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ぼうけんのしょ 1:わたし

「もっと自分を大事にしなさい。」

こんなありきたりで響かない言葉をまさか自分が言われるとは。ファンタジーの世界の話だと思っていた。そういう設定のセリフだったら響くんだけどね。どうも生身の人間に言われるのはいささか不快だ。自分を大事にするなんてのは、時間とお金と心に余裕のある富裕層の特権だろうがよ。…そのどれかがなくても出来るの?え?あんま関係ないの?みんな出来てるの?……すごくない?


そもそも自分を大事にできる人は、自分が一番大事で、自分が大好きな人、そうでなくても自分を嫌いだと思たことがない人だと思っている。ナルシズムという意味ではではなくね。好きじゃないものは大切にできないもん。まずは自分を好きにならなきゃ。保身という枠でみるのであれば、そりゃあわたしが一番かわいい。苦労も損もしたくない。揉め事もなく、恨みつらみもなく、だらだらっと生きていたい。じゃあそのようにしたいと考える普段の自分を愛せるかと言われれば、途端に難易度は急上昇。だって自分が嫌いなんだもん。自分の操作が下手くそなわたしは、ひたすら壁に向かって歩いているようなものなのだ。真っ直ぐに歩く方法が分からない。めり込んだ壁の向こうには無機質な現実しかないのに抜け出せずにいる。


自己愛は常にわたしにとっての裏テーマのような気がする。もっと自信をもって生きてきたらこんな風にならなかったのかな、とか。っていうか、もっと自分のことが好きだったら自信もてたのかな、とか。そんなことを定期的に考える。堂々としている人は輝いて見えるし、人を惹きつける。いつからか分からないけど、わたしは堂々と出来なくなっていたんだなって、これを書きながら気づいた。人間ってのはそういう小さな挫折の積み重ねで変わっていくわよね…。仕方ない仕方ない、ひとやすみひとやすみ。そういえば一休さんのアニメのオープニングはめちゃくちゃ求愛しているけど、あれくらいの愛を渡されれば自分を愛せたんだろうか?教えて一休さん、わたしの心の中の虎を捕まえて!


人から貰った愛で自信がつくなら今すぐにでも愛して欲しいもんだが、自分を愛せない上に(故に?)ひねくれているわたしは、それを真っ直ぐに受け取れない。褒め言葉やわたしを肯定する言葉たちは、すべて居酒屋で流れるジャズみたいに、どこか本物ではないような気がしてプレイリストに入れられないでいる。それがジャズだってことには変わりないのにね。これは受け取り手の問題なので、わたしを好きだと言ってくれる人たちを否定しているわけではない。わたしはまず、そんな稀有な人たちを疑うことなく、満遍なく愛することから始めたらいいのか?


そう言うと語弊があるが、決して友人たちを愛していないわけではない。わたしにとって必要な人だし、大切にしたいし、大切にしているつもりだし。ただ、本当に受け取り手の、わたしの問題だ。何年付き合いがあっても、「どうしてわたしなんかを」と思わずにはいられない。だってわたし、わたしのことが嫌いだから。いつまでたっても終わらないこの自己愛のループを終わらせるには、自分を愛でることが苦手な部分を逆手にとって、友人たちの為に!と思うことが最善ではないかという気がしてきた。わたしが自分を大切にしないで、大げさに例えれば身体を売ったり、命を消耗させたりしたら、友人が悲しむわ!とかね。でもやっぱりそれって友人に愛されている自分を肯定しないと出来なくない?え、自分を愛するのって超難しくね?まじ無理なんだけど。まじハードモード。そりゃ壁に向かって歩くわ。と心のギャルも思わずため息。


27年生きてきて、ずっと答えが出ないんだから、乏しい感性でぽちぽち文字を並べて答えなんて出るわけがないんだけれども、どうしてか「自分を大事にしなさい」と言われてしまったもので、少し考え込んでしまった。ドラクエみたいに「じぶんだいじに」と要所要所でコマンドが出てくれれば、迷わず選択するけど、人生そんな優しくないので自分本位にガンガンいこうぜで結果ボロ負け。それに気付かず人生パルプンテですよ。


わたしはこれまでも、これからも、自分を大事にすること、愛してあげることは難しいと思うけど、それが出来なくて傷ついたときには回復呪文を小さくてもいいから声に出せたらいいな、とは思う。今はまだ傷つきっぱなしで、HPをガシガシ削りながら自分のせいだ!と開き直っているので。そうできるようにまずは、わたしを肯定する言葉を、わたしを守ってくれるであろう言葉を、苦くても齧って経験値を手に入れて強くなりたい。今日言われた「もっと自分を大事にしなさい。」という言葉も。(大好きな人に言われてしまったのでね!)

どうやらわたしは勇者であり、魔王だったようだ。「嫌いなわたし」を倒して、嫌いなわたしに支配された「好きなわたし」を救わなければ!


わたし  は  すこし  まえ  に  すすんだ   ▼_