ARTチーム第4回:アバターアイテム制作秘話 〜人魚姫のドレス編〜
こんにちは!アバター配信アプリREALITYのアートグループで2Dデザイナーをしております焼肉定食です。
私の主な業務はバナーや画像素材の制作なのですが、前職で女性向けのアバターサービスに長く携わっていたことから、REALITYのガチャアバターの企画に初期から関わっております。なので、この機会に「アバターアイテムの制作秘話」をお届け出来ればと思います!
初回は「蒼い海の伝説ガチャ」より、「人魚姫のドレス」です!
ガチャ予告ツイートの時点で多くの反応やコメントをいただき、反響の大きさに社内もざわついておりました。
今回は、こちらのアイテムがどのように出来上がっていくか見ていきます。
1.企画コンセプト
まず、「蒼い海の伝説ガチャ」のコンセプトについては、「透明感のある夏服」と、天使と悪魔ガチャでご好評いただいた「ファンタジー」の要素を掛け合わせるところからスタートしました。
「天使と悪魔」のような「対立する存在」って無条件でかっこいい(ですよね?)上に、「私は天使派」「私は悪魔派」など、ユーザーの皆さまの主張や話のネタとしても広げやすいため、今回もそれをテーマにコンセプトを組みました。以下はコンセプトシートの一部です。
ガチャは全体のコンセプトを決めてからスタートします
企画コンセプトを基に、制作進行チームがアイテムごとの制作資料を作成していきます。「人魚姫のドレス」は対立する存在を描くべく、制作上可能な限り「人魚」と「海の魔女」の構図になるようにデザインしてほしいとお願いしました。
制作資料の一部
ひとくちに「人魚の服」と言ってもそれどんな服?というのがわかるように、細かく指示を記載していきます。「声を失って陸に上がってきた人魚」には脚があるので、「脚部分が魚の半魚人ではない」というイメージをお伝えしています(表現が詩的で遠回しですが、雰囲気重視で・・・笑)
2.2Dデザイン制作
この発注資料を元に、2Dアーティストがデザインと三面図、カラーバリエーション(カラバリ)を制作していきます。こちらがデザインの初稿ラフ案です!
ラフデザインは毎回2〜4案程度あります
複数のラフデザインの中から良い要素を掛け合わせたり、3D的に無理がないかをアートディレクターや3Dアーティストと相談しながら進めていきます。
この場合は「ラフ1」のデザインをベースに調整し、例えば胸の間にある星の飾りを外したりしています。バストサイズを調整した際に胸の中に埋もれやすいため、胸元の装飾には毎回注意を払っています。さりげない点ですが、どのバストサイズでも自然に見えるよう揺れ方の工夫や貫通を防ぐなどの難しい処理をしている事が多いため、ぜひネクタイやリボンなど胸元のポイントに注目してみてください・・・!
その他、上半身と下半身でシルエットのメリハリをつける為、マーメイドラインは保ちつつスカートのボリュームを増やしています。また、3Dの形状として無理がないか、同時に簡易モデルを作成しながら検証することもあります。
こうして検証や修正を経て完成したデザインがこちらです!
三面図完成!
デザインが完成したら、カラーバリエーションを作成していきます。毎回多くのパターンを用意して、その中から選んだり、別色を提案していきます。
一つのアイテムでもこれだけたくさんのカラバリを作成しています!(レアリティの高いセット服は特に多くのバリエーションを用意します)どれも良すぎて選べない・・・となりつつ、コンセプトを再確認したりバランスを見ながら決められた数を選定します。
実際にリリースが決まったカラーがこちら
白や青ベースの正統派人魚姫カラーに対し、海の魔女をイメージさせるダークカラーも含まれ、企画コンセプトにも見事に合致しています。デザインは同じなのに全く印象の異なるドレスになりました。
ちなみにこの時は上の画像の【2】【D】【う】のカラーもスタッフ内で人気があり、最終候補まで残っていました。どれも捨てがたいですね・・・!(私は【4】も好きです)
3.3D制作
2Dデザインが完了したら、3D制作に着手します。
デザイン画を元に、揺れ骨の本数や入れ方も細かく指示していきます。その際、デザイン画で見えない箇所も注釈を入れています。
制作前の懸念として、3Dアーティストから首から腕に伸びるチェーンの破綻(=Tスタンス・Aスタンス時どちらも形が崩れないようにする)について指摘があったため、そちらも事前検証を行い、「腕を下ろした際になるべくデザイン画と同じ形状になる」ことを優先しました。細かい装飾部分にまで気を配りながら制作を進めていきます。
3D制作時に気をつけていることに関しては以下にも詳しく記載されていますが、今回は「ファンタジー」「浮遊感」を意識して布の柔らかさや質感を重視しながら制作を進めました。
4.Unityでの組み込み
3Dモデルが完成したらUnityで組み込み、装着位置や揺れものの設定をしていきます。
こちらも注意点としてはARTチーム第1回の記事に詳しく書かれていますが、今回はマーメイドシルエットのロングドレスのため、膝を曲げてしゃがんだ時の破綻がないか、浮遊感や布の柔らかさが出せているか注力しました。以下のように、細かい箇所まで何度も調整を重ねます。
組み込み調整時のやりとり
長きにわたって制作を進めたドレスもゴールが目前なので、「けしからん」「圧倒的 ”” 美 ””」「よき・・・」など、制作に携わったアーティストたちの感嘆のコメントが飛び交いながら、最終調整をして完成となります!
完成!!!
5.アーティストコメント
ここで、制作担当者からのコメントを紹介します!
▼2Dアーティストからのコメント
発注時「絶対いいもの作るぞ」→完成「まごうことなき『最高』じゃん‥‥」
というマインドで常に制作してたので、リリースやユーザーの皆さまからの反応が本当に楽しみでした。ADおよび3Dチームの方々本当にありがとうございました…
出来上がったときの達成感は半端なかったですし、結果的に予想以上に多くの方に喜んでもらえて大変嬉しかったです!
●制作していて楽しかったこと●
・発注書が来た段階である程度「これは入れたい」という要件とデザインをまとめています。例えば人魚の形状をベースに、正面から見た時ドレスの裾を魚のヒレのような形にしたい等、そういう素敵じゃんと思える要素を沢山入れられてよかったです!
・カラバリを作る時が一番楽しく、人魚・魔女要素以外でも「深海」「朝焼け」「夕方」等、海の印象も考えてバリエーションを組んだり、どの色も捨てがたいと思わせるぞ!という意気で調整していました。
●苦戦した部分●
・デザインの細部を詰める時に、3Dでの作成や見栄え、調節等が可能な範囲に留める前提で人魚のラインを残しつつ 清楚 セクシー+可愛い要素 をどう入れるか、露出度/配信画面に映った時の想定等、2Dチーム&3Dチームとの相談と調整のミルフィーユだったので、理想的なデザインに仕上げるのに苦戦しました。
・自分で組んだのにカラバリがなかなか選べない・・・
▼3Dアーティストからのコメント
◆楽しかった点
3Dディレクションを担当しました。今回は自分で作成したいくらい魅力的なデザインだったので、フィードバックのやりとりを通して、羽衣・ドレススカートのデザインの布のしなやかさだったり、軽やかなイメージを活かせるような衣装モデルに仕上げられて良かったです。
◆苦戦した部分
・モデリングがスケジュール期間内に完了できず、所々調整を入れなければならなかったこと。
・スキニングの段階で、腰布の揺れ骨が発注時の指定(位置、本数)だと脚上げ時のめり込み回避が難しいことが判明したため、急遽対応が必要になったこと。
▼実装担当者からのコメント
●実装していて楽しかった点
アートディレクターの意向で、海の中を連想させるような揺れを意識して揺れ物を設定していました。
これまでのデザインでは、現実世界のような自然な揺れ方を目指すことが多かったですが、今回はコンセプト的にファンタジーな揺れ方にすることができたのでとても楽しかったです。
●苦戦した部分
Mayaでは脚が真っすぐの直立状態でアバターを制作しますが、アプリでは自然な立ち姿になるようデフォルトで少し膝が曲がっています。その上、裾はバインドポーズ時よりも重力で下に落ちるようになっているので、膝を曲げた際の膝裏や裾形状がなるべく破綻しないよう調整するのに苦労しました。
骨位置やウェイト、揺れもの調整を何度も試行錯誤するのが大変でしたが、結果的に違和感なく設定することができ、次に繋げられる成果を得ることも出来たので良かったです。
6.最後に
このように、アバターアイテム一つにも沢山のメンバーの手が加わり、ユーザーの皆さまに喜んでもらうべく細部まで丁寧に仕上げる事を一同心がけています。アーティストたちが楽しんで制作している雰囲気が伝わっていたら幸いです!
REALITYアートグループでは、アバターアイテム制作に携わる2D/3Dアーティストの採用を積極的に行なっております。REALITYアバターの衣装を一緒に制作してみませんか?以下サイトからのご応募、随時お待ちしております!
(また、「この衣装の裏話が聞きたい!」などのコメントもお待ちしております!)