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曇天の月夜

休みをもらって幾日か経った。
仕事から引き離されて動悸はほぼ止んだけれども、無気力さは止まない。

抗うつ薬を飲んでいるが効果はすぐ出ない。
現実はそんなもんだ、すぐ出てきたらそれは非合法もんだ。
とはいえ、1〜2週間もすると少しずつ気が楽になっているような気はする。

更に少しでも気が晴れればと思って、近くのスーパー銭湯に行って、長湯にマッサージマシンまで使ったけれどイマイチ気は晴れなかった。
どうもおかしい。
暑苦しい時期とは違って、夜は薄着では寒いから相性はいいはず。
前はサッパリしたんだけどなぁ…

露天風呂でボーっと上を見たら一面の曇天。
真上に太くて、濃い筋の雲。
ドーナツの穴のような合間に丸い月がシンデレラフィットしていた。
ただそんなシンデレラフィットも一瞬で呑みこまれて、いつしか月光も曇天に阻まれた。

まるで自分の心を見ているようだった。
月と月光は素の性格の自分。
覆っている雲は現状の心理状況。
ほんのちょっと素の明るいところが出てきたりはするけれども、基本雲に閉ざされている。

いったい、いつからそうなったのか…前からハイテンション人間では無かったが、ここまでの急な落ちぶりは初めての経験だ。

このときは親を正直恨んでいた。
ただ今ならよくわかるし、なんならその時の心情を聞きたいくらいだ。
あの時はどうかしてた…と述懐していたのを聞いたくらいだったし。
今となると空に問いかけることしかできない。

独身の自分ならまだしも、妻子持ちでとんとんと職を変えるのは相当な決断だし、合わないところでずっとやっていたら…と思ったらそうせざるを得なかったのだろうと。
無責任と言われたらそうかもしれないが、無理やりアジャストさせた結果くたばってしまって回復に時間を要するほうが余程無責任というのもわかる。
飽き性な人間でないことわかっていたし、現実合ったところを見つけたら長く働いてたし、結果として貧乏生活にも逃れる光明が現れた。

その足掻いていたであろうときもこんな心持ちだったのだろうか。
土台が違うから比べようもないけれど、社会への不適合性を突きつきられたようなこの感じはどこか似ているようにも思えた。



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清水青庸
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