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【SSW.04:STORY】喜怒哀楽を掻き毟る唄うたい・星乃馨

都内を中心に活躍しているギター弾き語りシンガーソングライター・星乃馨(ほしの・かおる)。バンドやユニット、オールディーズ・ソウルミュージックの店の専属ボーカルとしての活動などを経て現在に至る道のりと、今後の目標を訊いた。

文学と洋楽に囲まれて育った少女時代

茨城日立市出身の星乃馨は、母の影響もあって、読書が好きな少女だった。

「小学校4年生のころ、宮澤賢治の『雨ニモマケズ』を暗唱するのがマイブームでした。友達の前で披露しているうちに、クラス全体に暗唱を流行らせたことがあります」。

中学校では吹奏楽部に所属し、バスクラリネットを担当。他にも、友達の家でピアノを弾いたり、いとこから貰ったエレクトーンを弾いたり、様々な楽器に親しんで過ごした。

歌うことも人並みに好きで、流行していた90年代のポップスをよく聴いた。テレビから流れるTRFの曲に合わせ、姉と一緒に踊っていたという。

中学3年生のとき、クリス・ペプラーがパーソナリティを務めるラジオ番組『TOKIO HOT 100』を聴きながら勉強したり、ダイエットをしたりしているうちに、洋楽にハマった。「同級生にも洋楽好きな子がいて、色んな曲を薦めてくれました」と彼女は振り返る。

高校生になると「歌いたい」という思いは一層強まった。友人とバンドを結成しようとしたが、メンバー間のやる気に温度差を感じ、断念。仕方なく、一人で歌う練習を続けた。

練習場所は自宅の押し入れだった。

「住宅地に住んでいたので、あんまりうるさいと近所迷惑になるんですよ。バケツをかぶったり毛布をかぶったり、音を殺すために試行錯誤して、押し入れに行きつきました。中にプチプチを張りめぐらせて。最初は必要に迫られて引きこもってたんですけど、いつの間にか、押入れにいること自体が好きになってましたね」。星乃は楽しそうに笑う。

このころから、作詞作曲にも取り組み始めた。「ボイストレーニングも作曲理論も独学です。図書館で借りた本の内容をルーズリーフに写して、押し入れの中で勉強しました。楽しかったんでしょうね、きっとね」。

バンドやユニット活動などを経て、ギター弾き語りへ

高校卒業後は音楽をやりたいと考え、上京の足掛かりにするため短大へ進学。神奈川県へ引っ越すと、バンドメンバー募集ソーシャルメディア『with9』を利用し、念願のバンド活動をはじめた。

「初めて出たライブハウスは大久保HotShotでした」。

現在の芸名である『星乃馨』を名乗り始めたのは、バンドの解散後、アコースティックユニットを結成したころだ。

「学生のとき、先生の話を聞かずに教科書を読んでいて、井上馨の『馨』の文字に一目惚れしたんです。すぐに蛍光ペンでチェックしました。それからずっと、好きな漢字だったんです」。

彼女の『漢字』へのこだわりは、公式ホームページ(公式家頁)でも垣間見ることができる。

閑話休題。音楽活動を始めて数年経ったころ、縁あって、オールディーズ・ソウルミュージックを生演奏する店の専属ボーカルを務めた。

「赤坂のお店で週3,4歌っていました。ダイアナ・ロスやホイットニー・ヒューストン、シュープリームスなどの楽曲が多かったですね。コーラスも担当していました」。

お店から「これを歌ってください」とリストが送られてくるのは出演前日。夜勤のアルバイトをしていた星乃は、退勤後にネットカフェで曲を覚え、そのまま店へ向かっていた。

「過酷ではありましたが、自分が一番やりたかった音楽をできていたので、楽しかったです。夢を叶えることができました」。

しかし、活動を続ける中で、徐々に違和感を覚えていく。

「箱バンは上下関係が厳しいというか、ガツガツしていないとやっていけないんですよね。その雰囲気が、自分と合わないなって」。

『ボーカリスト』と『シンガーソングライター』もまた違う、と星乃は言う。シンガーソングライターは、作詞作曲から演奏まですべて一人で行うため、内向的な人間が多い。

「自分はシンガーソングライターのフィールドで活動するほうが合っているかもしれない」と思ったた彼女は、ギター弾き語りでソロ活動を始めた。

『古びない歌』をうたいたい

幼いころにいとこからアコースティックギターを譲り受けた星乃は、長年作曲の道具として使っていたものの、人前で弾くことはほとんどなかった。

「鍵盤も好きなんですけどね。ソロの弾き語りになる前、親しい人たちに『鍵盤とギターどっちがいいかな?』と聞いて回ったら『絶対にギターだ』と言われて。鍵盤弾きに対して綺麗なイメージを持っている人が多かったんでしょうね。私はもっと泥臭いので」。

2014年から本格的にギター弾き語りシンガーソングライターとして始動。かつては月10本、現在も5~8本ほど、ライブハウスやイベント等へ出演して歌っている。

「ライブを大事にしたいので、最近は、出る場所を厳選しています」。現在、ホームにしているライブハウスは浅草ゴールドサウンズだ。

ステージに立つ際は、チェリスト・まつこ氏にサポートを頼むことが多い。彼女とは9年ほどの付き合いがあり、星乃のCDやDVDの収録にも多数参加している。

また、大阪、兵庫、三重など関西を中心に遠征ライブを行っている。

「好きな場所、自分が楽しいと思える場所、お客さんが出てほしいと思ってくれる場所で歌いたいです」と語る星乃は、今後の希望として「九州で歌ってみたいですね」。

さらに「個人的には、鳥取砂丘や釧路湿原に興味があります。近郊でライブが組めたら、ぜひ訪れたい。何もないだだっ広いところが好きなんですよ」と笑っていた。

目指すアーティスト像を訊くと「古くならない曲が歌いたいですね」と語ってくれた。

「たとえば、私は中島みゆきさんの曲がめちゃめちゃ好きです。あんなに無駄のない詞を書く人は他にいません。『ここにこの言葉があるのはこういう理由か』と、全部納得できる。一方で、読んでたらそんな解釈はどうでもよくなるくらい、グッときちゃう。私もそういう曲を作れるようになりたい。流行り廃り関係なく人の心にずっと残るような、いつ聴いても古びない曲を歌えるようになれたらいいな、と思います」。

アーティスト活動以外にも、ボイストレーナーをしたり、バンドをしたり、精力的に活動している星乃。

5年後、10年後に叶えたい夢はあるのだろうか。

「文学に絡んだライブがしてみたいですね。それともう一つ、大きな会場で遊びたいです。昔、初めて横浜アリーナに行ったのが、LUNA SEAのライブだったんですが、照明や演出が凄くて、胸が熱くなりましたね」。

「横浜アリーナくらい大きな会場に自分の好きな仲間を呼んで、一緒に好きなことやって、照明や演出込みで感動を与えるようなライブがしたいです。とても難しいことだけど、やれるだけの力をつけたいですね」。

ぜひ、そのライブを観に行きたいと思った。

Text:Momiji

INFORMATION

2020.4.24 (Fri) open 18:30 / start 19:00
Gold Sounds presents 『浅草 大人の金曜日』

[会場] 浅草Gold Sounds(台東区駒形1-3-8 B1)
[料金] 前売¥2,000 / 当日¥2,500 (各1drink別)
[出演] MIKKO&SHU/アンダーノースカウンシル/星乃馨/長谷川大輔
(THE☆☆☆長谷川大輔)/和也(amali)/陸王(Against 30 Miles)

2020.8.8 (Sat) 誕生日単独公演『曼珠沙華~風に笑う花の色よ~』
[会場] 浅草Gold Sounds(台東区駒形1-3-8 B1)

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