
99.気分はもうRPG-おたすけ冒険録・2-
布教師としての日々は、奇妙なかけ合わせから、時にドラクエのような冒険譚を描いたりもします。
前回未読の方は先にこちらを↓
ラムネばあさんの確信は単なる思い込み思惑に反する結果が待っていたようで、島津日火斎との運命的な邂逅は、期待していたような物語の膨らみを見ることはなかった。(残念)
FFとドラクエのキャラ同士が遇ってしまったみたいな波長ズレが起こり、もうそれ以上に書いても仕方がないような形でしょんぼり終息する。
中山みき、ラムネ婆さんのもとへ訪れる
島津日火斎の件からしばらく経った頃、いつものようにラムネばあさん宅を訪れ、おさづけを取り次いでいました。
相変わらず、天理教は信仰する気はないけれど、おさづけはビンビンに効きまくるラムネばあさん。
そして彼女はこんな話を打ち明けます。
「ピーナッツさんに話しておかなければならないことがあってね」
はい、なんでしょ(・ω・)?
「中山みき様が先日、わしのところにやって来てくれたんだ」
ええ(・ω・)‼ マジですか?
基本的に彼女の荒唐無稽な話は否定しないで耳を傾けるピーナッツ。一応、霊感ばりばりであろうラムネばあさんは、おやさまにお会いしたのだと打ち明けてくれた。
話しはこうだ。
それは夢なのか、現実なのかはっきりしないような、うとうととしている時のこと。(この時点で既にもう夢エピソードじゃないのか)
ラムネばあさんがまどろみの中でうっすら目を開くと、眼前に無数の星々が瞬く夜空が広がっていた。そしてその星空に、片手を後頭部に、もう片手を腰にあててポーズをとる、きれいな天女が浮かび上がってくる。
しばしそれに見とれていると、やがて情景が移り変わり、薙刀を片手に猛々しいいでたちで構える女性が現れ、そしてラムネばあさんに向かって、こう名乗った。
我は中山みきである‼
携えた薙刀を威勢よく振りかざし、彼女の声が一面にこだまする。
「おぁ…中山みき様…!」
噂にきく天理教の教祖が自分の眼前に姿を見せて下さり、ラムネばあさんはこの時、深い感動に包まれたのだそうだ…。
いや……誰それ(^_^;)?
おそらく、多分なんだけどそれは、おやさまではないと思う。
私が知っている限り、おやさまに薙刀のスペックはない。
百歩譲ってそれは別のナカヤマミキだ。同姓同名のやつの…。
しかしラムネばあさんはその薙刀の猛々しい女将(巴御前みたいなのをイメージしていたピーナッツ)を天理教の中山みきだと信じて疑わなかった。
以来、度々ラムネばあさんは薙刀みき(仮)をおやさまに会えた、おやさまが来てくれたのだと口にし続け、最後までそれを否定することなく、そうなんですねぇと相槌を打って彼女の中で展開する物語を壊さないように心がけた。
心の拠り所となった祝詞
ラムネばあさんが、狐に化かされていると悩んでいた時があった。
ピーナッツが訪問し、話をしている途中で、突然自分の額やこめかみをバシバシ叩き出すので、
ど、どーしたんですか(^_^;)?
とおそるおそる訊ねた。
「この頃、性の悪い狐が来て、悪さをしておる。今もこうして話をしている最中もわしの頭のまわりをわざと横切ったり、触ってきたりして、人間をからかって楽しんでおる。まったく、頭にくる」
とラムネばあさん。もちろん、ピーナッツには見えもしなければ、感じることもない。そうですか、狐ですか、と話を聞いていたが、それからしばらくその狐がラムネ宅から離れず、夜になると特にラップ音を鳴らしながら露骨に家の中を暴れまわってラムネばあさんと、息子のトモさんを悩ませる日々が続いた。
「決まって夜になると狐が天井のあたりをぐるぐるまわって騒ぎ出す。その度にトモがほうきを天井に向けて振り回して追い払おうとするが、効果がない」
……大変ですね(^_^;)
話を合わせて聞いていると、彼女はピーナッツに、狐のお祓いを天理教で出来ないか、できるなら、ぜひ依頼したいと話す。
やれと言われれば付き合う気持ちでいたので、教会で祝詞を読み、神道の方の祝詞なんかを調べながら、テキトーにそれらしい祝詞をまとめる。
教服や小さい三方、皿をひとしきり持ち込んで、祝詞を読み上げ、大幣で家中をお祓いするピーナッツ。
ひと通り終わると、ラムネばあさんはとても清々しそうにしていた。
そして、
「その、いま読んだものを、わしにも譲ってはくれまいか?」
と、祝詞をいたく気に入っている様子だった。
(いや、テキトーに見様見真似で書いたやつなんだけどな(;´・ω・)…)
…いいですよ(^^)‼
心の声を封じ込み、彼女に祝詞をわたそうとすると、
漢字の読み方がわからない。
字がこまかくて読めない。
という理由で、改めて全部ひらがなの大きな文字で書き直したものが欲しいと言った。
なんだって(゜o゜)?
それで、要望通り全てひらがなに改めた祝詞をワードで打ち込み、最大限の文字の大きさにして、それを印刷したものをわたすことにした。
文言の詳細等もラムネばあさんの要望に沿って書いた、デタラメともいえる祝詞(^_^;)
実際のものがこれです↓

こんな風に全て平仮名の大きな文字が書かれた数ページに及ぶ、最早祝詞の原型とどめてないんじゃないかという言葉が羅列されたものを彼女に渡すと、ラムネばあさんはそれを恭しく受け取り、この家の本来の宗派である日蓮宗の仏壇の前で、
「かけまくも」
「かしこみかしこみ」
と、まるで小学生の朗読のように声に出して読み上げるラムネばあさん。
本来お祓い時に祭主が読むものを家主が読み、
というか、それを毎日読み上げることを日課にし、
日蓮宗の仏壇に向けて唱え、
何もかもデタラメなことをデタラメに重ねまくって、それを神聖なものとして重く受け止め繰り返して、こうして(とりあえず)ラムネばあさんの心だけは救済されていく。
こういうイベントを一体何年続けてきたことか。
「落ち武者・仁左衛門の鎮魂の旅」や「龍神の怒りを鎮めるために向かった寺」、他にも流し供養や中野のお不動様…よくわからない彼女の注文に付き合って続けた数々の冒険も、いつかまた、そのうち書こうと思いますが、今回はこの辺で終わっておきます。
まとまらない物語でした。
ちなみにラムネばあさんは現在93歳、いまもご存命です(^^)
【2024・12】
おまけ
「チ。」というアニメが我が家でいまブームとなっています。
おかげで小学生の息子が最近“異端”という言葉に目覚めてしまいました。
異審問官によって凄惨な拷問がなされるシーンをみて、
「お父さん、いまはもう“異端”とかってないんだよね?」
と尋ねてくるので、
えっ。
あるよ今でも。
いっぱいいるよ。
天理教にも異端いっぱいいるんだよ(・ω・)。
と、さらっと教えると、絶句していました。
いや、拷問とかはないけどね、とか肝心な方の情報は教えず(笑)
ここまで読んでいただきありがとうございました!
それではまた!(^^)!