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ハムになぁれ #ポテサラエルフ

「そのハムね、スキスパマーでち」

店主の言葉に、私は耳を疑った。
店主はずんぐりむっくりの童女で、ぼっさり髪のブロンドにすれた碧眼、尖り耳だった。店先につるされ並んだ、豚にしてはやけに長いハム原木をしげしげと眺めていた私にかけられた言葉。

「え……?」
「しょいちゅらね、ポテがまいにち頑張ってハムとポテサラを並べてるのに、買いも味見もせずにスキだけつけて冷やかしてゆくのよ」
「だから、ハムに?」
「うふふ、そのとゆり」

そんなバカな。私は目の前の奇妙に節くれだったハム原木をまじまじと見定め、なでた。豚にしてはやけに薄い皮と脂肪層。切り開かれた赤身は桜色で。もしかして、ほんとうに、これは。

「ンフ、冗談ゆ、お客しゃん。それはバッファローの四肢をハムにした原木。豚と違って肉質が硬いから、汁物にするといいゆ」
「あ、ハハ……そうですよね」
「びっくりした?」
「ちょ、ちょっとだけ……」

店主は天使のような笑顔で、タチの悪いジョークに動揺させられた私を笑っていた。心臓が高鳴る。

「で、どうすゆ?お客しゃんもひやかし?」
「いや、その……原木、ください。バッファローの」
「ふとっぱらでちね。ポテサラもどうでちか?」
「いただきます、200gほど」
「まいどありぃ」

店の奥の吊るしから、一際太ったハム原木に、無愛想なプラスチックカップに詰められたポテトサラダ……厚切りのベーコンとハムが混ぜ込まれたそれを受け取ると、私は本来の目的に立ち返った。原木の値段は、高かった。
私がテンション上がって振りかざしたハム原木は棍棒のようで、皮下脂肪が厚く、血肉は上質なルビーよりも紅く輝いていた。

【終わり】

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