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幻想小話 第四十六話

鳳と凰①

私はまた竹林にいた
雨の後の竹林の中は、下に落ちた枯れ笹が濡れて、草履で踏むとジュクジュクとした泥水が、笹の葉の重なった隙間から溢れて来た
竹の根が張り巡らされ、根元からたち割った竹が口を開けていて、非常に歩きにくい
草履が沈んで、笹の葉を踏むと泡を含んだ泥水で、足袋が冷たく濡れる
草履の裏が竹の切口に当たり、飛び上がるように竹を掴みながら歩く
草履が外側に半回転して、転びかけた
このままゆけば、必ず私は竹の根と竹の切り口に蹴転ばされる
そして目の前が一瞬暗くなり、竹筒の中から覗いたような丸窓に竹林のてっぺんが回転して映る
痛いのか熱いのか冷たいのか、その瞬間はわからない痛みが頬に走る
ふと止まった目の先には、切っ飛ばされた細竹の鋭い先端があった
自分がとても危険な状態で、しかも運が良い状態だとわかった
私はいつもかけている筈の眼鏡をしていなかった
見えない状態で少し前に出ていたら、私の左目は竹の先端に突き刺さっていた
眼鏡はしていない
してなかった違和感も、していた記憶もない
なにもかもあやふやだが、失明しなくて済んだようだ
万代に着物も足袋も草履も駄目にしたと、万代になんて言ったら良いのだろう
悪夢を食う女
私の見てきた悪い夢を、万代は透明な硝子玉のように変えて、一針糸に通して繋げてゆく
首飾りのようにした後は、その悪夢の中の私とその他大勢はどうなるのやもしれぬ
なんといっても歩きながら眠っている始末
私はまた、なにかにつまずいた

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