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多様な立場の人々の働き方・生き方・考え方を学ぶ

4年制大学の専門教育科目「キャリア論Ⅱ」第7回の授業を取材してきました。担当教員は地域イノベーション専攻の西村浩子先生。

授業の概要                                                  就職活動に役立つ内容をグループ活動と個別活動を組み合わせて学ぶ。社会人ゲストにも来ていただき、企業の取り組や課題、求められる人材像についてもお話しいただく。その内容を踏まえてディスカッションや発表も行う。

松山東雲女子大学 2024年度 シラバス

ゲストスピーカーは行政書士の國本 司さんです。

高校卒業後、運送会社に就職した國本さん。
22歳の時、仕事中の事故で脊髄を損傷。車いす生活となります。
40歳の時に行政書士試験に合格。
現在は「行政書士くにもと事務所」を開業されています。

今回、國本さんの高校卒業から行政書士になるまでのお話をお聞きし、國本さんの働き方・生き方・考え方を学ぶとともに「多様性」や「社会課題」についても考えます。

車の運転はどうするの?

國本さんが普段運転されている車を見せていただきました。
手動運転補助装置がついています。

運転席の仕組みを説明してくださいました
このレバーでアクセルとブレーキを操作

身体の不自由な方の運転補助装置は状態に合わせて様々な種類があるようです。国産車のほぼすべてに取り付け可能なんだそうです。

運転席の背もたれ部分を倒し、手を使いながら後部座席に移動。
後部座席の車いすを外に出し、車いすに移動します。

あっという間に車いすへ!
教室へ移動します

駐車場からの少し急な坂道。
学生が車いすを押すお手伝いをしようとしましたが、「大丈夫」とおっしゃって、力強く登って行かれました。
後で、車いすバスケを真剣に取り組まれていた時期があったとお聞きし、納得しました。

図書館のラーニングコモンズ

行政書士とは?

まず、現在のお仕事である行政書士について教えていただきました。
行政書士は学生の皆さんにとってはなじみがないかもしれません。

行政書士は国家資格で、官公庁への許認可申請を行います。
例えば、お店を出す時の営業許可申請などです。
このような申請は行政書士以外が業として代理で行うことはできません。
専門知識をもった行政書士にのみに認められた独占業務になります。

詳しくは愛媛県行政書士会のホームページに詳しく載っていましたので、興味のある方はご覧になってみてください。

学生たちにわかりやすくお話しされる國本さん

転機となった不慮の事故

22歳の時、仕事でトラックの荷下ろしをしていた國本さん。
荷物が傾き、崩れそうになっていることに気がつきます。
とっさに「受け止めなければ!」と、荷物を支えようとしました。
しかし何百キロという荷物は支えられるはずもなく、下敷きになってしまいます。

すぐに病院に搬送され、手術が行われましたが、両足が不自由になりました。

この時の心境を次のように話されました。

❝1日はすごく落ち込みました。
リハビリを頑張れば何とかなるんじゃないかと思って、
次の日からはとにかくリハビリを夢中で頑張りました。
少し足が動かせるようになったけど、
車いすが必要な状態であることは変わらなかった。
でも、やれるだけやったので、
「これだけ頑張ったんだから仕方ない!」と切り替えられました。❞

リハビリ中に知った車いすバスケの存在もあり、
「新しいことを頑張ろう!」と思えたんだそうです。

職業リハビリから就職まで

リハビリを終えた國本さんは、岡山にある職業リハビリテーションセンターに入所、オフィスビジネス系のスキルを身に着けます。
ここでも新しいことへのチャレンジに前向きな國本さんは懸命に勉強し、1年のところを10ヶ月で修了しました。

車いすの方が就業場所を探すにあたって外せない条件は、車いすで使用できるトイレがあること(バリアフリー環境)です。

写真ACより

ここで障害者雇用に関する法律を調べてみました。

「障害者の雇用の促進等に関する法律」には、雇用率や、差別禁止、障害者とそうでない者との採用から採用後の均等な機会の確保について定められています。

合理的配慮の提供義務についても明記されており、施設面に関しては次のように定められています。

その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。

障害者の雇用の促進等に関する法律 第三十六条の三より


ただ、過重な負担(費用など)がある場合は例外とされています。

施設の整備に限らず、多様性を実現するためには、すべての企業が、障害のある人もない人も一緒に働くことを前提に考えることが大切ですね。それが自然なこととして受け入れられ、当たり前になるといいと思いました。

授業では愛媛県内の障害者雇用企業の紹介もありました。
愛媛県の障がい者求人特設ページで確認できます。

話に聞き入る学生たち

その後、國本さんは縁あってドラッグストアの経理に採用されましたが、初めての事務職に苦戦したそうです。

写真ACより

何しろ体を動かすのが好きだったので、座り仕事と地道な伝票処理、日次、月次、年次と決められているルーティン業務になかなか慣れなかった。

しかし、徐々に仕事を任されるようになると、やりがいを感じるようになり、24歳から41歳まで17年間勤務されました。
この経理の実務経験は現職でも活かされているそうです。

行政書士を目指す

やがて、行政書士として開業するという目標を持つようになりました。
社会人の方はわかると思いますが、働きながらの資格取得は大変困難です。
かなり強い信念が必要です。
そして、行政書士はとても難易度の高い資格です。
しかも國本さんは独学!
合格するまでの1年半、仕事以外は勉強に明け暮れる生活だったそうです。

伝えたいこと

最後に、國本さんに学生へのメッセージをいただきました。

新しいことにどんどんチャレンジしてほしい。
今の状況がこうだからやめようと思わないで。
失敗してもチャレンジしたことに後悔はないと思う。❞

学生からは、「前向きなチャレンジ」という國本さんのマインドセットに刺激を受け、次のような感想がありました。

❞ これからの人生、様々な選択の場面があると思うが、後悔しないよう挑戦していきたい。刺激を受けました。 ❞

多様性という視点からは、次のような感想が。

❞ (日常生活で困惑した経験を聞いて)障害を持つ方と健常者の考えにズレがあると感じた。これからは、気づきを大切にしたい。❞

多様性を実現するためには「当事者意識を持つこと」も大切ですね。
素晴らしい視点だと思いました。

これから社会人となる学生の皆さんにとって、忘れられない授業になったのではないでしょうか。

私自身は、國本さんのお話を通して
困難を乗り越え、適応・回復する力「レジリエンス」や、自分の能力を努力によって伸ばす前向きさ「成長マインドセット」がいかに自分の人生を豊かにするのかを知りました。

自分の人生もまだまだチャレンジしていきたいです!

クリスマスが近いということで、西村先生がシュトーレンを用意してくださいました!
本格的なシュトーレン おいしかったです
車いすは家の中と外で別のものを使っているそうです
記念撮影

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