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不思議なガラスのむこう側  もう一度会いたい物語1


忘れられない小説は、限りなくありますが

その中で、二度と会えないだろうと諦めている短編が 三話あります。
なぜなら、タイトルも作者も覚えていないからです。
たぶん SFの短編集に 収録されていたものでしょう。

おおよそのストーリーは、もちろん覚えていますが

一番忘れがたいのは、それを読んだ時に自分の心に浮かんだ情景です。

その脳内映像を生み出した物語に、もう一度きちんと会いたいと思いながら、今日まで来ました。


記憶に残るストーリー


光の通過が異様に遅いガラスが発明された。
これを一年間、美しい湖のそばなどに設置しておくと
一年分の風景がガラスの中に封じ込められる。
それが商品として売られている。

ある日、一人の客がそんなガラスを売る店を訪れる。
客を待たせ、店主は商品を取りに行く。
そばにある家の窓からは、奥さんと可愛い子供が遊んでいるのが見える。
だが、こちらには見向きもしない。

不思議に思った客が家の中をのぞくと
そこに二人の姿はなく、誰もいない荒れ果てた部屋があるだけだった。

客が見ていたのは、家の窓ガラスの中に封じ込められた過去の風景だったのだ。この家族に何があったのかは分からない。
というか、私は覚えていない。


私だけのワンショット


これを読んだ時、私は どうしようもなく寂しかった。
その感情が、スカートをひるがえす若い母親と あどけない女の子の姿を生み出し
私の脳裏に焼き付けた。

そうなんだ。忘れられない物語というのは、映像となって記憶に残る。
さし絵ではなく、あくまでも自分の中に生まれた私だけのワンショット。

あるいは、そこまで行かなくても、もやもやした感情のかたまりのようなものが生成されて、記憶の中に居坐る。
そうでない場合は、読んでいる時は面白くても、読んだ事さえ忘れてしまう。少なくとも、私は そういう感じだ。

記憶に残る物語と 残らない物語 は どこが違うのか?
ぐんぐん引き込まれる作品と 途中で、もういいやと思う作品は 
                        どこが違うのか?
自分でも よく分からない。 

強いて言えば
① ストーリーが 斬新でワクワクさせてくれる事
② 登場人物に感情移入できる事

私にとっては、この二つかな? という気がするが
ものすごく 個人差があるのだろうと思う。

それは ともかく 幻の短編に

やっと 会えたのです!



この本には長い間 会えずにいた。
だが、インターネットが発達した今なら見つけられるかもしれない。
たったひと言だけ思い出せる 「スルーグラス」という言葉で検索した。

そしたら、なんと見つかったのです。
しかも、そのひとつはnoteの記事として。

正しくは 「スルーグラス」ではなく 「スローガラス」でしたが

探し当てた物語の内容は
まぎれもなく、あの日あの時に読んだストーリーでした。


タイトル 「去りにし日々の光」(原題:Light of Other Days)
       有名な古典SF短編小説

作者   ロバート・ショウ


以下がこの作品の紹介サイトです。


思えば、私達は 空を仰いで いつだって過去の映像を見ている訳だ。

私たちが目にする太陽の光は 約8分前の光
太陽が突然消滅しても 8分間は 気付かないという事になる。

肉眼で見える最も遠い天体だと、私たちは約300万年前の光
すなわち それだけの時間の中に封じ込められた過去の光を見ているらしい。


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