心不全療養指導士 認定試験ガイドブック第6章 ~身体活動と運動~
心不全になったらあまり動かない方が良い?運動は控えた方が良い?
心不全の患者さんはどの程度動いてよいのでしょうか?
心不全になってしまったら今まで行っていた趣味や仕事をあきらめて生活をしていかなくてはならないのでしょうか?
心不全の患者さんから、
「もう一度、山登りに行くことはできますか?」
「仕事に復帰することはできますか?」
と退院間際に聞かれて困った経験はありませんでしょうか?
こんにちは
心不全患者さんが幸せになれるよう
日々勉強中の飯沼です。
心不全療養指導士 認定試験ガイドブックの
身体活動と運動の部分を参考にして
心不全に関わる知識のまとめ、心不全療養指導士試験の予想問題と2020年の心不全療養指導士試験の過去問を思い出して問題を作成しました。
それでは見てみましょう!
運動療法の重要性
ガイドブックの中でも運動療法は5章 心不全の治療の項目に挙げられています。
皆さんは心不全の人がする「適切な運動」が心不全の「治療」になるということをどの程度意識しておられるでしょうか?
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)の中でも左室駆出率が低下した心不全患者では、
自覚症状の改善と運動耐容能改善を目的とした運動療法と薬物療法との併用療法(推奨クラスⅠ、エビデンスレベルA)
QOL改善と心事故減少、生命予後改善を目的とした運動療法(推奨クラスⅡaエビデンスレベルB)
とされており、運動療法の効果についてはエビデンスレベルでも強く推奨されています。
よく言われることですが、心機能が悪ければ悪いほど生命予後が悪いというわけではなく、
運動耐容能(=持久力)が生命予後に関係しているというデータが多く出されています。
海外では心移植が必要かどうかを判断する際に、心肺運動負荷試験でエルゴメーターを漕いで体力があるかないかで心移植を判断するともいわれています。
上の図でも示されているように心不全患者さんに対して運動療法をした群としていない群での比較では
運動療法をした群の方が心臓死・再入院回避率、生存率で上回っているのが確認できると思います。
もちろん、過度な運動は心不全増悪を招くのですが、適切な運動はこのように心不全患者さんにとってとても有益です。
では運動をしてもらう際、具体的にどのように患者さんに伝えていけばよいのでしょうか?
運動の種類、強さ時間と回数について
心不全の患者さんにとって「適切な運動」は「治療」になります。
「β遮断薬」が「処方」されるように、「運動」も「処方」する「運動処方」という考え方があります。
具体的に運動処方をしていく際の概念として「FITT」が重要とされています。
ガイドブックの内容に沿って見ていきましょう。
運動の種類
運動と言っても色々あります。ゴルフやテニスなどのスポーツからウォーキングまで様々な活動をイメージする患者さんがいます。ただ運動してくださいと患者さんに伝えるだけでは、もしかしたら過度な運動をしてしまうかもしれません。
心不全患者さんにはどのような「運動の種類」が適しているのでしょうか?
心不全患者においては
有酸素運動
レジスタンストレーニング
が推奨されています。
有酸素運動とはウォーキングや自転車エルゴメーター・トレッドミル上での歩行練習などの運動となり、
レジスタンストレーニングとはトレーニングチューブやダンベル、トレーニングマシンでのレジスタンストレーニングがあります。また、スクワットなどの自分の体重を利用したレジスタンストレーニングも汎用されています。
(スイミングやジョギング、テンポの速いエアロビクスなどは運動耐容能が低下している心不全患者では推奨されません。)
運動強度
ウォーキングを1時間毎日しっかりやってるんだけどなかなか体力が上がらないという心不全患者さんがいらっしゃいます。
なぜでしょうか?
それは運動強度が不適切だからです。つまり、歩く速度が不十分である可能性があります。
運動を有効なものにするためには運動強度を適切に設定することが必要です。
ではどうやって運動の強さを決めればよいのでしょうか?
①運動負荷試験結果による設定
呼気ガス分析を利用した症候限界性心肺運動負荷試験(たえうる限界ギリギリまで運動負荷をかけて呼気ガス分析をする検査)を行い、嫌気性代謝閾値(AT)のレベルの運動強度で行う方法があります。
運動負荷試験を行うと、ATレベルの運動強度は、例えば、HR100bpm、60Wのエルゴメーターのペダルの重さ、3.5METsの動作相当などの指標で出されるので、その強度に従って運動するのが良いとされています。
趣味の体操に参加したい、仕事に復帰するのに体力的に大丈夫なのか?などの疑問には運動負荷試験を行うことでその活動が安全なのか、リスクがかかってくるのか?を推定することが可能となりますのでとても大切な試験となります。
➁心拍予備能による強度設定
呼気ガス分析装置での運動負荷試験が行えない時にはKarvonenの式を利用して適切な心拍数を割り出し、その心拍数を目標に運動の強さを調整する方法があります。
Karvonenの式=(220-年齢-安静時心拍数)×係数K+安静時心拍数
係数Kは
NYHAⅢ度では K=0.3~0.4
NYHAⅠ~Ⅱ度ではK=0.4~0.5
の低強度で設定します。
③Borg指数による決定
心房細動やペースメーカー植え込み後の患者さんなどで心拍数に応じた運動処方が困難な場合には自覚的運動強度RPE(Borg指数)に応じて処方します。
適切な運動負荷はATレベルに相当するBorg11-13の範囲とされています。
つまりウォーキングをする際、スピードが遅過ぎて「かなり楽」の強度では効果が低く、「やや楽~いくらかきつい」程度の速さで歩いてもらうことが重要なのです。
病棟などで一番簡単に運動の強度を設定できるのは③自覚的運動強度ではないでしょうか?
散歩をするときに「やや楽~いくらかきつい」のつらさになるように歩くスピードを調整してくださいね!と伝えるのが大切です。
運動時間と頻度
心不全患者さんへの有酸素運動時間は5~10分程度の短い時間から開始し、徐々に目標の運動時間まで増やしていき
1日20-60分
を目標とします。
運動の実施頻度はNYHA分類のⅠ~Ⅱ度では5回/週まで徐々に増やしてよいとされています。
レジスタンストレーニングについては
2-3回/週程度 隔日
で実施することが推奨されています。
お知らせ
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まだ何者でもない私たちのプロジェクトに少しでも共感を頂き、具体的な支援をくださり、心から感謝しております。皆様のご支援で自分たちの描きたい未来が日を追うごとに形になっていく様子を見ることができ、心から感謝を申し上げます。皆様のご支援と期待
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