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ベンゾジアゼピンの減薬方法_23_減薬で元の症状が顕在化した時

(この記事の内容は、私の経験と知識に基づく個人的な見解になります。ベンゾジアゼピンの内服の対象となっている病気・症状は一人一人異なるものであり、ベンゾジアゼピンに対する依存の程度や離脱症状もまた一人一人異なるものですので、最終的にはそれぞれの人に合った個別の判断が必要になります。この記事は、ご自身の減薬や症状について考える際の参考としてご覧いただけましたら幸いです。)

この記事では、前々回の記事に書いた不眠の原因のうち、③の「ベンゾジアゼピンで治療していた病気・症状がベンゾジアゼピンの減薬によって顕在化した場合」について書かせて頂きます。

ベンゾジアゼピンは処方薬ですので、何らかの病気・症状を治療するために内服しているはずです。
ということは、元々の病気や症状が軽快していない段階でベンゾジアゼピンを減薬すると、その病気・症状が出現したり悪化したりすることになります。

私は、「ベンゾジアゼピンを飲んでいる人は全員、何が何でも今すぐ内服を止めてください!」と言いたいわけではありません。
ベンゾジアゼピンを減薬・断薬しても大丈夫な病状なのかという点に関しては、人によっては非常に注意する必要のある部分になりますので、一律に考えるべきではなく、個別に慎重に検討する必要があります。
このため、そもそもベンゾジアゼピンを減薬しても大丈夫かどうかについて、事前に主治医の先生に相談されることをおすすめします。

ごく最近までの日本では、ベンゾジアゼピンは、副作用を考慮する必要がほとんど無い薬剤であるという考えのもとに、とても軽微な症状に対して処方される場面が多々あったと私は思います。おそらく現在もそのような場面がまったく無くなったわけではないと思います。
薬は、常にそのメリットとデメリットを天秤にかけ、メリットがデメリットを上回る場合にのみ使用されるべきものですが、ベンゾジアゼピンの場合、依存性を含めたその副作用の重症度が周知されていなかったために、天秤にかけるデメリットが実際よりも極端に軽く見積もられてきました。
このため、現在ベンゾジアゼピンを内服されている方の全体を見た場合、私がそうであったように、デメリットがメリットをはるかに上回る状態にある方が相当数いらっしゃるものと私は考えています。
そして、デメリットが上回っていることが明らかになり、ベンゾジアゼピンを中止すべきだという判断に至った場合にも、ベンゾジアゼピンに強い依存が生じる体質の方が一定数いらっしゃるために、中止することが非常に困難なケースがあり得ます。そのような方の参考になればと思って私はこのブログを書いています。

しかし一方で、ベンゾジアゼピンが病気の治療に不可欠であり、メリットがデメリットを上回っている方も確実におられるでしょう。
病気そのものの症状が命にかかわるなどの重大な結果を起こし得る場合には、当然ながら、その治療薬を減薬・断薬することには非常に慎重である必要があります。
これに関しては、病気やその重症度、個人の体質などに合わせて、個別に考えていく必要がありますので、このブログで一般論として書くことは不可能ですが、大変重要な部分になります。ですので、個々に主治医の先生とよくご相談いただきたいと思います。
その上で、ベンゾジアゼピンを止めることになったけれど減薬の部分が上手くいかないという場合には、このブログを参考に自分に合った工夫をして頂けましたら幸いです。
(実際のところ、ベンゾジアゼピンの副作用や離脱症状であるにも関わらず、その症状が元の病気あるいは他の病気であると判断されてしまう場面があるなど、課題の多い部分ではあると思いますので、今後改善されていくことを願っています。)

現実的には、ベンゾジアゼピンを内服する対象となる疾患・症状には、何月何日に発症して、何月何日に完治しましたと言えるような明確な発症や治癒の線引きができないものも多く、検査で治っているかどうか調べられるようなものも少ないだろうと思います。このため、試しにベンゾジアゼピンを減らしてみたところ、症状が再発して、結果的に治っていなかったことが分かるという場合も多いと思います。
つまり、減薬しても元の病気・症状が悪化しないという確証が事前に得られることが理想的ではあるのですが、実際には多くの人が、減薬するよりも前に病気が治っていることを確認して、減薬しても大丈夫だと太鼓判を押せるわけではなく、症状の再発に注意しながら減薬するという方法になると思います。
そのような場合にも、減薬して悪化した時にどうするかという事を主治医の先生と相談してから減薬を始められることをおすすめします。
そして、もちろん、上記のように減薬に慎重を要する病気が再発した場合には、速やかにベンゾジアゼピンの量を元に戻すか増量し、必要なら他のお薬も使って、まず病気の勢いを抑えることに全力を注ぐことが必要になることもあると思います。
一方、命にかかわるような深刻な病気を治療するという目的ではなく、様々な自覚症状を軽減する目的でベンゾジアゼピンを内服していて、ベンゾジアゼピンを減らす時に、自分がどの程度その症状を我慢できるか、付き合う事ができるかが問題になるという人も多いと思います。
後者のような方が減薬していて症状が再発した場合には、前々回の記事とも少し重複しますが、ベンゾジアゼピンを内服する以外の方法でその症状を改善できないか探ることも必要になると思います。

例えば、この一連の記事で例として挙げている不眠という症状の場合には、病気というよりは、生活のリズム、睡眠環境、心身のストレスなどの影響で起こることもあります。これらが原因となっている不眠をベンゾジアゼピンで治療していたけれど、ベンゾジアゼピンを減薬するとまた眠れなくなってしまったという場合には、生活のリズムや寝室の環境などを整えたり、ストレスを軽減することで改善が得られるかもしれません。また、痛みや痒みなど、不眠とは直接関係の無い病気の症状が不眠の原因になっている場合には、そちらの病気が改善できないか検討することが必要かもしれません。自分の不眠の原因が何なのか、改めて向き合う事で見えてくるものがあるかもしれません。
不眠以外の症状をベンゾジアゼピンで治療していた場合にも、環境などの影響にで起こっているものの場合には、その原因を可能な範囲で変えることで軽快するものがあると思います。
つまり、大きな病気ではない症状に対してベンゾジアゼピンを内服していた人がベンゾジアゼピンの減薬を進めたいが、減薬すると元の症状が出てきてしまったという場合には、その症状の原因になる生活や環境などを変更することで症状が改善できないか考えてみて頂けたらと思います。


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