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「メタバースと"遊び研究"の交差点」VRChat理系集会で講演してみたら意外と学びが多かった話

REALITY株式会社 GREE VR Studio Laboratory(以下ラボ)のディレクター、白井です。REALITY.appやメタバースの近未来を開拓する研究開発そのプロトタイプ発信発明などの知財創出、社会実装、人材発掘プロジェクトを推進しつつ、B2B向けのソリューション"REALITY XR cloud"に使われるような技術の調査やメタバースを本気で事業にしたい企業向けのコンサルティングなどもにも参加させていただいております。

上記のような企業向けコンサルティングや学術講演は多く依頼されるのですが、先日「VRC理系集会」というVRChat内のコミュニティの特別講演におよばれして、そこでの学びが多かったので紹介いたします。

「VRC理系集会」の設計がおもしろかった

ラボは新しいVR機器やサービスの検証に加え、他社のメタバースサービスの動向調査や実験も日常的に行っています。単なるユーザや開発者としての調査に加えて、実際にイベントや交流の空間として利用できるか?といった実践的な実験で、VRChatやバーチャルキャストをつかったライブ番組内ゲームの開発Mozilla HubsWebXR、Unityによる学生さんによる開発プロジェクトなど数多くの事例がありますので過去のイベントアーカイブなどをご参照いただけると幸いです。

さて、今回およばれした「理系集会」さんですが、(事前に潜り込んで)覗いてみると"理系集会"というだけあって、摩擦の物性についての研究の歴史を紹介する「トライボロジー入門」や、イベントの開催状況についての統計や、アバターの性別分析、ワールドのアクセス解析「データでみるVRC」など、非常にマニアックな"理系"各分野の方々が勉強会をしたり、集まって雑談をしたりしています。

プログラム進行も興味深く、専門的な「学会」の「懇親会」にあたるようなパートをその日のイベントの開始時間帯に設定しています。これは賢い。物理的なカンファレンスでも「基調講演(keynote)」が初日の午前などに設定されていることが多いのですが、これは「みんなにキーになる方向性や最先端の話題をキーになるプレイヤーに喋ってもらおう」「参加者の理解やディスカッションのベースになるような話をしてもらおう」そして「その話を餌にたくさんの人に集まってもらおう」という設計があると思います。しかしオンラインイベントですと、物理的な参集にはコストがありませんし、同時に様々な興味深いイベントが開催されているため「直接アバターを着て、行く価値があるかどうか?」「YouTube等で観ているだけでよさそう」そしてその「YouTubeアーカイブは残るのかどうか?」といった判断で参加者の動向が変わってきます。もちろんREALITYにはVTuberやライブ番組のプロダクションというお仕事もありますので、そのあたりの生きたデータや知見、方法論はそこそこにあるのですが、メタバース分野ではVRChatの最近の技術やノウハウ、ユーザ文化と触れておくことは大事と思いました。
※もちろんVRC理系集会のオーガナイザーさんやボランティアスタッフさん、参加者の皆さんであるVRChatのユーザさんたちのスキルがとっても高いのでその皆さんとの交流が興味深かったのが決め手ではあります。

講演内容の設計

さて、最終的に告知された講演内容はこんな感じです。

オーガナイザーさんといろいろ相談した結果、「メタバースと遊び研究の交差点」というタイトルで、古典の「遊び研究」から令和のメタバースにつながるまでの研究俯瞰を喋ることになりました。

ただし「たった5枚のスライドで」。
(これはたいへんだ)

自己紹介です。マンガ2ページで収まらない。書籍になってるので買って読んでみてくださいね。
遊び研究の古典、特によく引用されるロジェ・カイヨワ「遊ぶ人間」から現代語訳。
カイヨワの定義からコンピュータゲームの登場、平成での変革、そして「令和のメタバース」でゲーム、VR、SNS、Cryptなどが合流して、人々と遊びの関係にどんな変革が起きたかを可視化していきます。
「動的ペルソナ」と「複合ペルソナ」このあたりも令和のメタバースが世の中に浸透していく過程で、よく考えていきたい視点ですね。
GREE VR Studio Laboratoryの研究シリーズの一つである[VibeShare]を紹介しつつ

わあ…終わらない💦
ご興味のある方は、詳細はこちらの動画にてご視聴いただけると幸いです。

メタバース自体もエンタテイメントに比重を置いた分野もありますが、エンタテイメント技術の研究開発は歴史も深く"遊びじゃなく真剣"に研究する分野なんだな~というあたりを雰囲気でも感じていただければ幸いです。

やってみてわかったこと(一部紹介)

おかげさまで開始直後3~4分から大入り満員だったそうです。VRChatのインスタンス(=ワールドの実体)の同時接続の上限である70名に張り付いていることが後から頂いたデータでわかりました。

そして、質疑応答も非常にディープなディスカッションだったので、気が付けば4時間以上も滞在していました(最後はVRChatのアプリがクラッシュして落ちました)。

大変熱量の高い空間であることがわかりました。わかりました、が、実際の講演者である私はそれを「たくさん人がいるー!」という感じでしか体感できませんでした。

開始前の自撮り。まだ余裕があった。
講演中の講演者の視界(ネームタグ配慮のためぼかしています)

本当に必死で講演と質疑応答をしているのもあって気が付かなかったのですが、実はインスタンスの外で入室しようと頑張っている方々を事後のTwitter「#理系集会」で拝見して(ちょっとうれしくも)残念で悲しい気持ちになりました。その後、サブインスタンスを立ち上げる運用になったそうです

質疑応答も熱量が高くよかったのですが、実際のイベント設計として行う場合はいろいろ難しいところがあると思いました。例えばClusterと違って全員が同等に会話できるので、導線制御やコミュニケーション制御が難しい感じがします。対話と講演では少し違いますが、大量の聴衆に取り囲まれてしまう(自然に人垣ができるとはいえ)となると、超有名人は呼びづらいですね…。またイベント内では会場内の立体音響をキャンセルして全体に声を通すマイクが使用されているのですが、これを持っている人が容易にイベントをハイジャックできてしまう可能性があります。同時接続のスケールの問題を含めて、インスタンスをクローンして非対称にすれば解決するかな…でもそれだと勿体ないから限定的なコミュニケーション(たとえばVibeShareのemoteやvote機能)はあってもいいかな…などといろいろ考えてしまいました。
(このへんはいずれ別の機会で記事にする機会もあるとおもいます!)

おまけ

本当は6枚目が入れられるならこんなスライドを入れようかなと思いました

メタバースの"サービス&UX開発志向"のエンタメ技術開発

VRの研究の現在は(かつてのような)ハードウェアやソフトウェア、インタラクションの研究から、さらに人と人の関係「コミュニケーション」や、その先のサービスや経済、市場や文化といった「エンゲージメント」やその意味、価値、設計にまで及んでいます。

より多くの人々が楽しく「なりたい自分で、生きていく」(We can be whoever we want)ためには、何を、どういう状態にしたらいいんだろう?

「一人ではできない遊び」とか、公園の遊びとか、テーマパークの未来とか…。

もちろん「すべて」を実装するわけにいはいかないでしょうし、「すべてが理想的な状態」になるはずもないと思います。
REALITY株式会社はしっかりとした事業会社なので、なかなかこういう抽象的で俯瞰的なお話をさせていただく機会も少ないですし(そのぶん普段の仕事はメッチャがんばってます!)、ラボの活動としても中々あけすけに皆さんにお伝えすることも難しいものが多いことも事実です。
ですが、今回の講演をきっかけに、いろいろ整理する機会ができたのは良かったかなと思います。今後もメタバース世界の雑学博士として生きて生きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
そして、サービスとして一歩一歩実装を続けていくREALITY株式会社プラットフォーム事業部のみなさんと、ラボやXR cloudのソリューションを開発していく方々、グリーグループの広報さんや知財関係のみなさん、またコンサルティングでお世話になっている協力企業の皆さんにこの場をお借りして御礼申し上げます。こんな新しいスタイルの講演でもちゃんと会社のお仕事としてクレジットさせていただけるREALITY株式会社とグリーグループ、そしてその事業成長に感謝です。
学びの機会をいただいた理系集会さんも、ありがとうございます。

さいごに様式美。

REALITY株式会社「VALUE」より

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こんなメタバースの未来を考える雑談、毎日できます!