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いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -13- #ppslgr
冒涜的にうごめく樹海は異邦人を遠巻きに眺める閉鎖的村人が如くこちらとの距離を保っている。実際敵地の真っ只中もいい所なのでちょっと押し寄せられたら、樹海領域外に待機させてあるソウルアバターへ転送退避する他ないだろう。
後退するツルの代わりに森の奥より、異物を排除するためのさらなる抗体が近づいてくる。その事を真っ先に知らせたのは相変わらずエルフの王子だった。
「来るぞ、二人共。足音無し、羽音あり、サイズは一般のそれよりも大きい」
王子の端的な解説に俺は淡々とマチェットを腰だめに構える。A・Kも既に諦めたかの様に弾倉にありったけ弾を詰め込んだショットガンを中空に構えた。やがて俺の耳にも羽虫の音を数十倍やかましくしたかの如き迷惑な音が伝わってくる。
「疾ッ!」
もはや飛来する物が何なのかなど確かめもせずにマチェットを横薙ぎに振るえば、やはりトウモロコシを包丁で輪切りにした時のそれと酷似した手ごたえを感じる。
斬り落とした残骸を視線の端で流し見れば、大地に転がったのはベビーコーンを頭部に据えたかのような羽虫だ。当然羽根は葉に置き換えられている。いっそここはサイズ大の羽虫が出てきたほうが返って異常だったのではという気さえしてきた。
「Take This!」
次々飛来するコーンフライをA・Kと王子のショットガン射撃と弓術より放たれた矢が来る順に撃墜してはうごめくツルの大地へ叩き落していく。このコーンフライの耐久力自体はさほどでもない、だがこの深域で出てきた以上このコーンフライには何等かの殺傷能力があると考えてしかるべきだ。
だがそれを自らの身体で確かめようなどと思う事は、余りにも愚かな試みなのは言うまでもない。そしてその判断はすぐに裏付けられる事となった、後方からの闖入者によって。
「R・V!我々の後方から追手だ!これはコーンではない、あの時のコアラだ!」
「生きていたとはびっくりだな!」
王子の警告の最中にも手を止めずに延々と飛び来るコーンフライを斬り落とし続ける。このフライ共は危険だという言いあらわし難い危機感が俺のニューロンを駆け巡っているからだ。
だがすぐに聞き覚えのある狂暴な咆哮、そして重量感のあるゴリラのそれのごとき走行音、紅く染まった毛皮はそのままにあのマッスルコアラが俺達を追走してくる。
「避けるぞ!いいな!」
「クッソ次から次へと多すぎだろ!」
不平をこぼしながらも俺のサインに合わせ、突貫するマッスルコアラを飛びのきながら回避するA・K。ターゲットをとらえられないままに突き進んだマッスルコアラの行きつく先は、コーンフライの大群の真っただ中だ。必然的に巻き起こる絶叫。
「oops……」
銃を下げて口元を抑えるA・Kの前に立ち、油断なく剣先を向ける。端的に言えばマッスルコアラに衝突したコーンフライはそのまま頭部でもってヤツの肉体をえぐり、続いて子実を放出したのが一連の事象だ。
こちらからは被弾部が影になって見えないにもかかわらず起きている事態がすぐにわかったのは、コーンフライ着弾から間を置かずにマッスルコアラのその身から次々トウモロコシの苗が突き出て見る見るうちに成長していったのを目の当たりにさせられたゆえだ。
「今までこの森に動物の姿がほとんど見えなかったのはこのため、か」
忌まわしいこの樹海においては、生きとし生ける物全てがトウモロコシの餌と言う訳だ。マッスルコアラは数少ない生き延びて強大化した個体だったのだろう、南無阿弥陀仏。
【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -13-終わり:その-14-へ続く】
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