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いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -2- #ppslgr
豊かな緑と言うのは、人の心をいやす物だ。基本的には。
だが、今小高い丘の上に立っている俺のその目の前に広がっている森林。この森はつい一週間前にはそもそも存在しておらず、わずかに草が生えている程度の荒野のはずだった。その事実が俺の警戒心を掻き立てる。
見かけだけなら如何にも森林浴に持ってこいの色鮮やかな緑が広がる樹海ではあるが、その中央にはおとぎ話でも早々聞かないような巨大トウモロコシの実が覇王の様に君臨している。肉眼で目を凝らす限りはどう見ても収穫したての立派なトウモロコシだ。ひげもあれば特徴的なイエローの色合いもある。
「どうかしてるな……」
俺が生きている現実はもう少し真っ当だと考えていたのだが、いつから異世界とか幻想が侵略するようになったのだろうか。それもこれほどの速度で。
しかして現地政府より日本大使館を通して調査を依頼され、そして受けてしまったからにはこの森林の奥地へと赴かない訳にはいかなかった。既に先行した調査隊は消息不明となっているとの事だ。
こちらに話が投げ込まれたのは、テッポダマにちょうどいい対象がおらずにアチコチたらいまわしになった結果俺にお鉢が回ってきたのだろう。常識的に考えればもっと手近な者が居そうなものだが……俺の元にはたまにこういう大暴投なたらいが飛んでくる。
「うっへ、やっぱあれ流行りのプロジェクションとか、そういうフェイクじゃないんだ」
「そのようだ」
一歩遅れて丘の上までたどり着いたA・Kが常識外れの光景に俺と同様の感想を漏らす。装備も俺と同様の森林行軍のための資材をバックパックに詰め込み、背負った形だ。
「しかしよー、見た感じ緑化されてるだけで平和っぽそうじゃね?」
「だとしたら楽でいいんだがな、既に行方不明者が出ている」
「……マジかよ、そんな危険なのこの森」
A・Kが人好きのする顔をしかめる。砂漠や雪山に比べれば比較的安全なイメージがある森林だが、実際の所十二分に人間を殺す危険を備えている。ましてや相手は得体の知れない高速侵食樹林だ、トウモロコシから発生したというオマケ付きの。
「何があるかわからない、慎重に」
「待て、R・V。何か大質量の存在がこちらに向かってくる」
冷静な声色で俺を制したのはA・Kではない。前兆なくその隣に立っている青年だ。その装いは言うなれば森の住人、エルフの佇まいであり服装もまた現実離れした狩人のそれだ。いきなり虚無より現れたかのようにも見えるエルフにA・Kが慌てて抗議する。
「ちょ、ま、いきなり出てくるなよエルフのおうじ!」
「緊急事態だ、鈍感な人間族には感知できないか?」
いよいよ持って胡乱な状況が極まってきたが、このエルフの青年は何と説明するのが適切だろうか……言うなればA・Kの精神より顕現した彼の分身、イマジナリィである。俺も初めてお目にかかった時は大分面食らったものだ。
すぐに、エルフの王子が指摘した脅威は俺にも知覚できる地響きを伴いながら接近してくる。森林の木々が一直線の経路で揺れては何本かへし折れるが、密度の濃い木々が接近する何者かの正体を覆い隠す。
俺達を眼前にして跳躍した脅威は、ある意味ここに居てしかるべき存在だった。
【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -2-:終わり:その-3-へ続く】
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