8月27日(土)安心感を!【ゴール型(バスケットボール)の教材づくり〜体育論文より〜】#198
みなさん、おはようございます。(こんにちは。)(こんばんは。)
昨日のゴール型(侵入型)のボール運動の記事での自分の考えが
『オフィシャルルールから離れよう』
と、割とフワッとした抽象的な形で終わったので、今日はそこに関連して少し具体的な記事を書こうと思います。
では、今回の論文はこちらです。
今回の論文は、理論的なことよりも、より具体的な実践報告型の論文になっています。
昨日の記事で紹介した論文にもありましたが、サッカーやバスケットボールなどの攻守が入り乱れるゴール型(侵入型)のボール運動では、そのままのルールだと、子どもたちにとっては難しく一部の児童しか攻防に参加できないとありました。
昨日の記事↓
そこで教材のミニ化の効果について述べてあるのですが、ミニ化は教材づくりの工夫の一部でしかありません。
今回はミニ化も含めて、バスケットボールという教材を
どのように工夫したら子どもたちが楽しめるようになるか?また学びが深まるようにできるか?
をより具体的な形で実践して、その結果を報告してあります。
ポイントは、論文のタイトル内にもありますが、
いかに「教材をやさしく」するか
です。
さて、この論文はこの記事を書く前に初めて読んだ論文なのですが、正に自分が昨日の記事の中で書いた教材づくりの工夫の視点が、ほぼ全て取り入れられていて、やはり行き着く場所は同じなんだということが分かりました。
昨日の記事も是非読んでください↓
では、前置きが長くなったので論文に書かれている具体的な工夫を紹介していきます。
(ざっと紹介するので気になる方は記事内にあるリンクから実際の論文を読んでください)
高学年のボール運動であるバスケットボールにおける教材づくり・実践報告(全7時間単元)
教材づくりの工夫とは、もうこれですね。
『ルールの工夫』
ここでは、大きく5つの工夫が取り入れられていました。
①ゲームの少人数化
5対5でありながらセンターラインを区切りとしたグリットコートを用い、3人が攻め、2人が守る方式にすることで常にアウトナンバー状態(3対2の数的優位)で攻防が繰り返されるようにする。シュート成功後はセンターラインから攻撃スタートとなり、素早く3対2からの攻防に転換させる。
②教具(ボール)
教材はバスケットボールでありながら、ソフトバレーボール用の柔らかいボールを採用することで、捕球に対する恐怖心を最大限に緩和している。またボールの軽さやシュート時のボールの跳ね返りの状態も考えるとバスケットボールよりもシュート成功率を高められる。
③ボール運びの手段はパスのみに限定
半コートでの3対2の攻防に焦点化するためにドリブルで移動できるルールを削除し、ボールを運ぶ手段はパスのみに限定した。このことによりポールを持たないプレイヤーが空いているスペースをより意識して動けるようになる。
(アウトナンバーによる数的優位と柔らかいボールを採用することで、これが効果的に機能するようにしている。)
④コート内にセーフティーエリア
多くのシュートチャンスを作るために、コート内のゴールの近くに特別なセーフティーエリアを設けた。ここでは相手ディフェンスに邪魔をされずに安心してシュートが打てるようになっている。
このエリアを作ることにより、ボールを持たないプレイヤーがそのスペースにいかに入ってバスをもらうか、というようなオフザボール(ボールを持たない時の動き)も明確になり、また作戦を考える際の一つのポイントにもなる。
⑤得点の工夫
セーフティーエリアからは2点
それ以外からは3点
シュートしたボールがリングに当たれば1点
ざっくりとこの5つになります。
ホントにびっくりするくらい自分の提案したことと同じ視点です(笑)
さて、この単元がどうなったかというと形成的授業評価で単元の後半は子どもたちから極めて高い評価を得られていました。
またその結果を裏付ける根拠として、単元後半ほ第5〜7時では、ゲームにおける全体のシュートの成功率が40%を超えるという事実も残っています。
これはまさに教材づくりにおいて、上に挙げたような教材をやさしくする工夫を取り入れていることが要因となっていることは間違いないと思われます。
さて、ここからが自分の考えです。今回の授業は本当に素晴らしい結果が得られています。
それは様々な点で子どもたちがバスケットボールの特性を味わい、楽しめるように綿密に考えられて作られているからでしょうし、自分もこのような視点で授業づくりは行います。
ここまで具体的な実践にはなってはいるのですが、この授業の再現性はどうかというと、ハッキリと言うと難しさも多大にあります。
特に体育授業を苦手としている先生ならば、この授業をそのまま採用すべきではありませんし、採用しても再現できないと予想します。
それは、このルールの工夫を子どもたちの中にしっかり落としていくことの困難さについては書かれていないものの容易に想像できるからです。
(体育専門の先生がやっても後半にやっと成果が見えているわけですので)
また、ゲームの時間をしっかり確保するためのマネジメント能力も指導者には求められます。
さらに言えば、ミニバスを習っている子どももいるであろう高学年ということで、バスケットボールとはこのようなスポーツだという先入観がこの学習を成立させる上での大きな障壁となることもあり得ます。
(特にドリブルをさせないことなど)
要するに
子どもたちにとってやさしい教材にする
ゆえに生まれる
教師にとっての教材を伝える難しさ
みたいな表現になりますかね。
では、どうにもならないかというとそうではありません。
この授業からで1〜2つでよいので使える工夫を抜き出せばいいのです。
自分ならば、まずは柔らかいボールを採用するのとグリッドコートによる数的優位でしょうか。
柔らかいボールで恐怖心を減らすことは、みんなが楽しめる大前提になりますし、ケガのリスクも減らせます。
あとは攻撃の際に数的優位を作ることは安心感を生みます。
ここまで書いていて気付きました。
自分が大事にしたいところは、
『安心感』
です。
ゴール型は攻守が入り乱れるからこそスリルがあります。それが1つの面白さでありつつも苦手な子にとっては恐怖心を感じてしまい、運動が嫌いになってしまうこともあるでしょう。
だからこそ苦手な子も『安心感』をもって運動に取り組めるようにすることが必要だと考えています。
みなさんの体育授業に安心感はありますか?
是非、少しでも意識してみてください。
というわけで、今日の記事は終わりです。
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