仙台せりの「進化」と「変態」
仙台の朝。昨夜の楽しさを思い出させるかのように、一晩寝かされた写真たちがメッセーンジャーで続々シェアされて、ニヤニヤしながらモーニングコーヒー。
そもそも今回の仙台入りは、東北の様々な図書館司書のみなさんにむけての講演とワークショップの依頼を受けてなんだけど、大好きな仙台で仕事だけして帰るわけのはもったいないと、1人前乗りして、仙台サウナの聖地「キュア国分町」のデラックスルームを予約。で、せっかくなら仙台の友達とちょっと飲みたいなとメッセンジャーに「寂しいから誰か一緒にご飯いこうよー」と、ひ弱なメッセージを投げかけた。
するとちょうどタイミングが良かったのか、あれよあれよという間に、友達が集まってくれて、この時期の仙台といえば欠かせない「仙台せり鍋」をみんなで食べることになった。し・か・も、仙台せり鍋ブーム、いや、もはや仙台せり文化をつくった張本人である、せり農家の三浦隆弘さんまで来てくれて、自ら鍋奉行してくれるという、なんともスペシャルな会に進化した。
秋田名物きりたんぽ鍋にせりが欠かせないことから、東京に流通するきりんたんぽ鍋セットのなかに、ひっそり入れられていた仙台せりを、せり鍋という最高にいかした食べ方とともにリブランディング。その価値をわかってくれる料理屋さんを見極めて卸し、まるでせりの根っこの泥を落とすかのごとく、丁寧にお店をまわり、その見せ方や出し方やを一軒一軒レクチャーしつづけた三浦さん。そしてそんな三浦さんの姿を10年以上前から応援しつづけた人たちがいたからこその夜。
ほんと持つべきものは友達だ。しかしあらためて地方には優秀な編集者が多いなあとつくづく思う。雑誌をつくったりWEBメディアをつくったり、そういうわかりやすい編集行為のその先にこそ、真の編集が立ち上がる。都会のメディアで広く周知、評価されることはないかもしれないけれど、実直に仕事をつづける編集者たちが地方にはいかに多いか。
二年前にはじめて三浦さんを紹介してくれた多賀城市市民活動サポートセンターの中津涼子ちゃんや、仙台市のサポセンの松村翔子ちゃんをはじめ、震災後仙台に移住し『Startline』を立ちあげて東北の生産者の商品編集をサポートし続けるフェリシモの児島永作くんや、仙台PARCOのKANEIRI STANDARD STORE店長の伊藤和輝くんなどなど、この場にいる友達が粛々と活動を続けてきたその結果の一つをおすそ分けしてもらっているような気がして、なんだかとてもありがたく幸福な夜だった。
あ、そうそう。ちょっと飲めたら…のつもりがスペシャルせり鍋会に進化したと書いたけど、この「進化」という言葉づかいがおかしいのはわかってる。でも僕はいまNINTENDO Switch の「ポケモン・シールド」をやり込んでるので、ちょっとした飲みの誘いが一夜のうちにみるみる成長していく姿にポケモンの進化をみた。ポケモンやったことない人にはわかんないかもだけど…。
そもそも、このポケモンがゲームのなかで突如、成長、変化することを「進化」と呼ぶのはおかしいという意見がある。進化とは、長大な年月をかけて徐々に変化していくものだから、あれは進化ではなく生物学的には「変態」だと。確かにそうだろう。けれど「変態」って言葉じゃ、なんとなくさまにならない。そこは「進化」だからこそ子どもたちはトキめいたんだ。
そう思えば、そもそも出自を隠すように流通していた、小さなせりが、三浦さんを筆頭に、仙台の多くのトレーナーに育てられ仙台名物へと進化したその姿こそ、あらためてポケモン的だなと思う。現在のスタンダードはみな、たった1人の情熱からスタートしている。
あ、そうか。そのたった1人こそ、よっぽど「変態」だ。最高の食べ方で食べてもらいたいと最高の笑顔で鍋奉行してくれる生産者三浦さんの写真を見て思う。
良い編集者はみんな変態だな。
(※一枚をのぞいて写真はすべて後藤荘太くん撮影)
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