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いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -5- #ppslgr

木の幹に詰め込まれて絶命している男。中々ショッキングな絵面だが、気になる事は他にもあった。迷わず根元の方まで斬撃を走らせるとあっけなく、幹の表面はバラバラと切れ目に沿って落下した。

「お、おいR・V一体何を」
「死因が気になる。それによってはこの木がこいつを殺してから取り込んだのか、それとも遺体になった後で取り込んだのかが変わってくるからな」

そう、この木が殺人行為を行えるのか、それとも殺された後でただ取り込んだだけなのかで少々心構えすべき点が変わってくる。特に前者であれば周囲の木々全てを警戒しなければならない。

自然の棺桶に詰め込まれていた男の死因は、医師ではない俺にも一目でわかった。胸部を斜めに切り裂かれた傷跡が複数の平行線となって刻まれており、そこから溢れた血で迷彩服が赤く染まっている。別の死因で死んだ後でつけられた可能性もあるが……

「何者かに殺された後で取り込まれた、か」

試しに男の身体を掴んで引いてみるも、ちょっとやそっとではびくともしない。どうやら思った以上にしっかりと取り込まれているようだ。そういえばこの樹海にはあってしかるべき物が見当たらない事に思い至った。

「A・K、王子、今までこの森で生物の遺体を一つでも見かけた記憶はあるか?」
「あー、んー、うー、ないぜ」
「私もここに至るまでの道のりで一切遺骸を見ていないな」
「そうか、俺もだ。という事は……この木々によって処分されている可能性がある」

A・Kがこみ上げる吐き気を抑えるように口元を覆う。無理もない、この一見平穏な森がその実死体を喰らう木々の集まりであれば大抵の者はドン引きするだろう。遺骸が自然によって分解されるのは森羅万象の定めではあるが、このやり方は少々非現実的ではある。

「俺、この森のモンはぜってー食わねぇ事に決めたぜ」
「それがいい」

これ以上はどうにも出来ない調査隊の遺体へ略式念仏を唱えると、探索に戻るべく立ち上がるが、そこに入るエルフの王子からの警告。

「R・V、A・K、次の客人がやってきたようだ。まっすぐこちらに向かってくる」
「了解」

俺も五感は鋭敏な方だと自負していたが、王子のソレは俺の能力を遥かに凌駕している。出自こそ胡乱だがこの状況では頼りになる存在なのは間違いない。

身に着けた刀剣のうちブーメランめいて湾曲した刀身を持つククリ刀を引き抜き、マチェットと合わせて二刀流に構えた俺の聴覚に、聞いたことがない奇妙な足音らしき音が聞こえた。

その音は一定のテンポで反復しており、なおかつこちらに近づいてきていることから歩行の副産物であることは推測できる。

デカ物と見てショットガンを構えるA・Kもその奇妙な音に顔をこわばわせる。それはまるで鋭角な突起物を深く地面に突き刺しているような、足という概念を覆すかの様な音だ。

密集する木々をなぎ倒して俺達の前に姿を現した存在は、マッスルコアラなど前座に過ぎない事を思い知らせるのに充分な怪奇存在であった。

【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -5-:終わり:その-6-へ続く

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