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旅の匂い【羽田空港】旅の私小説「喜悦旅游」#31

 2024年10月7日早朝、わたしは羽田空港第三ターミナルに着いた。この日から、世界一周が始まる。

 世界一周といっても、主な目的地はアメリカ、スペイン、イタリアに絞られている。各国で行われている、Raymma盛田諭史の展示を訪問することが今回の旅の目的で、あくまで「世界一周旅行券を利用する」という意味においての、世界一周だった。

 直前までわたしたちは鳥取県の大山町に滞在、イトナミダイセン藝術祭に向けて、それぞれが滞在制作や準備、取材などを行っていた。そこから東京に大移動して中4日、旅から次の旅に、スイッチングした感じだ。

 羽田空港に着いた瞬間「あれ?」と思った。

 「旅の匂い」がする。

 この匂いは、人生の何か大きな切り替えがある時に、いつも感じてきたものだった。もちろん、現実の臭いではない。しかし、気のせいではなく確かに感じているもので、現在では深く考えず、「そういう旅なんだ」と受け取るようにしている。

 とてもリアルな匂いで、例えるならば焼きたてのパンなど、酵母菌の存在を感じる匂いが近い。それが、空港に充満していた。(無論、そのフロアにはパン屋などない。)

 「この旅は、面白くなる!」

 わたしは、そう直感した。

 出発のフロアに盛田さんはすでに到着しているとのことで、合流地点に向かう。


 盛田さんに会うと、疲れきっていた。無理もない。制作に次ぐ制作、移動に次ぐ移動。そしてここから2週間は、またしても怒涛の日々だろう。

 両替所でドルにいくらか交換し、道中のオヤツにゆで卵とナッツを買った。

 ここから最初の目的地マイアミまでは、シカゴ空港経由で移動する。果たして、どんな旅になるのだろうか。


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