見出し画像

空港で不審物事件に遭遇【マイアミ】旅の私小説「喜悦旅游」#33

マイアミに滞在したのは、未曾有の大型ハリケーン「ミルトン」がアメリカに上陸するタイミングだった。さらに、なぜか不穏な空気が空港内に流れており...。

 マイアミに到着すると、空港は何やら物々しい雰囲気だった。
 わたしたちは荷物を機内持ち込みにしていたので、そのままタクシー乗り場に向かった。

 途中、バゲージクレーム(荷物受け取り所)付近にさしかかると、異様な人混みとなっている。「到着便が多いのかな」と思って、特に気に求めず進もうとすると、突然警官に「ここに入ってきてはいけない!あちらの道に行きなさい!」と止められた。

 突然のことで戸惑ったが、見渡すと沢山の人と共に、警察がいる。警察犬や、警察専用の空港カートも数台集まってきた。いったい、何事だろう。

 とりあえず外の通路に出て、タクシーの方向に向かう。すると即座に警察官が寄ってきて、「あっち側に避難して!」と誘導された。なにやら、ただ事では無いようだ。道を挟んだ駐車場側に大量の旅客が避難していて、さらに空港職員やショップ店員の人なども、そちらに向かっている。

 駐車場に立っていた、空港職員の人に聞いてみる。

 「一体何が起きたんですか?」

 「空港内で不審物が発見されたんだよ。だから、いったん建物を封鎖して、館内の人をすべてこちらに移動させてるんだ。」

 「不審物?」

 「ああ、爆発物の疑いがあるみたいなんだ。なんせ、大統領選挙前だし、ここフロリダは重要な選挙区だから、こういったことがあってもおかしくない。でも困ったもんだね。いつ終わるかが、わからないよ。手荷物を預けた人は、安全性が確認されるまで荷物は引き取れない。だから、とんでもない混雑になるだろうね。」

 この会話の間、盛田さんは喫煙所にいた。程なくして戻ってきたら、「行こう、あっちのタクシーがギリ動いているっぽい。」という。こういう時の盛田さんは、本当に鼻が効く。

 急いでタクシー乗り場に向かうと、空港職員が制止してきた。盛田さんは「あっち側のタクシーは出られると聞いたんですけど」と言った。そこに、運転手の人が手を振ってきたので、「ああ、あそこか。では、すぐ乗ってこの場を離れてください」と言われる。

 逆側のタクシー乗り場は全く動いていなかったが、道の方向の関係で、こちらからはすぐに出られるらしい。こうして幸いなことに、わたしたちは空港から出て、市街地に向かうことができた。

 マイアミ中心部に向かう道はかなり空いており、逆に空港に大渋滞だった。不審物事件が、まだ伝わっていないのかも知れない。空は曇りから雨に変わり、強い風がハリケーンの気配を感じさせる。

 こうして、マイアミ滞在は、ハプニングからスタートした。


こぼれ話はこちらから!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?