パニック障害の友達

学生時代からの友達、Eちゃんは、パニック発作を持っている。
集まりに来られる時と来られない時があって、みんな「ドタキャンでもいいからね、来られるならおいで」と言っている。

そんなEちゃんからイベントの誘いが来た。市内の広場を貸し切って、農産物や食や雑貨や花のマルシェが行われるらしい。
私が以前、道の駅の田舎味噌や野菜が好きで買いに行ってる、と話したのを覚えてて誘ったと言う。
もちろん行くよ、と返した。

そして1週間後。Eちゃんから「電話していい?」と連絡が入った。どうしたのかな?と、仕事が終わってすぐ電話をした。

Eちゃんは弱々しい声で話し始めた。
「母親以外の人と出掛けるのが久しぶりで、今から緊張してしまって発作が出ちゃって。どうしたら行けるか考えたんだけど…お互いで別々に行って、あ、もし私が行けたらだけど…そんで、向こうで会えたら一緒に見よーって感じなら行けると思う…なんか誘っといてこんなのごめん…本当に…」
Eちゃんの声からは、申し訳ない気持ちが滲み出てて、私はせつなくなった。
だからすごく明るくこう言った。
「いいよー。現地でもし会ったらよろしくって感じで。誘ってくれた事が嬉しいし、そういうイベントあるって知れてありがたいよ。私そういうの一人でもガツガツ行くほうだからさ。全然いいってば。もう安心していいからね。」

電話を切った後、しばらく考えていた。
発作が出ると、O-157とノロウィルスが同時に来た感じでしんどい、と言っていた。よく言われてる、15分くらいで治まるって、あれ私の場合何時間も続く時ある、って言ってた。
聞いただけでむちゃくちゃ辛そうだ。

うちらの旅行にも参加できなかったEちゃん。
主治医に相談したら、遠出とか、しなければいいじゃないと言われ、悲しかったけど、薬だけもらえばいーやと割り切ってる、と笑ってたEちゃん。
バイトの面接を受けようと連絡をしたけど、面接の日時が決まって電話を切った途端、発作が止まらなくて断りの電話を入れて、はぁ!?って言われた、と笑ってたEちゃん。
好きな人ができたけど、デートに行けずにいつも家に呼んでたら振られてしまった、と笑ってたEちゃん。
何でいつも笑えるの?
したい事が出来ないって辛いと思う。
そんな風に笑って言えるなんて、強いよ。
パニック症って、色んなことを諦めなければならないの?そんなひでー話ないじゃん。

私は本屋に行くとパニック症の治し方みたいな本をよく読む。
森田療法ってのがあって”緊張しちゃだめ、不安に思っちゃだめ、発作出るな“と思うと、かえってその思いにとらわれちゃう、ありのままの自分を認めよう、って書いてあった。そして、緊張や不安は、より良く生きたいという強い思いの裏返しだと。

学生時代からみんなを楽しませて、向上心の強かったEちゃん。でも誰だって、より良く生きたい、楽しく過ごしたい、幸せになりたいって思うよね。
今回のイベントも楽しみで仕方なかったのだろう。そしてその分、発作が出たらどうしよう、楽しめなかったらどうしようと、不安になって発作が出たんだと思う。
私は専門家でもカウンセラーでもないから、Eちゃんを治すことは出来ないんだろーな。せつねーな。泣きそーだ。

イベント、Eちゃんも来られるといいな。


いいなと思ったら応援しよう!