おじいちゃんが死んだ日の、匂い。
おじいちゃんが死んだ日の匂いを覚えてる。
ウイロウみないな匂いと思った。
今思えば、お香の匂いなんだろうけど、
お棺に入れる消臭剤なのか、保冷剤なのか、分からなかったけれど、
葬儀屋さんが入れてた、透明の薄紫色みたいなヤツが、幼い僕にはウイロウに見えた。
イトコたちは泣いていた。
『最期のお別れだよ』と誰かに言われて、長い長いお坊さんのお経の後に、おじいちゃんのお棺にみんなで花輪の花を入れた。
おばあちゃんが、おじいちゃんに口紅を塗って、お父さんとかオジさんが釘を打つ音が聞こえた。
お兄ちゃんと僕は、何だかおかしくって、顔お見合わせて、声を圧し殺して笑った。
何だかおかしくって、笑った。
めちゃくちゃ暑かった。
火葬場で、おじいちゃんを焼いているとき、みんなアイスクリームを食べていた。
おじいちゃんを焼いてるのに、よくアイスなんか食べられるなって、子どもながらに思ってた。
お母さんやオバさんが、クレープ屋さんみたいなアイスクリームを、食べろ食べろって押し付けてきたけど、おじいちゃんが可哀想で食べなかった。
でも、さっき泣いていたイトコたちは笑ながらはしゃいでた。はしゃぎながらアイスを咥えて、親戚のお兄ちゃんと遊んでいた。
焼き上がったおじいちゃんは、ただの黒焦げの骨だった。
親戚のオジさんは、おじいちゃんの頭蓋骨を割り箸でつついて粉々にしていた。
多分、大きいままだと骨壺に入らないからだと思うけど、僕はまだ幼かったから、衝撃的だった。
どの小さい欠片も、おじいちゃんだなぁって思ったから、割り箸でずっと拾ってた。
親戚のオバさんたちが、『あの子は熱心だ』とか『あの子はイイ子だね』とか、ヒソヒソ話してるのが聞こえた。
でも、僕は熱心でも、イイ子でもない。
なぜって、おじいちゃんのお棺に花を入れるとき、おかしくって笑ってたんだから。。。
『そろそろ、よろしいですか?』って言われたから、止めた。
おじいちゃんの骨が、ホウキみたいなヤツで、ゴミみたいに掃き取られて、骨壺のなかに入れられた。
おじいちゃん、死んだらみんな、僕たち、ゴミみたいになっちゃうのかなぁ?笑
…もし天国があるなら、なんで今じゃないんだろ?
どうしてナウじゃなくて、アフターなの?
神様とか、仏様とか、そういう存在があるなら、彼らは多分サディストだと思う。
とか言って笑