コロナウイルスが世界を席巻して早1年半近く。とても向こう2、3か月で収まる気配は無い。
転職市場もコロナによる経済停滞の影響を受け、求人数が激減。若年者であれば何かしら正社員の職にありつけていた売り手市場は遠い昔の話になりつつある。
毎月1回、ニュースで少し騒がれる「有効求人倍率」を皆さんはしっかり見たことがあるだろうか?
この数字、侮るなかれ。仕事が決まらない理由が全て凝縮されている。
有効求人倍率とは? ~奪い愛、冬~
求職者1人あたり何件の求人があるかを示すものである。
もう少し細かく言うと、ハロワの求人数をハロワに登録している求職者の数で割った数字である。なので、ハロワを使わずに求人を出している企業や、ハロワに登録せずに転職活動をしている求職者は含まれないため、厳密な数字では無いが、日本の転職市場の状況を良く表しているものに違いない。
有効求人倍率=有効求人数÷有効求職者数
例)募集中の求人が6件、仕事を探している求職者が10人
6件÷10人=0.6倍
大体毎月月末頃に、前月の有効求人倍率が発表される。
直近の発表は2021年4月30日(2021年3月度分の開示)
日経電子版より
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA28B400Y1A420C2000000/
今回は2020年度末の集計だったこともあり、色々比較された発表内容になっている。
オイルショック以来の下げ幅だなんだ書いてあるが、注目すべきは「20年度は企業からの有効求人が前年度に比べて22.3%減り、働く意欲のある有効求職者が9.8%増えた。」の記載。
思いっきり求人が減って、求職者が増えたのである。
「21年3月単月の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍と前月を0.01ポイント上回った。」と、ちょっと改善して来たんじゃない?と思わせる記載もあるが、この「1.10倍」は非正規雇用も全て含めた数である。
正社員だけに絞るとどうなるか?
0.84倍 ※季節調整値
2021年3月度は、84件の正社員求人を正社員で働きたい100人で奪い合いだったということである。(コロナが全然無かった頃、2019年3月度は1.15倍。)
悩ましいのはこの84件の求人、全職種の求人になるので、介護職とか嫌われ職種の求人も入っている。
つまり、職種別で見るとまた全然数字が変わってくるのだ。
介護職と事務職の有効求人倍率
ここで大不人気介護職と大人気事務職の有効求人倍率を見てみよう。
純粋に正社員だけの数字が欲しかったが、探せなかったので、パートを除く常用雇用有効求人倍率で比較する。(実数)
※介護は大分類だとサービス業に括られるため、大分類の事務職からは一般事務を抜き出している。
「正社員の仕事」だが、職種によってこんなにも開きがある。
職種全体の正社員の有効求人倍率をぶっちぎって下回ってくる一般事務の仕事に就こうと思ったら…採用になること自体が奇跡レベルであるのが一瞬でお分かりいただけるだろう。ちなみに事務職は好景気不景気にかかわらず、万年こんな感じである。
そして、介護職の有効求人倍率がじわじわ低くなってきているところに不景気を痛感するのである。
都市部の有効求人倍率が案外悲惨
さて、ここまで書いてきた内容は「全国平均の有効求人倍率」である。
有効求人倍率は求人数と求職者数の割合から出される数値となるため、東京都のように求人数が鬼のようにあっても、求職者数も鬼のようにいるエリアは倍率が低くなる。
2021年3月度の都道府県別有効求人倍率(パート含む季節調整値)のトップ3(1人あたりの求人数が多い)は、
①福井県:1.62倍
②島根県:1.37倍
③岡山県:1.37倍
と、必ずしも大都市を有する都道府県では無いことがわかる。
東京都は1.17倍で21位。東京通勤圏内である埼玉県は0.92倍で43位、千葉県は0.83倍で45位、神奈川県に至っては、0.74倍の46位である。
福井県の有効求人倍率がダントツ高い理由は、電子・機械・化学という今をときめく製造業が盛んということ。工場は多くの人材を必要とするので、必然的に求人数が増える。
そして、福井県の人口は約78万人と、政令指定都市の中堅どころより少し多いくらいの人数しかいない。
ここで、全国住みたい街ランキング2021(生活ガイド.com調べ)、行政区別第2位の札幌市の有効求人倍率を見てみよう。
国内旅行で行きたい街に必ず入ってくる、恋の街札幌。
人口約200万人、北海道内の市区町村でも圧倒的な規模を誇り、政令指定都市の中でも全国第4位の大都市である。
美味しい食べ物…綺麗な街並み…真っ白な雪…ああ住んでみたい!
………でも住むためには仕事が無いとね!!
2021年3月度の札幌市の有効求人倍率(常用)
札幌市はハローワークが3か所ある。管轄ハローワーク毎の有効求人倍率が下記となる。
・札幌:0.91倍
・札幌東:0.75倍
・札幌北:0.98倍
残念ながらいずれも1.0倍を割ってしまっている。常雇の求人全体でこの数字なので、正社員だけ…となるとかなり低い倍率である。
2021年3月度の北海道の職業別有効求人倍率(常用)
札幌市のみの統計が出ていなかったため、北海道全体になるが、皆が希望するであろう、デスクワーク・営業職の数字を抜き出してみる。
・一般事務員:0.34倍
・会計、経理事務員:0.57倍
・営業・販売事務員:1.01倍
・情報処理、通信技術者:1.09倍
・営業員:1.53倍
・保険外交員、サービス外交員:1.34倍
事務職は全国平均と同様の数字を辿り、コロナ禍で儲けまくっている業界であるIT系職種が、最先端な福井県の2.33倍に対し、半分もないというところが致命的。営業職であれば…といった感じ。
このように一見、大都市で、人口も会社数も多くて、仕事もたくさんあるのでは?と思われる街であっても、希望の仕事に就くのは至難の業なのである。
各地の有効求人倍率を調べ尽くせ!
最低賃金の違いによる首都圏との給与格差はあれど、どこにいようが、働かなければ食べていけない=仕事が必要であることに変わりはない。また、コロナをきっかけに、リモートワークで成り立ってしまう仕事も多数あることがわかった。(バレた)
衣料・雑貨はネットで簡単に購入できる時代である。大都市に住んでいても、スーパーとユニクロ程度しか行かないという人は増えているだろう。
ポツンと一軒家のようなところは難しいかもしれないが、大方のエリアは住めば都である国、ニッポン。
先に書いた通り、福井県は穴場中の穴場と言えよう。
求人をざっくり見てみたが、給与は全国的に見ても決して低いことはない。
京都や名古屋へのアクセスは2時間程度。海に面しているので、新鮮な海産物は魅力的。ユニクロもある。
おそらく気づいていないだけで、他にも穴場都道府県ないし市区町村は確実にあるはず。
仕事が無いと嘆くのではなく、思い切って仕事がある土地へ移住するという選択肢を取るのも良いのではないだろうか?
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