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Takramのデザインエンジニア田川欣哉が薦める4冊。”学びに読書は欠かせない”

(この記事は2019年に作成したものを再掲載しております。)

業界のトップを走る「プロフェッショナル」が薦める本とは?読書をもっと面白くする実名ソーシャルリーディングアプリReadHubが、独自インタビューをお届けするReadHubTIMES。Takramでデザインエンジニアとして活躍する田川欣哉氏。デザインのマインドセットを獲得したい方にお薦めする4冊を紹介する。ユーザー体験を向上させたいビジネスマンやエンジニアは必見。

プロダクト・サービスからブランドまで、テクノロジーとデザインの幅広い分野に精通するデザインエンジニア。
主なプロジェクトに、トヨタ自動車「e-Palette Concept」のプレゼンテーション設計、日本政府の地域経済分析システム「RESAS」のプロトタイピング、Sansan「Eight」の立ち上げ、メルカリのCXO補佐などがある。経済産業省・特許庁の「デザイン経営」宣言の作成にコアメンバーとして関わった。経済産業省産業構造審議会 知的財産分科会委員。グッドデザイン金賞、 iF Design Award、ニューヨーク近代美術館パーマネントコレクション、未踏ソフトウェア創造事業スーパークリエータ認定など受賞多数。東京大学工学部卒業。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。2015年から2018年までロイヤル・カレッジ・オブ・アート客員教授を務め、2018年に同校から名誉フェローを授与された。

BTC-ビジネスとテクノロジーとクリエイティブ3つを横断的に取り組む

僕は、大学は工学部で、大学院ではデザインを勉強しました。卒業後は、5年ほどプロダクトデザインの会社でアシスタントとして仕事をした後、Takramを共同設立しました。Takramは、「企業や組織が、限界や領域を超えていくことを実現する」デザイン・イノベーション・ファームです。主にデザインを中心に、新規事業の立ち上げや企業ブランディングのお手伝いをしています。

僕自身は、ビジネスとテクノロジーとクリエイティブの三つを横断的に取り組んでいます。少し前までは、UI/UX関連のプロジェクトがメインで、以前はコードも自分でバリバリ書いていました。設計もするし実装もしていたので、その両方を行うデザインエンジニアです。現在は、ハードウェア・ソフトウェア・空間・ブランド・組織設計など多様な仕事に関わっています。

「好奇心が旺盛なこと」が仕事をやる上での強みになっている

大きなプロジェクトを立ち上げていくときには、沢山の専門家が関わります。専門家の皆さんの力を引き出して、1つのものに仕上げていくのか、という部分が重要になります。自分の軸はデザインやテクノロジーですが、それだけだとモノはできません。多くの人の強みをうまく引き出すことができなければ、良いモノが作れるわけがありません。

僕はもともと好奇心が旺盛なほうなので、いろんな情報や考えを学ぶことが大好きです。どんな業界や業種の人でも楽しんで話すことができるので、専門家の方々と話しながらモノに仕上げていくことに醍醐味を感じます。それはこの仕事をやる上での強みになっているのかなと思います。

新規事業やスタートアップは、前例がないことに取り組みます。それは、成功が約束されていないゲームをやるということですよね。だから失敗をすることももちろんある。混沌としている状況の中で、一歩一歩進んでいくためには、あの手この手を駆使する必要があります。型を知っているかどうかも重要です。アプリはどうやって立ち上げるのか、ハードウェアはどのような工程で作り上げていくのか、新しいブランドの立ち上げ方など。型を知っていることはプロとしてはすごく大事です。一方で、型を知っていても太刀打ちできない話も出てくるので、そこからは、いろんな専門家やプロジェクトメンバーと力を合わせて総力戦でやるしかありません。いかにみんなの力を引き出しながら、プロジェクトを成功に導くか、それが仕事の面白さですね。

デザインを学ぶための名著

僕と同じように、エンジニア出身の人がデザインを学びたい時には、『ジョナサン・アイブ』がお薦めです。『ジョナサン・アイブ』はAppleのチーフ・デザイン・オフィサーを務めた天才デザイナーであるジョナサン・アイブに焦点を当てた本です。スティーブ・ジョブズとともに、 Mac、 Pod、 iPad、iPhoneなど時代のアイコンとなるプロダクトを次々と作りあげた彼の生い立ちを追ったもので、アップルでデザイン部門の責任者として発言力を高めていくまでの半生を描いています。

また、マツダのデザイン責任者である前田育男さんの『デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す』もお薦めです。この2冊は、スキルを教科書的に解説している本ではなく、デザインがものづくりの現場に入ったときに何がおこるのか、そのエピソードがふんだんに書かれています。デザイナーが入ったパターンのものづくりで、明らかに変わる現場の状況が実践者の目線から生々しく書いてあります。エンジニアがデザインを学びたいと思った時には、「こんな世界もあるんだな」と、まずはそれを知るという意味で、この2冊はよいきっかけになるでしょう。

ビジネスに軸足を置いている人には、「トム・ケリー」や「ティム・ブラウン」と検索して出てくる一連のデザイン思考の本を読むのがオススメです。ビジネス系の人は、「観察」、「試作」、「テスト」の一連の流れを身につけることができるようになると、かなり仕事に役立ちます。

また、濱口秀司さんの『イノベーションの作法』は上級編としてオススメです。浜口さんは超実践思考で本を出されていて、「デザイン思考いいよ」という啓蒙書ではありません。相当レベルの高いビジネスパーソンしか使いこなせないスキルが書いてありますが、一歩先を目指すビジネスマンにはぜひ読んでもらいたい良書です。

越境する人を増やしたい

自著『イノベーションスキルセット』はエンジニアとビジネス系の人達に、デザインスキルのエッセンスを伝えるための本です。エンジニアやビジネス系の人の中でも、「ユーザーのことをもっと考えないといけない」、「もっといいものを作れるんではないのか」と思っている人たちに読んでもらいたいと筆をとりました。

デザインを日々の仕事に取り入れる方法、取り入れることで起きる変化がわかる本になっています。僕は、エンジニアリングとデザインや、ビジネスとデザインの両刀使いが世の中で増えるといいなと思っています。全員ではなくても、10人に1人ぐらい両方を知っている人がいてくれると、いろんなことが前向きに動き始めると思うので、そのために書いた本です。これを越境と呼んでいますが、越境をしてくれる人たちが、この本を読んで1人でも2人でも増えてくれると嬉しいです。


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