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ものは考えよう (3)

まずは、前回「ものは考えよう (2)」↓ を復習がてら再度ご覧ください。
https://note.com/real_hare9943/n/n09d33d9f2b01

今日は、解説すべき項目をいくつか補足することにします。

The greatest discovery of my generation is that human beings can alter their lives by altering their attitudes of mind.
我が世代最大の知見は、考え方を変えることで人間は己れの人生を変えることができるということだ。
                    William James (1842―1910)


1.
the greatest discovery は one of the greatest discoveries でなくてよいのか?という疑問が湧くかもしれませんね。
結論から言うと実は両方とも okay で、ニュアンスとしては前者の方が強い表現になります。

ただし、one of the greatest discoveries とした場合であっても訳は「最大の知見」のままでよく、「最大の知見(のうち)の一つ」という直訳はすわりのいい日本語とは言えません。

類例を上げれば、

SERA Masanori is one of the most talented musicians in Japan.

は、「世良公則は、日本で最も才能のあるミュージシャン(のうち)の一人である」では、こなれた日本語とは言えません。

「世良公則は、日本でも指折りの / 日本でも屈指の / 日本有数の (才能ある)ミュージシャンである」

の方が遥かにこなれています。


2.
discovery は、抽象名詞と取れば「discoverすること」、普通名詞と取れば「discoverされたもの」となりますが、ここでは後者です。
ただし、和訳には工夫が必要です。「発見されたもの」や「発見物」では到底こなれた日本語とは言えません。
「知見」という、この種の文脈にぴったりの日本語がせっかくあるのですから、これを活かしましょう。語学はセンスが大事です。


3.
人称代名詞「their」には注意が必要です。不用意に「彼らの」と訳してしまうと、上の文脈では一瞬「えっ、誰の?」となります。

「their」に限らず人称代名詞の訳し方は実は<鬼門>であって、意外に思うかもしれませんが、<訳さない>が原則です。もしくは、<内容を取って訳出する>です。
因みに、上の訳では最初に出てくる「their」は内容を取って「己れの」と訳し、2番目に出てくる「their」は訳していませんが、実は両方とも訳さなくても自然な日本語になります。人称代名詞「my」も「この」や「いまの」で、実は問題ありません。

なお、人称代名詞にまつわる点は、実はとても奥が深く、英語では多用するが、日本語では基本的に避ける傾向が強くあります

以下のやりとりをご覧ください。

A: Well, by the way, how’s your mother?
B: Oh, she’s fine, thank you.

直訳:
A: ところで、あなたのお母さんはいかがですか?
B: あ、彼女は元気です。あなたに感謝します。

こなれた訳:
A: ところで、お母さんはいかがですか?
B: あ、元気です、お陰さまで。

直訳は、はっきり言って異常です。こなれた訳では人称代名詞を一切訳していない、という点にご注目ください。

なお、<英語では人称代名詞を多用するが、日本語では基本的に避ける傾向が強い>と述べましたが、ではいったいそれはなぜなのか?といったような疑問が湧いてくるかもしれませんね。

これは、日英語の異同の根幹に関わるとても重要な問題提起になるのですが、紙幅の関係でここでは割愛します。いずれ正式に採り上げる予定です。


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