26歳を振り返る
先月、わたしは27歳になった。
いつの間にか、20代も後半に来てしまった。
学生時代のわたしにとって、27歳なんてものすごく大人で、誇りと自信をもってバリバリ働いている……なんてイメージしていたけど、実際はそんなに順風満帆ではなくて。
27歳のわたしは、10代のわたしがイメージしていたよりもずいぶん子どもだ。
性格も、癖も、人格も、それほど成長していない、とすら思う。
10年経ってもまだこんなに子どものままだなんて、10年前のわたしが知ったらガッカリするかもしれない。
ごめんね。でもこれがわたしなんだ。君も既に分かっているように、不器用で、馬鹿正直で、どん臭くて、生きるのが下手くそなわたし。
それでもこの1年で自分が得たものは必ずあるはずだから、それを整理するためにも、この場所を借りて去年の自分を少し振り返ってみようと思う。
最近、悔しくて情けない思いをすることが続いていたから、少し気分が落ち込んでいる。この振り返りが、せっかくの春を前向きに過ごせる助けになったらいいな。
去年といえば、職場の環境が大きく変わった年だった。
前の店長が異動し、ずっとわたしを優しくサポートしてくれた師匠のような大先輩が店長になった。
そんな嬉しいことがあった一方で、わたしを何度も精神的に支えてくれた先輩が退職し、わたし達の店舗は一気に人が減ってしまった。
……寂しかったけど、実はほっとした部分もあって。
辞めてしまった先輩は、前の店長のやり方にかなり不満を抱いていたから、お店の空気はなんだかピリピリしがちだった。
楽しかったはずの先輩との会話も、だんだん愚痴や不満ばかり聞かされるようになって、いつしかしんどくなっていた。
だから、新店長に代わってまた心機一転、人が減って忙しいながらもお互いに励まし合い、助け合いながらいい雰囲気を作れる環境になったのが嬉しかったのだ。
先輩がいなくなってしまった分、わたしの責任や負担は増えたけど、わたし達が働きやすい環境を作ろうと、店長が精一杯努力してくれた。
体力的には確かに疲れている実感があるのに、わたしは今でも仕事が好きだ。
一番にやりたい仕事ではないとはいえ、日々やりがいを感じながら働くことができている。
これってたぶんすごいことだ。
お店のメンバーの負担を少しでも減らそうと努力してくれる店長もすごいし、
何を言っても嫌な顔をせず応じ、楽しいと言いながら働いてくれる後輩スタッフもすごいし、
業務量も責任も増えた中で、一度も体調を崩さず、やりがいを感じながら働けているわたしも、たぶん、ちゃんとすごいのだ。
わたしは、海外に行く目標のためにあと一年ほどで今の仕事を辞めるけど、それまでは、少なくとも今の店舗メンバーのためにわたしの誠意を尽くしたい。
今のアパートに引越してきたのも去年だった。
家賃が高くて日当たりの最悪だった札幌のアパートから出る決意をしたのは、ワーホリに行くお金を貯めるため。
海の近くで日当たりも良くあたたかい、職場から徒歩15分ほどの今の部屋に巡り会えたのは本当にラッキーだった。
暖房費も節約できたし、家賃もいくらか安くなって、かつかつだった預金残高も少しずつ潤いを取り戻し始めている。
何より、通勤時間が短くなったことで時間に余裕ができて、趣味と勉強に割ける時間が増えたのがかなりありがたかった。
転職のタイミングで数度引越しを繰り返し、ここにきてようやくわたしは自分の性質をきちんと理解できたような気がしている。
つまり、わたしは落ち着かないのだ。ずっと一所に留まることができない。熱しやすく冷めやすくて、飽き性で、やりたいことや興味のあることが次から次に出てくる。
最初はしばらく落ち着くつもりでいる場所にも、数ヶ月や半年後には考えが変わってきて、数年後にはもう違う場所へ移っている。
だからわたしは、移動することを前提に考えていた方がいいのだ。
もう少し歳を重ねればどこかに(ひょっとしたら誰かと一緒に)落ち着く日が来るのかもしれないが、今のところ、わたしは移動し続ける運命にあるようだ。
だからそれを受け入れ、少しでも障害なく好きな場所へ移れるように、わたしはあることを決意した。
「必要以上に物を増やさないこと」だ。
人の物欲なんて無限にあって、何か魅力的なものを目にすると、それを手に入れたくなってしまう。
世界中には素敵なものがたくさんあって、生み出す人達と欲しい人達がいる限りどんどん増えていき、減るということはない。何かを買った数日後には、また別の欲しいものが出てくるのだ。
そのくせ、あれほど欲しくてたまらなかったはずのものが、手に入れてしまった途端、いとも容易く他の持ち物に埋もれてしまったりする。
こんなことを繰り返していては、物が増えていく一方だ。もっと自分の周りに目を向けて、既にじゅうぶん満たされていることを知らなければ。
不思議なことに、そう気付けてからは物欲がかなり抑えられるようになってきた。
何かを欲しいと思っても、自分が持っている物で足りるのではと冷静に考えることができるようになった。
その結果、去年は新しい服やアクセサリーはほとんど買っていない。
以前はシーズンごとに必ず新しい服を買っていたのに、持っている服で着回すだけでじゅうぶんだと分かった。
そう、流行ものや新作を手に入れなくても、わたしは既に満たされているのだ。そう気付けたのはかなり大きな収穫だった。
自分の目標に向けた勉強も、働きながらちゃんと継続できている。
何かと理由を付けてサボってしまいがちな自分にムチを打つため、曜日ごとにやることを決めて取り組んだ。
自分がどういうときに怠けてしまうのか、逆にどうすれば頑張れるのか、自分できちんと把握できるようになった気がしている。
仕事から帰ってご飯を食べてしまうと、そのままダラけモードに突入してしまうため、早起きして朝に勉強する生活リズムに切り替えた。
これが大正解で、しっかり身支度を整えてから太陽光の中で机に向かうと、驚くほど集中して取り組める。しかも、朝にやっておくと不思議なことに、疲れているはずの夜にも少しやっておこうという気持ちが起こりやすくなるのだ。
もちろん、自分のやりたいことを叶えるためだから、興味があって好きなことだから、誰にも強制されていないからこそ頑張れているというのはあるだろうけど、ほとんど毎日、仕事がある日も一定の時間を勉強に充てることができているところは、自分を褒めてもいいのかなと思っている。
あっという間だった気がするけど、去年のスケジュール帳を見返してみると、一日一日は確かに存在していて、色んなイベントや仕事の予定が書き込まれている。
こんなこともあったな、こんなことをやり遂げたんだな、と振り返ってみることで、忘れかけていた出来事や、それにまつわる想いを思い出せる。これって案外、未来に繋がる大切なことなのかもしれない。
27際は、26歳より少しでも上手に生きられたらいいな。
そして、今年の自分のことを、去年よりももっと好きになれるように生きたい。