映画『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』感想
予告編
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PG-12指定
過去の感想文を投稿する記事【13】
昨日、映画『シャイニー・シュリンプス! 世界に羽ばたけ』の感想記事を投稿しましたが、その前作(一作目)となる作品の感想です。作成したのは一年半ほど前ですが、もしよろしければ、二つ合わせてお読み頂けたら嬉しいです。
人に惹かれ得る
本作は、セクシャルマイノリティのオリンピックとも呼ばれる『ゲイゲームス』という世界規模のスポーツ大会に臨む水球チームの物語。フランスに実在する『シャイニー・シュリンプス』という水球チームをモデルにしている本作ですが、コロナ禍の影響を受け、当初の公開予定から、多分、一年以上は公開が延期されていたんじゃないなかな?
白状すると、「なんでこんなに長いこと公開を先延ばしにしていたのか。どっかしらのタイミングで上映できたんじゃないだろうか」という認識でしたが、鑑賞してようやく気付いた。2021年7月9日の公開で正解だった。
組織委員会のトップの問題発言、新トップの過去のセクハラ疑惑等々……。奇しくも、五輪開催にあたり、様々な側面で一悶着あった日本にとっては、公開延期になった作品とは思えないほどにタイムリーな作品でした。
拡大して捉えすぎかもしれないけど、どこぞの議員らの「生産性が~」とか「種の保存の法則が~」という残念な発言すら想起させる瞬間もある本作。そんな優生思想ともとれる考えは、ナチスがやっていたことと同じ。そして劇中でも、そういった歴史について語られるシーンが描かれている。
日本の配給側が、そういった様々な要因を理由に公開するタイミングを決めたのかどうかは定かではないけれど、しっかりとしたテーマがあります。「タイムリーな作品」などとは述べたものの、劇場公開が終わっていようが、今から観ても決して遅くはない。そんな映画なんじゃないかな。
……とまぁ、以上のような説明だけだと、未見の方々は本作にお堅いイメージを持ってしまうかもしれません。はっきり言おう。この映画は、とても明るい笑! 作中でも、セリフというか物語の流れ上で “ゲイ” と単純に一括りにされることはあるものの、一人一人が個性的で、描かれ方がとても多様。
その上で、例えばジョークがキツイなどの、「私たちはゲイだからいいのよ!」という、力づくの理論に任せた毒っ気溢れるユーモアなど、ゲイが描かれている作品あるあるの面白さもちゃんと存在する。
彼らは決して、“マイノリティ=弱者” だとは思っていない。彼らにはそんな明るさがあり、だからこそ、どんな時でも寛容。そういった心地良さも作品の明るさに繋がっている気がします。彼らのユーモアと明るさは、人の傷付いた心を救うような力があり、延いてはそれが作品の魅力にも直結しているんです。
もっと言うと、勿論みんな良い人ではあるものの、少しは善人ではない部分もあるというか、聖人君子のご高説感が皆無なので、説教臭くないのも良い。
そんな本作の明るさを後押ししてくれる音楽の使い方も良かった。セリフのやり取りもそうだし、皮肉やジョークを挟むタイミングも良かったんだけど、何より音楽の入れ方が良いからテンポも良くなる。曲の入り、或いは終わりのタイミングで時間経過や場面転換を持ってきているから、それがテンポの良さに繋がっているのかな? その音楽が流れている間の楽しそうな光景も、シャイニー・シュリンプスというチームの明るさを表現しているよう。
実は本作の主人公・マチアス(ニコラ・ゴブ)はシスでヘテロの男性。とある事情で彼らのコーチを務めることになった、というあらすじは、近年で言えば、映画『だれもが愛しいチャンピオン』(感想文リンク)とも似ています。乗り気ではないものの、結果を出さなければならないマチアスに対し、シャイニー・シュリンプスのメンバーは楽しむことを大事にしている。マチアスにばかり感情移入していると、本気でやっていないようにも見える彼らにストレスが溜まるかもしれないけれど、そもそもの目的が違うのだから、会って早々に相容れるのは難しい。
陽気に見えても実は悩みを抱えていたり、一見しただけでは気付かない、知り得ないことがたくさんある。派閥や指向といった一括りだけでは語れない。自分の尺度だけでは測れないのが ”他人”。理解できないというだけでの批判や否定、最早それは差別と同義。わかっているようでありながら、追い詰められたり心が疲弊して視野が狭くなっていると、そんな当たり前のことすら忘れてしまう……。
寛容なチームメンバーとの対比がよく効いていたんじゃないかな。そこからマチアスの心境の変化が描かれていくわけだが、そんな物語がどんな展開を迎えるのかは実際に観て楽しんで貰いたいので、ここでは述べずにおきます。
多様性、包括性が叫ばれる昨今。とはいえ、時には「相容れない」「理解できない」……そんなこともあるかもしれない。けれど、それでも尚、人は人に惹かれ得るのだと、そんなことを感じさせてくれる素敵な作品でした。まだちゃんと調べてないんだけど←、なんでもフランス本土で続編が制作中だか公開中だかという噂が……。楽しみだ。
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