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#2 「プレッシャーからの逃げ方講座」

どうも。ペンゼルと申します。
今回は、自作のドラマ脚本「人生の絶対解」の第2話を投稿します。

〈登場人物〉

水梨祐菜(25) キャピュレット高校の英語教師。
森波良太(25) モンタギュー高校の体育教師。
日神準一(28) モンタギュー高校の数学教師。
香倉和希(25) キャピュレット高校の生物教師。
有明正範(26) モンタギュー高校の化学教師。「マサ」と呼ばれている。

桃池香里(26)モンタギュー高校の医務室の先生。

犬養春代(50) モンタギュー高校の校長。

花巻小五郎(45)元メジャーリーガー。
  美咲 (42)小五郎の妻。

男子生徒A
レジの店員
女性A

〈本編〉

T「プレッシャーからの逃げ方講座」

◯和希の家・ダイニング(夜)
正範、キッチンで料理をしている。
そして、冷蔵庫を開けて、何かを探す。
正範「和希、チーズは無いのか? 料理に使うんだけど」
返事がない。
正範「和希?」
正範、冷蔵庫を閉め、リビングへ。

◯同・リビング(夜)
和希、ヘッドホンで音楽をノリノリで聞いている。
片手には、ワインの入ったグラス。
正範、和希の肩を叩く。
和希、ヘッドホンを外す。
正範「何してる?」
和希「テイラー・スウィフトを聴きながら飲むワインは最高だ」
玄関チャイムが鳴る。
和希、ドアを開けにいく。
正範「なぁ、チーズはもう無いのか?」
和希「もう食べちゃった。ワインを飲みながら食うチーズは最高だから」
和希、ドアを開ける。
訪問者は、祐菜と良太。中に入る。
良太「(祐菜に)マサと会うのは、今回が初めてだよね? 僕と同じモンタギュー高校の教師なんだ」
正範「正範だ、よろしく。みんなからは、マサって呼ばれてる」
祐菜「祐菜よ。よろしく」
正範「君のことは、良太から色々聞いるよ。和希と同じで、キャピュレット高校の教師なんだって?」
祐菜「そう。だから、私たちは敵同士ってことね」
正範「敵同士、仲良くやろう」
祐菜「それにしても、このお家、すごく立派ね。二人で住んでるの?」
良太「いや、和希一人で住んでる」
和希「もともと、両親が住んでたんだけど、今はNYに住んでるから、俺が代わりに住んでるだけだよ」
正範「和希のご両親はNYで外科医をやってるんだ。そして、超金持ち」
和希「そんなこと言わなくていいって」
正範「良いじゃないか。お前はこの家に女を連れ込んだ時、いつもその話をするだろ」
和希「それも言わなくていい!」

◯同・ダイニング(夜)
テーブルで食事している4人。
祐菜「うわ! コレすごく美味しい」
良太「マサは僕と和希のために、よく料理を作ってくれるんだ」
和希「マサがいなかったら、俺と良太はとっくに餓死してる」
正範「それよりさ、実は今日、ビックリするようなことがあったんだよ。なぁ、良太」
良太「ああ! 今日のアノ事ね」
和希「君らの学校で飼ってるヤマアラシがまた脱走したのか?」
良太「それは日常茶飯事だから、今更ビックリしない」
正範「今日、ウチの高校に、花巻小五郎が来たんだ」
祐菜「花巻小五郎って、元メジャーリーガーの? すごい!」
正範「花巻小五郎には、今度、高校生になる息子がいて、ウチの高校が入学候補に挙がってるそうだ」
良太「それで、奥さんと一緒に高校の中を見学しに来たんだけど…」

◯モンタギュー高校・校門(その日の朝) 
学校銘板「モンタギュー高校」
T「9時間前」

◯同・校長室(その日の朝)
犬養と花巻夫妻の立ち話。
花巻小五郎(45)、色黒でイカツイ男。
その妻、美咲(42)。
美咲「こちらの学校は本当に素晴らしいですわ」
小五郎「ウチの息子には一流の高校に通って欲しいという想いがありましてね。まさに、こちらの学校のような」
美咲「ほんと、私が通いたいくらい」
犬養「我が校を気に入っていただけたようで、何よりです」
花巻「あ、そうだ。最後に一つ、お願いがあるんですが」
犬養「私に出来る事なら何なりと」
小五郎「体育の授業を見学してもいいですか?」
犬養「体育ですか?」
小五郎「職業柄、気になりまして。生徒たちに、どういう方針で、スポーツに取り組ませているのか」

◯同・同(その日の昼) 
デスクに座っている犬養。その対面に立つ良太。
良太「それで、僕の授業を見学にしに来るんですか?」
犬養「あなた、体育の先生でしょ」
良太「花巻夫妻はまだ校内に?」
犬養「一旦、お帰りになったわ。午後にまた戻って来られるみたい」
良太「夫妻と連絡は取れないですか?」
犬養「どうしてそんなこと聞くの?」
良太「断るためですよ」
犬養「断る? 見学を?」
良太「授業してるところを誰かに見られるなんて、すごいプレッシャーですよ」
犬養「なら、耐えて」
良太「他の体育の先生の授業に変更できませんか?」
犬養「今日はもう、あなたの授業しか残ってないの」
良太「なら、別の日に」
犬養「そんな事してる間に、他の高校への入学を決められちゃうわ。できれば、それは避けたい。将来、花巻小五郎の息子も有名人になるかもしれないもの」
良太「それか、ドラッグに走るかも」

◯同・廊下(その日の昼)
正範、同僚と談笑し終わり、別れる。
そこへ、良太が
良太「マサ! マサ! マサ!」
と駆け寄って来る。
正範「良太! この学校に、花巻小五郎が来たらしいぞ!」
良太「そのことで話があるんだ」
正範「まぁ、まずは俺の話を聞けよ。噂によるとな、この後、花巻夫妻が授業を見学しに来るらしい。何の授業かはまだ不明なんだけど、何か知ってるか?」
×××
正範「お前の授業に見学に来るのか?」
良太「もう大ピンチだよ!」
正範「サイン書いてもらう色紙が無いからか?」
良太「すごくプレッシャーなんだよ。もう胃がおかしくなりそう」
正範「何でそんなプレッシャーなんだ?」
良太「今日の授業でバスケをやるんだけど、もし花巻小五郎がバスケが嫌いだったら? 絶対、気まずい感じになる」
正範「嫌いだとしても、気まずい感じにはならないよ。それに、バスケが嫌いだとも限らないし」
良太「仮に好きだとしよう。その場合、バスケのこと、物凄く詳しいはず。それもまた問題だ。授業中、僕の教え方にケチつけてくるよ」

◯和希の家・ダイニング(夜)
食事中の祐菜、和希、良太、正範。
和希「そんなの考え過ぎだ!」
良太「でも、以前そういうことがあったんだ」
正範「まだ話の途中だ。続きを話そう」

◯モンタギュー高校・職員室(その日の昼)
正範「いつ見学に来るんだ?」
良太「今日の5時間目」
腕時計を見る正範。
正範「あと一時間か」
良太「早く何とかしないと!」

◯同・医務室(その日の昼)
室内には、桃池香里(26)一人。白衣を着ている。
廊下からドアのノック音。
香里「どうぞ」
良太、酷く咳き込みながら入室。明らかに病気のフリ。
良太「桃池先生。僕、風邪引いたみたいで」
良太、再び酷く咳き込む。
良太「しばらく此処で休んでていい?」
香里「うーん…ダメ」
良太「ダメ?」
香里「森波先生。此処で休んで良いのは、本当に体調が悪い人よ」
良太「良かった。僕がそうだ」
香里「あなたは病気のフリしてるだけ」
良太「…バレた?」
香里「何で病気のフリなんかするの?」
良太、ベッドに腰掛ける。
良太「実はね…」
×××
香里「そんなの理由で病気のフリを?」
良太「此処に匿ってくれない? 5時間目が終わるまで」
香里「私も仮病に付き合えってこと?」
良太「頼むよぉ」
香里「嫌よ」
良太「もう僕の人生終わりだ」
香里「無理なものは無理」
良太「で、でも…」
香里「“でも”はもういい」
良太「でも…」

◯和希の家・ダイニング(夜)
祐菜「なるほど、医務室でズル休みをしようっていう作戦ってことね」
和希「だけど、失敗に終わった」
正範「だけど、良太は諦めなかった」
良太「そう。僕の作戦はまだ終わってない」

◯モンタギュー高校・ランチ売り場(その日の昼)
レジカウンターの前に、長蛇の列。
列の先頭で、男子生徒A、何を注文しようか悩んでいる。
その次に並んでいるのは、日神。
日神「おい、どのランチにするか早く決めろ。もう10分も悩んでるぞ」
男子生徒A「今日から新メニューが追加されたから、じっくり吟味しないと」
日神「このハンバーガーは?」
男子生徒A「ここの牛肉は少し硬いから、あまり好きじゃない」
日神「このパスタは?」
男子生徒A「麺が喉に詰まる」
日神「もう離乳食にしろ」
日神の3人後ろに正範、その次に香里が並んでいる。
良太、香里のもとへやって来る。
良太「桃池先生!」
香里「森波先生。どうしたの?」
良太「僕に何か手伝えることない?」
香里「手伝えること?」
良太「何でも言って。僕は桃池先生の役に立ちたいんだ」
正範「そんなの初めて聞いた」
良太「あ、そう言えば、桃池先生、スタバのカフェラテが好きって言ってたよね? 今から僕が買ってきてあげようか?」
香里「ねえ、一つ聞いていい? もしかして、私の機嫌を取ろうとしてる? 医務室でズル休みできるように」
良太「…バレた?」
香里「森波先生、言ってるでしょ。医務室は体調の悪い人が休むところなの」
良太「じゃあ、こうしよう。僕、体温を測ってみるよ。もし熱があったら、医務室で休んでて良い?」
香里「…それなら、いいわ」
良太「よし!」
香里、白衣のポケットから体温計を出し
香里「はい、これ体温計」
日神の声「頼むから、早く選べ!」
男子生徒A、未だに注文に悩んでいる。
日神「いいか、デキる男ってのはな、注文をバシッと決めれるんだよ。よく見ておけ。(レジの店員に)おすすめのランチは何だ?」
店員「新メニューのカレーです」
日神「じゃあ、私はそのカレーにする」
男子生徒A「いいの? そんな即決で」
日神「ああ、望むところだ。君もカレーにしろ」
男子生徒A「でも、ここのジャガイモは国産じゃないし、ここの牛肉は…」
日神「(威圧)カレーにしろぉ!」

◯同・職員室(その日の昼)
良太、体温計の検温結果を確認する。
その対面で、ランチを食べている正範。
正範「体温はどうだ?」
良太「健康そのものって感じだ」
正範「お前も何か食えよ」
良太「食欲なんて出ないよ」
良太、正範のホットコーヒーの指差し
良太「それ、ホットコーヒー?」
正範「そうだけど…」
良太、ホットコーヒーを奪い、中に体温計を突っ込む。
正範「おい、ちょっと…」
良太「(体温計を見ながら)見て! どんどん数字が上がっていく!」
×××
良太「桃池先生! 桃池先生!」
と、香里がランチをしているデスクへ駆け寄る。
良太「熱、測ったよ」
と、持っている体温計を渡す。
体温計を確認する香里。
香里「41度?」
良太「ほんと酷い高熱だよ」
香里「森波先生、体温計にコーヒーの雫が付いてるのは、何でかな?」
良太「…」
その場を去る良太。

◯和希の家・ダイニング(夜)
祐菜「で、結局、5時間目の授業はどうなったの?」
和希「予定通り、花巻小五郎が体育の授業を見学しに来たんだろ?」
良太「その部分を話そう」

◯モンタギュー高校・職員室(その日の昼)
良太と正範、向かい合ってデスクに座っている。
腕時計を見る良太。
良太「まずいよ。あと少しで5時間目だ。花巻小五郎が見学に来ちゃうよ」
正範「もう諦めろ」
すると、遠くのデスク席から大きな音がする。
日神、席から倒れて、激しく咳き込んでいる。
日神の周りには、良太や正範を含む、人だかり。
香里、日神のもとへ駆けつける。
香里「日神先生!」
日神、香里の腕を掴む。
香里「喉に何が詰まったの?」
日神「これはきっと、はちみつだ」
香里「はちみつ?」
日神「私は、はちみつアレルギーだ」
日神がいたデスクの上に、カレー。
良太「カレーに、はちみつが入ってたのかも」
日神「「死にはしないが、薬が必要だ」
香里「大変! 誰か救急車呼んで!」
正範「俺が呼ぶよ」
日神「どこかで横になりたいんだが…」
香里「医務室にベッドがあるわ」
良太「⁉︎ 医務室?」

◯同・廊下(その日の昼)
花巻夫妻、道に迷っている様子。
そこへ、良太がやって来る。
良太「どうかされました?」
小五郎「森波良太先生はどこですか?」
美咲「体育の授業を見学しに来たんだけど、その前に一度ご挨拶したくて」

◯同・医務室(その日の昼)
ベッドで横になっている日神、何度も咳き込み、激しく跳ねている。
まるで、陸に上がった魚のよう。
そんな日神の体を抑えている香里と、その助手たち。

◯同・廊下(その日の昼)
良太と花巻夫妻、医務室のドアの前にやって来る。
良太「森波先生はこちらに」
美咲「医務室? どうかされたの?」
良太、ドアを少し開ける。
中から、日神が激しく咳き込む声が聞こえてくる。
花巻夫妻「?」
香里の声「あと少しの辛抱よ! 救急車、もうすぐしたら来るわ!」
良太、ドアを閉める。
美咲「もしかして、今ものすごく咳き込んでらしたのが、森波先生?」
良太「重度のはちみつアレルギーらしいんですけど、事故で、はちみつを口にしてしまったんです」
美咲「やだ、それは気の毒に…」
良太「えっと、森波先生の授業を見学されるんですよね?」
小五郎「でも、森波先生があんな状態じゃ、体育の授業は無理なんじゃ?」
良太「(笑顔で)そうなんですよ!」
花巻夫妻「?」
良太「(真面目顔で)ほんと残念です」

◯和希の家・ダイニング(夜)
正範「あの後すぐ、花巻夫妻は帰ったらしい」
良太「めでたし、めでたし」

◯病院・食堂(夜)
注文カウンターの前に、入院患者たちの長蛇の列。
その先頭には、女性A。かなり高齢。
メニュー表を見て、何を注文しようか悩んでいる。
その後ろに並ぶ病衣姿の日神。
日神「ちょっと、あんた。いい加減、早く決めてくれ」
女性A、日神のほうへ振り返り
女性A「(耳が遠い)え? 何だって?」
日神「注文するメニューを早く決めてくれ。このままでは、晩飯食うのが朝になる」
女性A「もうちょっと待っておくれ」
そう言って、メニュー選びを再開する。
日神「どのメニュー選んでも一緒だ。明日になれば、何食ったか忘れてるだろ」
すると、女性A、「あ!」とひらめく。
日神「注文、決まったか?」
間。
女性A「うーーーん…」
と、再び悩み出す。
日神、大きく溜息。

#3に続く

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