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読書の役割③「自然に身を置くことに対する憧れと共感」
自分にとっての3つの役割うち3つ目について書く。
役割③:自然に身を置くことに対する憧れと共感
僕は自然を見ることが好きだ。そのために自然がある場所に足を運ぶ。
そのかたわら、自然写真家や登山家、自然科学研究者など、自然の中を旅をする人たちの本を読み、刺激を受ける。すなわち、憧れを抱き、また共感する。
(1)人のスタイルに憧れる
色んな人の本を読むと、例えば自然に触れて何かを感じるとはどういう営みか、それを人に伝える手段としてどんなものがあるか、といったことが読み取れる。人それぞれの感性がある、写真や絵、言葉というそれぞれの表現方法があるということが分かる。自然を旅すことでときには危険が伴うが、彼らの生き方は本当に自由に見える。憧れる。自分も独自のスタイルで旅をしたいと思いを募らせるのに、本はちょうどよい。
『動物写真家という仕事』前川貴行
趣味で野鳥観察を始めてから、サギのような比較的大型の鳥類と空間を共有できたような感覚になることがある。互いによく見える距離で認識しあっているが、お互いがその場を離れない。サギはこちらを気にせず普段通りの行動をする。こちらは腰を据えて観察をする。このとき、今まで感じたことのないうれしさを感じた。
この本の著者は、ゴリラのような大型の生き物が相手でも、距離を近けることを恐れない。 言葉のやり取りはなくとも野生の生き物とコミュニケーションを取れること(互いが互いを認識したうえで許容すること)に言及していた。まさに自分の経験と近い。この本を通して、繰り返し生き物と出会い経験を重ねることで、自分の何かが変化すること、また自分に影響を与える特別な生き物が見つかることの喜びについて学び、生き物とのさらなる出会いに対する期待が大きくなった。
『極北へ』石川直樹
この本からは自分の足で自然を見に行くことの大切さを学んだ。 普段は都会に住んでいても、別世界のような大自然と同じ時間を共有していること、世界はつながっていることを実感できる。また、同じ場所を何度か訪ねて、自分のフィールドにすることの価値を教わった。1回目は気持ちが高ぶって何も感じられなくても、2回目は余裕ができて何かを感じ取れる。実際に、いま自分は、自然に限らずお気に入りの場所を見つけ、何度も訪れることの意義を体感している。
『そして、僕は旅に出た』大竹英洋
スケジュールには余裕を持たせるべきということを教わった。寄り道から感動が生まれる。その場の判断で動くことでよい成果が生まれる。一方で、はじめから狙ったことに向かうのは感動がないつまらないものになる可能性がある。無計画はつまり可能性なのだと感じた。
(2)自分の経験と重ね合わせ共感すること
本を読むと、新たな気づきだけでなく、共感できることも見つかる。例えば、生き物と出会うまでの気持ちの高揚や出会った時の喜び、現地に行くまでの行程で想像を膨らませること。また、学生のころに自然を対象に現地調査をした経験があるので、自然の不確実性に対する周到な準備やイメージトレーニングの大切さ、また現場での計画変更の醍醐味に特に共感する。
共感するということは、背後に似たような経験が自分にもあるはずで、それを思い返して大事に記憶しておきたいと思う。それを思い出させてくれるのに、読書が役立っている。
『THE FISH 魚と出会う図鑑』長嶋祐成
釣りを通して得られた生き物との出会いや幼少期の思い出を語っている。心の動きの一つ一つを紐解いて純粋な言葉や絵として表現されていて、読んでいて心地がよい。著者にとって魚との接点は釣りである。一方で、僕にとっては野鳥観察であったりスキューバダイビングであったりする。このように形式は違っていても、感じることは似ていて、とても共感できる。
『アーバンアウトドアライフ』芦澤一洋
自然が多い地域に暮らすことをぼんやりと夢見ている自分がいた。しかし、現実的に考えて、地元であり暮らしも便利な東京で暮らすことが理想的で、雄大な自然とは離れてしまうことにジレンマを感じていたことがあった。ところが、都内で野鳥観察を始めてみると、身近な自然に大きな魅力があることを知った。そんな折にこの本を読み、都会に暮らしながらも身近な自然を愛し、せわしい日々のの生活から離れられる場所として身近な自然と関係を持ち続けるというスタイルを肯定してもらった気分になった。
『魚附林の地球環境学: 親潮・オホーツク海を育むアムール川』白岩 孝行
『雪と氷の世界を旅して: 氷河の微生物から環境変動を探る (フィールドの生物学 19)』植竹淳
いずれの本も、手にした理由は単に北の海の豊かな生態系の秘密を知りたいと思ったからだったが、むしろ、研究者目線で書かれた自然を相手にする研究調査の工夫、準備の大切さ、現場での苦戦、データに対する期待感の部分への共感がとても大きく、期待を上回る読書になった。
まとめ
本を読むことは、刺激を受けたり、大切な経験を思い起こしたりする機会となる。
さいごに
この記事を書く過程で、自分と本の関係が明らかになり、自分のことを少し良く知れた気がする。
本は人生により多くの可能性を与えてくれる点で、人生を豊かにする力があると考える。