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そして僕は途方に暮れる
映画が好きです。
《臭い物には蓋》
悪事や失敗、醜聞など、都合の悪いことが他に漏れて、世間に知られないように根本的な解決をはかることなく、一時的にその場しのぎの方法で隠そうとすること。
菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、いい年をしたフリーターである。
住まいは彼女、鈴木里美(前田敦子)の借りるアパートに居候の身。
ある日祐一は、親友の伸二と飲みに行くと言って女性と会っていた。帰宅すると里美から「浮気していない?」と疑われる。すると祐一は荷物をまとめて、「出ていく」と言う。何も言おうとしない祐一を引き止める里美は最後に
「それじゃあ、私のこと裏切って女の人と浮気してたって思うけどいいの?」
と投げかけるが、答えずに祐一は里美の家を後にする。
↓
伸二(中尾明慶)宅
「俺、お前と小学校からの付き合いだから、全部分かってたつもりだったけど、お前のこと何も知らなかったわ」
里美の家を出た裕一は、同郷の親友、伸二の部屋に転がりこむが、食べたら食べっぱなし、衣類の洗濯は伸二任せ。
「朝仕事行く時うるさくしないでね。おれ起きちゃうから」
「おれの布団敷いといて」
と気心知れた親友に甘え放題。
遂に伸二にキレられて、伸二の部屋も後にするのでした。
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先輩(田村修)
「ウチ来いよ」
大学の先輩で、バイト先を紹介してもらったり、何かと世話になっている先輩に気を使うが、先輩の悪ふざけに付いて行けずに、先輩の部屋も後に。
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後輩(野村周平)
「それって人間関係を全部切ってるってことっスよね」
映画制作の助監督をしている大学のサークル仲間の後輩に、これまでの経緯を話し、家に泊めて欲しいとお願いしようとするも、
「それで先輩、次はどこに行くんですか?」
と切り出され、お願いできず・・・。
↓
姉(香里奈)
「どうせお金借りに来たんでしょ?」
近くに住む姉を頼って訪問するも、お金目当てと思われ、逆ギレし退室。
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母(原田美枝子)
北海道函館市の実家に帰り、リュウマチを患い日々の生活に苦労する母と、ここで一緒に暮らそうかと考えるが、
「帰ってくるなら裕一くんにも一緒に入信して欲しいの」
といかがわしい新興宗教のパンフレットを見せられ、入信を勧められて怖くなった裕一は、再び実家も出て行く。
↓
父(豊川悦司)
「何があったかは聞かないが、世の中はな、なるようにしかならない。自分がどうこうしなくても周りが勝手に帳尻を合わせてくれる。ぬるま湯だよ世の中は。」
10年ぶりに再会した父親は、母と離婚し、別の女性と再婚するがその人とも別れ、1人で古いアパートに暮らし、パチンコ通いが日課の落ちぶれた姿だった。
携帯電話の電源を切り、他人と関わらずに暮らすその部屋は
「牢獄だよ。俺もお前も罪から逃げて、ここで罪を償ってるんだ」
天国か地獄か・・・。
菅原裕一は、フリーターであることから逃げ、恋人との浮気の釈明からも逃げ、親友からの真っ当の言葉からも逃げ、でもやんちゃ過ぎる悪い先輩には染まれなくて、夢を追って努力している後輩からも逃げ、姉の厳しい現実的な言葉からも逃げ、母の慈愛の神の言葉からも逃げ、落ちぶれた父親にも反発。
結局貴方の居場所ってどこなの?
この映画を見ながら、途中この主人公がだんだん自分のように見えてきて、怖くなりました。
もし仮にパートナーと仲違いをして、顔を見るのも嫌な位の怒りや絶望が訪れたら、私の居場所はどこなのだろうか・・・。
もはや友達も家庭を築き、「一晩泊めて」などととても言える関係では無い。
例え独身の友が居たとしても、長居することなど気が引ける。
やはり親の居る実家に帰るしかない。
しかし、それも歓迎してくれるのは2、3日であり、その後は厄介者扱いであろう。
「何かあったら言ってね」
と優しくお互い声は掛け合うが、本当に何かあった時に頼れるものは❛お金❜だな。としみじみ思った作品でした。
この作品は、三浦大輔さんの作、演出で舞台上映されていたものを三浦大輔さん監督で映像化されたものですが、とても面白かったです。
本日レイトショーで、1人っキリの貸し切りでスクリーンを独り占めで観てきてしまったのですが、途中から思わず「なんでやねん!」と突っ込んでしまいました。マジで誰も居なくて良かった〜(;^ω^)