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「僕は今日も違うカメラマンの男とデートをする」13 special by Hiro FKD

それは1通のDMからはじまった。
「突然のDM、失礼します。いつもツイートを拝見させていただいてます。
今月末に出張で大阪へ行きます。何処かでお会いできるタイミングがあればと思い、DMさせていただきました。色々、写真についてお話聞かせていただければ…なと。撮影希望というわけではないのですが、いかがでしょうか。」

おいおい、撮影希望じゃねーんかいと思わず突っ込みを入れたくなるようなアカウントからのDMではあった。彼のツイートをよくみると明らかに写真があまり見当たらないってのもあって、私から見れば完全に怪しい裏垢男子のお誘いにしか見えなかった。しかしながら、よく見るとbioに「フォトグラファー」の文字が書かれていて、エロ目的ではなさそうな雰囲気ではあったので、デートの企画に参加するなら応じるというと快く快諾をしてくれた。

9/29 19:10
JR天満はまたたくさんの帰宅するサラリーマンがわんさかいた。


中にはもうすでに出来上がってる人もいて、ほんのりとお酒の匂いが立ち込める。いつだったか高野ぴえろくんが連れて行ってくれた四川料理を食べるために店前で集合。グレーのニット帽をかぶった人が今回のお誘い相手、フクダさんなのである。フクダさんは僕と最初、目を合わさずに軽く会釈だけして、「あ、どうも」とボソッとつぶやくのだ。最近のおじさんはボソっと呟く人多いのか。


「どうもです!遠隔です!いやーごめんなさい、お待たせして!」


店に入ると。いつもチャーミングな韓国ママが出迎えてくれる。

「やだー!また来てくれたん?」
「ここの空心菜めっちゃうまいから友達つれてきちゃった・・」
「やだ!うれしい!うち、2号店だすねん!」
「え!店出すの!?」

初回に会った時もこんな調子でめちゃくちゃしゃべってくる。ママの旦那様はとってもいかつい人であるが、とっても根が優しいためママが忙しくしていたら、逆に気を利かせて接客してくれる。そしてママは初回からいつもかわいいと言ってくれるので自己肯定感が爆発的に上がる。


「ネイルかえてん!みて~!」
「それ前見せてもらった100均のやろ?めっちゃママのネイルうまいよな・・100均とは思えんもん。」
「せやねん!100均でもうまくぬったらめっちゃええやろ?うちも昔はグラビアアイドルしてたからな!」

関西弁のママが暴走しているとフクダさんはたじたじになっていた。僕は慌てて、フクダさんに目線を戻した。フクダさんは僕の目を見て、またシャイになる。今日のデートのお相手はシャイボーイだな。

「どうです?変わらないでしょ?毎日死ぬほどスペースしてるから、わかりやすいんじゃないですか。」
フクダさんは、こちらを見返すような形で、僕のアカウントのメディア欄をさかのぼる。

「いや、すごい明るい方なんですね。僕、遠隔さんの写真好きなんですよ。
一緒に映っているモデルさんも素敵なんですが、女性の写真とは思えないくらいのリアリティがあって、生っぽい。俺、撮ってる写真は雰囲気でしかないし、中身が詰まっていないから、教えてほしいです。」
「え?」
「どういうコンセプトを考えてやっているのか。こんなリアリティや物語をちゃんと考えるのはすごいと思うんです。
どうしてか教えてください。」

おいおいおい、このオッサンなんなんだ?
めちゃくちゃほめてくるやん。過去にデートした人、こんなにほめてくれることなかったぞ。うれしいけど!うれしいけどね!なんだこのムズムズする感じは!と僕は自尊心がくすぐられるような感覚に陥ったのだ。僕は見えないシッポをぶんぶんぶんぶん振って彼の話を聞いた。

「僕は感覚の人だから、技術は教えられないですし、むしろ教えてほしいっす。てかどんな写真撮ってるんですか?」

フクダさんはインスタグラムのアカウントを見せてくれた。そこには生々しく映る女性と、フクダさんご本人と思われる手が写っているのが見えた。

「え!フクダさん!えっ!やだ~~~~~~~」
「どうしました?」
「おっぱいもみもみじゃないっすか~~~~~!!!」
ああ、まぁ。とうつむくフクダさんに僕はむっつりスケベな友人とそっくりだなと思った。お姉ちゃんが虚ろ虚ろに見るその姿に興奮しかしなかったであろう。40代ってなんであんなお姉ちゃんに対してむっつりなんだろうかとおもうと笑えてくるものがある。僕はフクダさんに言った。

「実際、興奮するでしょ!もしかして、バギンバギンになってるとか」
「そ、そりゃあ・・女性と風呂に入ったりすると、ねぇ。」
「バギンバギンなんすね!?」
「ええ・・まあ」

ごめんなさい、フクダさん。僕は「バギンバギン」という言葉が使いたかっただけなんです。そうこうしているうちにフクダさんはカバンの中からフィルムカメラを2台出してきたのだ。1つは本当に小さいカメラであったが、もう一つはしっかりとした使い切りカメラのようなフォルムをした立派なハーフカメラ。フクダさんはそれを、僕の前で構えて見せた。
大きい男性の手で包まれるカメラはなんだかすこし窮屈そうに見えて仕方がない。

「この後どうしましょっか?前言ってくれた、ストリップ劇場いきます?」
「え~、フクダさんともエッチなの撮りたいですね。」
「僕のカメラ、ホテルにあるから、ホテルまで行ってくれたら撮れますよ。」
「フクダさんが決めてください。遠隔とエッチなの撮りたいかストリップ劇場を見に行くか。」
「う、うーん。ストリップ劇場で」

即答であった。僕にはどうやら興味はないらしい。天満駅の細くて暗い道を少し進むと飲み屋の道があって、そこをくぐり抜けると、東洋ショーの看板が見える。僕たちは、19時45分のレイトショーとして、入ってみた。大人気ストリッパーの大見はるかちゃんのショーを見て、一同興奮する。僕は前のめりになりながら、見ていた。個人的に南まゆさんの宗教とエロスのような演出に僕は心を動かされた。

帰り道、僕たちは軽くスナップをすると、駐車場でキスをした。

「お礼です。」
「あ、はい。」
「意外にも潮対応なんですね。いやでしたか?」
「え?ああ、えと・・その。」
「えへへ」

帰り道、彼をホテルへ返した。
彼は窓際を見て、微笑んでいた。

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