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戦わない刀
今回は刀のはなしをしていこうと思います。
刀といわれると武器や侍なんかをイメージしますね(*´ω`)
アイヌ文化の中での刀は少し違います。
エムㇱ(刀)
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アイヌ語で刀はエムㇱと言います。エムㇱは刀の総称で、特に宝物として扱うものはタンネピコㇿ (長い宝刀)、タㇰネピコㇿ(短い宝刀)と呼ばれます。
この刀は戦いに用いるのではなく、儀式の際に使われます。そのため目釘がはいっておらず刀身はさび付いているのが特徴です。
なぜ刀身がさびているのか
刀の錆には魔を払う効果があるとされています。さびていない刀で魔物を切ろうとすると、刀身の光を見て魔物が刀を除けてしまうんだとか。また、錆びた刀で切られた魔物は、二度とこの世に戻ることができないとも言われています。
エムㇱを用いた儀式
村で火事や水死者が発生した時、「カムイがちゃんと見守っていたらこんなことにはならなかったぞ!これからはもっと気をつけろ。」という念をこめて行うウニウェンテという儀式があります。
火事の場合は火のカムイの名前を、水死者が出た場合は水のカムイの名前を呼びながら、男性がエムㇱを持って行進します。
他にも、イオマンテ(クマ送り儀礼)をはじめとする祭事の際には剣の舞であるエムㇱリㇺセも踊られます。これは、カムイへの奉納の踊りであるとされています。エムㇱリㇺセは道内各地で伝承されており、各地で踊り方や歌が異なるのが特徴です。
刀と男性
エムㇱは、本州との交易によってもたらされました。そしてその鞘や柄に男性が木彫を施します。エムㇱを肩から下げ、男性の正装には欠かせないものでした。エムㇱは基本的に男性だけが持つことを許されていたようです。
普段は家の宝壇の上に並びかけており、人目の付きやすいところに上等なものをかけていました。
男性が亡くなった際には、家の中で最も上等なエムシを男性の右胸あたりに添えて、納棺の時に外すアエトㇺテ(遺体を飾る)も行われました。
おわり
こんな感じに今回は刀について紹介しました!和風の文化と異なる豊かな文化がありますね~
今回の参考文献はこちらです↓↓↓
角田洋一・福地貴子『図解アイヌ』新紀元社2018
萱野茂『アイヌの民具』すずさわ書店1978