鶏が先か 卵が先か case③
5年生で飼育委員になった私だが、飼育委員に与えられた仕事が楽しくて楽しくて、仕方なかった。
飼育委員は、曜日によって当番を決める。
当番の日は、お昼休みに飼育小屋をお掃除したり、餌を補充したりするのだ。飼育小屋の健全なる維持に、大いに貢献するお仕事である。動物好きの私と友達は、自分の当番の該当する曜日以外も、積極的に飼育小屋に行って、お掃除などを手伝った。
授業が始まる前の、朝の時間に行ったことも、少なくなかった。
本当に動物たちのお世話は楽しかったのだ。
飼育小屋は、私の自宅の鶏小屋よりも何倍も大きい。
大きく2つに等分に区切られていて、出入り口も2つあった。
向かって右の部屋には大きな白い雄の鶏が2羽、飼われていた。非常に凶暴で、小屋に入った途端、突進されてつつかれるのだ。ターゲットにされるのが嫌で、ほとんどの委員の子達は、右側の小屋には決して入らず、そっとしておく。
しかし私と友達は、その2羽を小屋から外に出し、出している間に掃除する。
掃除が終わったら、学校の庭でたむろしている2羽の白い雄鶏達を、箒でそっと追いかけ、小屋に連れ戻すのだ。
そんな乱暴で避けられている白い雄鶏達にも、名前があった、というか、我々が命名した。
「レモン」ちゃんと「パイン」ちゃんだ。風貌や性格は、その名前には全く似つかわしくないが、我々はそれなりに可愛がっていたのだ。
スリルがあって楽しめて鶏達と交流も出来るし小屋も綺麗になる、一石二鳥、いや三鳥だ。
向かって左の小屋には、東天紅鶏(トウテンコウ)という、国の天然記念物に指定されている鶏の夫婦がいた。
雄鶏を「ナポレオン」、雌鶏を「エリザベス」と、呼んでいた。この名前は、元々ついていたものだ。
非常に人なつこくて大人しい。皆からとても可愛がられていた。後は数羽のインコと兎達だ。
インコ達に名はなかった。我々もつけなかった。
兎には付けた。私が委員の頃は、真っ白い雌の兎と、灰色の雄の兎がいた。雌兎を「シロ」ちゃん、雄兎を「グレー」ちゃん、と呼んでいた。
左の小屋は皆頻繁に出入りし、率先してお世話した。子どもに、「動物と触れ合わせ、動物の命を直に感じ、命の大切さを学ぶ」という、学校の目的は、左の小屋によって、達成されたのだった。